元ユニリーバのマーケターが語る、なぜ事業成長にはブランディングが重要か

2024年2月21日(水)4時0分 JBpress

 マーケティング戦略の中でもブランディングは、「好感度」や「ロイヤルティ」など“ふわっとした”イメージで語られることが多かった。そうした中、ユニリーバ本社でグローバルなブランド戦略設計を担った経験を持つ木村元氏は、顧客による購買をゴールに据え、売上や利益への貢献度なども含めたスコアとしての「ブランド・パワー」を提唱している。本連載では、同氏の『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』(木村元著/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集、数値化したブランド・パワーをマーケティングに落とし込む方法を解説する。

 第1回は、「ブランド・パワー」考案に至った同氏の原点を紹介する。

<連載ラインアップ>
■第1回 元ユニリーバのマーケターが語る、なぜ事業成長にはブランディングが重要か(本稿)
■第2回 0から1を生み出す、ユニリーバの中長期的なブランド力向上の仕組みとは?
■第3回 重要なのはブランドか、営業か? ユニリーバで考えた売上拡大の独自ロジック(3月6日公開)
■第4回 CMを打ったものの・・・「認知率」が上がったのに、なぜ売上が増えないのか(3月13日公開)
■第5回 なぜLUXの広告には、髪にツヤのあるハリウッド女優が起用され続けたのか?(3月27日公開)

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明日の売上なくして未来の競争力は創られない

 マーケティングやブランディングは、特にその定義について、様々な意見や議論があります。先に結論を述べましたが、「ブランディングこそが中長期的な事業成長のために最も本質的で最も重要な方法論のひとつである」というのが本書での考え方です。

 はじめに、私がこう考えるに至った経緯、これまでの試行錯誤についてお話ししていこうと思います。私の略歴やユニリーバ社内の組織に関する話も割合多く含まれていますが、お付き合いください。

 私は、2009年にユニリーバ・ジャパンに新卒で入社しました。ユニリーバには約14年間在籍し、「LUX(ラックス)」や「Dove(ダヴ)」といったグローバルブランドのマネジメントやスキンケアブランドの統括などに従事してきました。ロンドン本社では、Doveのグローバル本部担当として出向し、世界各国のブランドマネージャーや経営陣とディスカッションしながら、グローバルのブランド戦略をリードするという貴重な経験もさせていただきました。私のマーケターとしての視野はここで何倍にも広がったと感じています。

 世界がコロナ禍の混乱に入ったタイミングと時を同じくして、2020年に日本に戻ってきてからは、ユニリーバがM&Aした「ラフラ・ジャパン」というスキンケアブランドをグローバル展開する企業に出向し、M&A後の組織統合や事業のV字回復に努めました。

 今日までキャリアの大半でマーケティングと経営を学んできた私ですが、実は、新卒時は営業として入社しています。学生の頃から、ゆくゆくは経営の道に進みたいと考えており、「営業経験なしに良い経営者にはなれない」と何かの本で読んだのか、諸先輩方に言われたのか、そのアドバイスに忠実に従い、自ら営業を希望したのでした。

 営業では、はじめに小売店やショッパー起点でのマーケティングを支援するカスタマーマーケティングを担当しました。日系の企業では営業企画と呼ばれたり、外資系の消費財メーカーではトレードマーケティングと呼ばれたりする部門です。その後、小売店への現場営業も経験しています。

* ショッパー:店頭における消費者を指す言葉。消費者をユーザー(使用者)とショッパー(購買者)に区分した時、ショッパーを対象に主に店頭での購買促進を行うことをショッパーマーケティングと呼ぶ。
* トレードマーケティング:小売業を顧客と捉え、小売業に対して売場起点で行うマーケティングのこと。

 現場営業の役割は、自分が担当する小売店での売上と利益を最大化することです。私が担当していたのは新潟に本社を構える全国チェーンの小売店で、毎日のように店舗に通っては店頭の製品を陳列したり、ポップを設置したり。年間、四半期、毎月の売上目標の達成のために、小売店や卸店、各店舗の店長と商談をする日々でした。

 消費財を扱う企業においては、プロダクトのコンセプト設計やより下流のマーケティング手法が注目されがちですが、店頭に製品がないと売上は作れませんし、店頭での目立ち方ひとつで売上は大きく変わってきます。営業による売上への影響力は非常に大きいのです。

 営業で染みついた日々の売上を追いかけていく現場感覚こそが、売上と利益を生み出す施策でなければ意味がないという自身の考えの礎になっており、この経験がなければ私のマーケター・経営者としてのキャリアはまったく違うものになっていたと思います。

<連載ラインアップ>
■第1回 元ユニリーバのマーケターが語る、なぜ事業成長にはブランディングが重要か(本稿)
■第2回 0から1を生み出す、ユニリーバの中長期的なブランド力向上の仕組みとは?
■第3回 重要なのはブランドか、営業か? ユニリーバで考えた売上拡大の独自ロジック(3月6日公開)
■第4回 CMを打ったものの・・・「認知率」が上がったのに、なぜ売上が増えないのか(3月13日公開)
■第5回 なぜLUXの広告には、髪にツヤのあるハリウッド女優が起用され続けたのか?(3月27日公開)

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筆者:木村 元

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