「トクホ」と「機能性表示食品」ではまるで違う…国のお墨付きがある「本当に効く健康食品」を見分ける方法

2024年2月27日(火)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SDI Productions

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「本当に効く健康食品」を見分ける方法はあるのか。東京工科大学名誉教授の今井伸二郎さんは「『トクホ』と呼ばれている特定保健用食品は厳格な国の審査によって認可されているため、安全性や有効性が保証されている。一方、機能性表示食品は国が審査を行うわけではないため、安全性や有効性が保証されているとはいえない」という——。

※本稿は、今井伸二郎『最新科学で発見された正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。


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■「トクホ」には厳しい基準が定められている


読者の皆さまもトクホという言葉はご存じのことと思います。トクホは特定保健用食品のことで、特定保健用食品は、体の生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。


この特定保健用食品を販売するには、その食品ごとに有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。この特定保健用食品は、健康増進法第43条第1項という法律で規定され、その認可には厳しい審査がなされて、はじめて承認されます。審議が厳しい分、その食品に問題があった場合、責任は開発企業のみではなく、認可した国も負わなければなりません。


一方、2015年新たに機能性表示食品制度という食品に関する法律が施行されました。この機能性表示食品制度は国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。


特定保健用食品とは異なり、国が審査を行うわけではありませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。つまり、この制度での食品販売で問題が生じた場合は、国は責任を負わないわけです。


■機能性表示食品に効果はあるのか


もともとこの制度はアメリカで機能性食品の開発促進のために施行された法律を模倣して、当時の安倍政権が中期戦略として取り入れたものです。


この機能性表示食品、どんな食品でも届け出が可能というわけではなく、それなりの根拠を示さなければ届け出はできません。認可と届け出は明らかに違いますが、届け出だといってもどんな申請でも受理されるわけではないので、ある意味では書類の審査が行われるわけです。


それでは、このトクホと機能性表示食品、どちらも有効性を国が保証しているのでしょうか?


確かに、トクホの場合は厳しい審査もあり、認可にはかなり厳重な臨床試験や安全性試験が必要です。それら試験内容は、医薬品の認可の要件に近い内容であるため、莫大(ばくだい)な費用も必要となります。もちろん、効果についても十分な評価がなされるわけですから、トクホ食品は有効性があると考えて問題ありません。


しかし、機能性表示食品はどうでしょうか?


機能性表示食品の場合、届け出が受理されるためには有効成分の有効性に関する文献情報が必要です。その文献情報が、トクホ申請で使用された文献であれば問題ありませんが、論文の信頼性が低くても受理されてしまいますので、その論文に、怪しい点があったとしたら、その食品の有効性自体も疑いが生じます。


健康食品の開発業者は、効かなくても安全で、消費者の需要があればよいと考えているのが本音だと思います。もちろん全ての業者がそうだとはいいませんが、変形性関節症を対象にしたグルコサミンなどの食品成分は、ほとんど全てがこのような位置づけだと思います。


事実、かなり多くの変形性関節症を対象にした食品成分が機能性表示食品として届けられています。


■有効性については慎重になるべき


これらの食品も臨床試験が実施され、論文になっていますが、その試験は二重盲検(ダブルブラインド)試験ではないため、偽薬(プラセボ)効果により効果が出た結果といってもいいと思います。この事実を考えると、機能性表示食品全てとはいいませんが、中には有効性に疑問があるものも少なくないという印象があります。


トクホに比べ機能性表示食品は開発コストが低く抑えられるため、その届け出数は年々増加しています。結論からいえば、トクホについてはその有効性を信じてかまいませんが、機能性表示食品については慎重にその有効性を考える必要があります。


私は長年にわたり機能性食品の評価を行ってきました。その経験から効果に期待が持てる食品について、これから紹介していきたいと思います。ライ麦や、小麦など穀物外皮に含まれるアルキルレゾルシノールの老化抑制や代謝性疾患に対する効果、青大豆の花粉症などのアレルギーに対する効果は、私自身が開発に携わり、自信を持っておすすめができます。


写真=iStock.com/uchar
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/uchar

■赤ワインには健康成分が含まれている


それ以外として、私が効果を実験で確認した成分として、ブドウ種子に含まれるレスベラトロール、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、大豆イソフラボンのダイゼイン、ゲニステイン、お茶に含まれるカテキン類、同じくお茶に含まれるテアニン、玉ねぎやセロリに含まれるルテオリン、マグロやカツオなど動物の筋肉に含まれるアンセリンなどが挙げられます。


これらの成分について、なぜ効果があるのか詳しく解説していきましょう。


まず、レスベラトロールです。レスベラトロールはブドウの種子に多く含まれています。赤ワインには含まれていますが、白ワインには含まれていません。なぜかというと、赤ワインはブドウを醸造する際に、皮や種子ごとブドウジュースを絞り出し、発酵させます。白ワインの場合は皮や種子をブドウジュースから取り除いて発酵させます。ですので、白ワインの原料に種子は含まれていないため、レスベラトロールも含まれないわけです。


