子どもが自分の知らないアニメの話を延々としている…「忙しいから」と相手にしない親が後悔する納得の理由
2024年3月7日(木)15時15分 プレジデント社
※本稿は、西村創『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara
■ゲームやアニメの話でも論理的思考は育まれている
・かける言葉を1文字変えれば、子どもの反応は変わる
・感心を言葉にして伝える
・日常のおしゃべりの中でも、子どもの論理的思考は育つ
・子どもの言葉を引き出す聞き方を意識する
日常の会話の中で、お子さんが自分の好きなものについて熱く語っているときは、聞くことに徹しましょう。熱く語っているときのお子さんは、「この想いを受け止めてほしい!」と、どうにかして相手にわかるように伝えたい気持ちが高まっているはずです。
相手にわかるように伝えるには、複雑なものを整理し、シンプルに伝える必要があります。これは論理的思考の基本です。机に向かって勉強しているときだけでなく、子どもがゲームやアニメについて語っているときなど、日頃のおしゃべりの中でも、論理的思考は育まれていくのです。
親子の円滑なコミュニケーションは、結果的に子どもの論理的思考につながっていくのです。それでは、親子のふだんの会話から子どもの論理的思考を育てるために、親はどんなふうに話を聞くといいのでしょうか。5つのポイントを具体的に挙げていきます。
■リアクションは大きく、否定は少なくする
1 話を広げる手助けをする
まずは、話を広げる手助けをしてあげましょう。といっても、難しいことではありません。今までよりも少しだけ、リアクションを大きくしてみてください。それだけで子どもの話したい気持ちがアップします。
親が子どもと一緒に笑い「わぁ、すごい!」と大きくうなずいて見せると、子どもは安心して、知っていることをどんどん話してくれます。今までよりも少しだけリアクションを大きくして、子どもが話しやすい雰囲気をつくってみましょう。
2 否定を少なくする
私たちのように昭和の教育を受けてきた世代は、親や先生や上司から「◯◯するのはやめなさい」とさんざん言われてきました。頭では、わが子を否定する言葉はダメだとわかっていても、つい、これまで自分が言われてきたように「それはダメ」と言ってしまうものです。
そこで、「今忙しいからダメ」とか「それは違うよ」と否定したくなったときは、クイズに変えてしまうのがおすすめです。
たとえば「ちょっと待ってね、今お母さんは何をしているのかな?」と、子どもに考えさせてみます。そうすると子どもは「食器を洗っているね。じゃあ、終わったら来て」と待つことができるかもしれません。そんなにうまくはいかず、「やだ。今すぐ来て!」と言われたら、「じゃあ食器洗いのお手伝いをしてくれる? 一緒にやったら早く終わるよ」と提案することもできます。
否定の言葉をクイズや提案に置き替えることで、誰が・何を・なんでしているのか、論理的に考えるきっかけになります。
■10歳の子どもの日本語レベルは「親の英会話レベル」
3 親がしゃべりすぎない
今から英語で自己紹介をしてください、と突然言われたら、どう思いますか? よほど英語に慣れた方でなければ、あわててしまうはずです。このあわてる感覚が、子どもの気持ちそのものです。
10歳の子どもは日本語に10年間しか触れていません。つまり、10年間英語を勉強した親の英会話レベルと同じくらいの日本語レベルといえます。その状態でよどみなく流暢に話すことは難しいですよね。
親がたくさんしゃべりすぎると、まだ日本語レベルが拙(つたな)い子どもは、思考停止してしまいます。ですから、親がしゃべるよりも、「うんうん、それで?」「なるほど、そうしたら?」というように次をうながす相づちを入れながら話を聞いてあげましょう。すると子どもは「まだ自分の話を聞いてくれるんだな」と、安心して話を続けることができます。
4 5W1Hの質問をする
5W1Hとは、When(時間)、Where(場所)、Who(主体)、What(目的・人・もの)、Why(理由)、How(手段・方法)という、できごとを客観的に伝えるための6つの要素です。子どものおしゃべりから5W1Hを引き出す際は、少し言葉を変えてオウム返しをするといいでしょう。
たとえば子どもが「今度の日曜日に公園でサッカーするんだ! 自転車で行ってくるね」と言ったとします。この場合、5W1Hのうち、When、Where、What、Why、Howを伝えてくれていますよね。
そこで、「今度の日曜日に公園に行くんだね、誰と一緒に遊ぶの?」などと、オウム返しをしつつ、説明に含まれなかったWhoを尋ねるわけです。そうすると、お子さんは、物事を正確に伝える力が身についていきます。
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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■成績が上がっている子の親に共通する「会話の内容」
5 子どもに勉強を教えてもらう
勉強を教えることで一番学ぶことができるのは、教えた本人です。ですから、学校や塾で学んだことを、自分の言葉で親に教え直すと、学びを深められます。子どもが勉強したことを親に話すのは、家庭でできる最大の復習です。
西村創『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)
塾で、成績が上がっていく生徒の保護者たちに、「何かご家庭で、お子さんの勉強を見てあげたりしているのですか?」と尋ねてみました。
すると、「特別なことは何もしていません。学習内容が私にはもう難しいので、子どもにひたすら、その日の授業で習ったことを教えてもらっているだけです」とおっしゃる保護者が多いのです。
子どもに無理に勉強を教える必要はありません。親が必死に学習内容を頭に入れて子どもの面倒を見るよりも、子どもから塾で聞いた内容を教わるほうが、ずっと学習効果が大きいのです。
■親が聞き上手になれば論理的思考力・学力を高められる
日頃から子どもに笑顔を向けられているでしょうか? 受験が近づいてくると、子どもの話を聞く余裕も、笑顔で接する余裕もなくなっていくものです。子どもが小さいうち、受験まで時間があるうちから、お子さんの話に耳を傾け、笑顔で話を引き出しましょう。
親が聞き上手になれば、子どもは論理的思考力・学力ともに高めることができます。子どもと一緒に笑って、うなずいて、「教えるのがうまいな」と認めながら、子どもとのコミュニケーションを積み重ねましょう。
■ 子どもの話を聞くときは、少しだけリアクションを大きくして、安心して話せる雰囲気をつくる。
■ 頭から否定をせず、クイズや提案にする。
■ 親がしゃべりすぎず、5W1Hの質問をしたり、子どもに勉強を教えてもらったりする。
■ 日頃のコミュニケーションの積み重ねが、入試直前期にゆるがない親子の信頼関係をつくる。
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西村 創(にしむら・はじめ)
受験指導専門家
早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wingsなどで指導歴25年以上。 新卒入社の早稲田アカデミーでは、入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。 駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。 河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。 現在はセミナー講演や書籍執筆、「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信などを中心に活動。 著書は『中学歴史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)など多数。
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(受験指導専門家 西村 創)