写真=iStock.com/skynesher
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フランス料理はとても脂肪分が多いにもかかわらず、フランス人にはメタボリックシンドロームの有病率が低いといわれています。これをフレンチパラドックスとよびます。フランス人が赤ワインを多飲するためだとの説があります。


レスベラトロールは、メタボリックシンドロームなどの肥満が原因となる疾患に有効な成分です。ですので、フレンチパラドックスの理由にレスベラトロールが関係しているとの説は、最も有力な説といえるでしょう。


■効果を期待するには「赤ワイン3本」飲まなければいけない


しかし、赤ワイン1本に含まれるレスベラトロールの量は1〜5mg程度であり、メタボリックシンドロームに有効とする濃度で換算するとおよそ赤ワイン3本が必要になってしまいます。


つまり、メタボリックシンドローム予防に赤ワインを飲むとアルコール依存症になってしまいかねません。このことは、フレンチパラドックスの理由づけにレスベラトロールは適合しないかもしれませんが、赤ワインの継続的摂取がメタボリックシンドロームの予防や治療に関与しないとまでは言い切れません。


レスベラトロールは世界で最も需要と販売量が多い機能性食品です。レスベラトロールの有効性を示す論文の数は数千を超え、世界で最も信頼性の高い食品成分といっても過言ではありません。だからといって本当に効果があるとは言い切れないのも事実です。


しかし、私がいくつかの試験で有効性を評価した結果では、多数の試験結果を追従する内容であったことをここで証言します。


レスベラトロールの効果を初めて論文で報告したのは、アメリカの研究者、ハーバード大学教授のデビッド・シンクレア氏です。氏はアメリカでこの研究に関するベンチャー企業を立ち上げ、多額の研究費を獲得しました。多くの製薬企業がこの研究に注目し、世界中の研究者がレスベラトロールに注目しました。


■青魚を食べると心血管疾患のリスクが低下する


次に、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)についてその効果を解説します。オメガ3脂肪酸摂取が健康機能にいいといわれるようになったきっかけは、イヌイットの疫学調査に由来します。


イヌイットは主に海獣やイワシ類などの魚肉をよく食べ、ほとんど野菜は食べないにもかかわらず、心筋梗塞による死亡率が極端に低く、その比率はデンマーク人の10分の1にも満たないそうです。その後の各種研究によりDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸には心血管疾患を低減する効果が実証されています。


ある疫学研究によると、オメガ3脂肪酸の多い魚、およびオメガ3脂肪酸を多く摂取するグループは肝がん発生リスクが低くなっています。魚を食べても大腸がんの発症リスクは下がりませんが、魚由来のオメガ3脂肪酸およびオメガ3脂肪酸を多く摂取しているグループは結腸がんのリスクが低下していたそうです。


その他、血中中性脂肪低下作用、血圧改善作用、関節リウマチ症状緩和効果、乳児の成育、行動・視覚発達補助効果、うつ症状緩和効果などが知られています。


■イソフラボンは安全性に問題はないのか


次に、大豆に多く含まれているイソフラボンについて解説します。最近、イソフラボン含有化粧品が市場に多く出回っていますので、イソフラボンという名前をご存じの方も多いのではないでしょうか?


大豆に含まれるのはダイゼイン、ゲニステインといったイソフラボンですが、これらイソフラボンが注目されたのは、女性ホルモン様作用からです。ミロエステロールという成分も、女性ホルモンと同じような構造で類似な作用があり、摂取の仕方次第では安全性に問題があります。



今井伸二郎『最新科学で発見された正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)

しかし、イソフラボンは作用に近いところはあっても、それほど構造の類似性は強くなく、女性ホルモン作用も副作用が出るほど強くはありません。このため、イソフラボンは機能性食品としてさまざまな効果を示し多用されています。


イソフラボンに効果があることは、私自身実験で経験しています。大豆抽出物をマウスに食べさせ、マウスの背中の毛を剃ったところ、大豆を食べさせていないマウスに比べ、大豆を食べさせたマウスはすぐに毛が生えてきました。女性ホルモンには、男性の薄毛を解消する効果があります。


同じように、イソフラボンにも薄毛を解消する効果があることが目に見えて確認できました。このように、イソフラボンは確かに有効性が期待できる成分といえそうです。さて、いくつかの例で、機能性食品成分の一部は確かに効果を持つことがご理解いただけたと思います。


【まとめ】
機能性表示食品制度において問題が起きても、国は責任を負わない
トクホの有効性は信じてもいい

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今井 伸二郎(いまい・しんじろう
代謝機能研究所所長、東京工科大学名誉教授
1984年、東京大学大学院農学系研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。日清製粉株式会社中央研究所勤務。2002年博士(医学)(東京医科歯科大学)。2005年東京農工大学非常勤講師。2010年静岡県立大学客員教授。2014年東京工科大学教授、2023年より現職。藤田医科大学客員教授。著書、監修に『機能性食品学』(コロナ社)、『花粉症等アレルギー疾患予防食品の開発』(シーエムシー出版)、『最新科学で発見された正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)がある。
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(代謝機能研究所所長、東京工科大学名誉教授 今井 伸二郎)

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