坪単価1000万円超、最高価格は45億円…首都圏の「超高額マンション」26棟にみる富裕層に人気のサービス

2024年3月10日(日)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/K2_keyleter

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新築マンション価格の高騰が続いている。どんな物件が人気なのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「坪単価1000万円を超えるような超高額マンションがとてもよく売れている。10階未満の低層マンションが多く、コンシェルジュ、ポーター、ドアマンなど人によるサービスを最大の売りにしている」という——。(第1回/全3回)

※本稿は、牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/K2_keyleter
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■低層の「超高額マンション」が続々登場


億ションが普通のマンションとするならば、超高額マンションとはどのような物件、金額になるのでしょうか。


近時の業界調査レポートでは、坪単価で700万円を超えるものを高額マンションとして扱うようになっています。坪単価700万円ですと、100m2(30坪)で2億円を超えてきます。


2019年1月から2023年10月に首都圏で発売された坪単価700万円以上の物件を一般広告ベースで調べると、その数は101棟になります。さらに、港区三田1丁目で三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが共同開発する「三田ガーデンヒルズ」のように、坪単価が1000万円を超える物件は26棟を数えます。


出所=『なぜマンションは高騰しているのか

立地は港区と渋谷区が目立ちます。建物階数で20階以上になる高層マンション、いわゆるタワマンは意外に少なく、10階未満の低層マンションが目につきます。このクラスのマンションになると、住戸面積も比較的広く、100m2を超えるゆったりとしたマンションが多くなります。


■1戸4〜5億円はそれほど珍しくない


渋谷区渋谷で分譲された「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」(128戸)は、1953年に東京都が分譲した日本初の分譲マンション「宮益坂ビルディング」を、旭化成不動産レジデンスが建て替えたものです。


「渋谷ヒカリエ」にデッキ直結のこのマンションは2020年7月に竣工し、1戸4億〜5億円という超高額マンションとして大変な話題になりましたが、今やこの価格帯のマンションはそれほど珍しい存在ではなくなりました。


最近では、神奈川県横浜市内でも利便性の良い横浜駅前や横浜屈指の高級住宅街である山手町などのマンション価格が、平均で坪単価700万円台に突入しています。


こうした状況を踏まえると、超高額マンションはもはや「億ション」ではなく、「3億ション」とならざるを得ないのです。


そして、業界関係者が一様に口にするのは、こうした超高額マンションがとてもよく売れているという現実です。


■タワマンは外装のデザイン性に限界がある


超高額マンションは、港区や千代田区あるいは渋谷区といった、都内でも有数の好立地にある点で、共通項があります。


売り出し中の物件の広告サイトを見ても、まず登場するのは物件が存在する街、エリアのイメージです。ネットなどでは、広告に記された宣伝文を「マンションポエム」などと揶喩しますが、これらの物件がある立地は誰しもが憧れるようなところばかりで、ポエムを書かずとも、すぐにイメージできます。


強調されるのは、立地によって多少の違いがあるにせよ、歴史や文化、銀座などに近い高級感や圧倒的な交通利便性、国際性などです。


次に強調されるのが、建物のデザインです。建物に関するデザインは大きく分けて外装と内装があります。外装については、中低層マンションでは、高級感を演出する石貼りの外壁、敷地内のランドスケープ、照明、そして重厚な窓サッシにも手抜きがありません。外装は、タワマンになると限界があります。高層部には重量の軽い素材を使用する必要があり、石を貼ることはできません。デザイン性に限界があるのです。


■セレブたちを満足させる厳重なセキュリティ


実は、超高額マンションの勝負どころは、共用部などの内装です。国内外の有名デザイナーによる設計やデザイン監修を売りにするのは、もはや当たり前。ゆとりのあるエントランス、巨大な吹き抜け空間が広がるロビー周り、きらびやかな照明、ゆったりとくつろげるデザイン家具など、超高額マンションに住む高揚感を余すことなく演出します。


戸数の多いタワマンになると、住民の健康維持に配慮してジムやプールなどの施設を持つところもあります。さらには、ライブラリーやシアタールーム、ちょっとした会議や打ち合わせができるファンクションルーム、最上階にスカイラウンジなどを備えたところもあります。


超高額マンションに住むセレブたちは、安全に関しても厳しい要求をします。二重のオートロック機能はもちろん、多数の防犯カメラの設置、ドアマンの常駐や玄関扉での顔認証システムの採用など、至れり尽くせりです。


写真=iStock.com/PamelaJoeMcFarlane
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PamelaJoeMcFarlane

■バトラーサービスを謳う物件が増えている


2017年4月、三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークマンション檜町公園」を例に取りましょう。このマンションは非常に防犯性が高く、基本的に各フロア2住戸に1台のエレベーター、いわゆる「2戸1エレベーター」が設置されています。


これ自体は珍しいものではありませんが、各エレベーターには向かい合わせに2つ扉があり、住戸ごとに独立したエレベーターホールがあります。つまりエレベーター待ちで他の住民と一緒になることがないのです。地下の駐車スペースからホールを経て、そのまま住戸にアクセスできるのも売りになっています。


日々の生活においてさまざまなサポートがあるのも、このようなマンションの特徴です。フロントにはコンシェルジュが常駐して来客への対応、荷物の預かりや受発送、クリーニングの預かりなどを受け付けます。最近の超高額マンションでは、これをさらに進化させたバトラー(執事)サービスを謳うところも増えてきました。まるで高級ホテルに滞在しているかのようなサービスを享受できるのです。


■人による高度なサービスが最大の売り


「三田ガーデンヒルズ」のサービスを見てみましょう。こちらでも、コンシェルジュ、ポーター、ドアマンがつき、バトラーサービス、バレーサービス(キー預かり駐車代行)などのサービス機能が満載です。もちろんハード面でもワークスペース、プール、ジム、フィットネスなど多彩な共用施設を楽しむことができます。



牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)

サービスのロボット化やAI生成などによる効率化など、世の中は人を使わずともできるサービスの追求が主体になっていますが、超高額マンションにおける住民サービスはその逆で、人による丁寧できめ細やかなサービスを売りにします。実は、人を使うサービスはもっとも高度なサービスができる分野なのです。


当然ですが、コンシェルジュなどを使うと人件費が発生します。また、サービスのなかには、必ずしも住民全員が求めるサービスばかりではないものも含まれています。しかし、こうしたマンションに入居する人にとって、そんなことはどうでもよいのです。ドアマンも、バトラーも、コンシェルジュも存在するのが「当たり前」であり、その費用をあれこれと言わないのが「お約束」なのです。


人を使ったサービスこそ究極の贅沢。超高額マンションの最大の売りとも言えます。


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牧野 知弘(まきの・ともひろ)
不動産事業プロデューサー
1959年生まれ。東京大学卒業。ボストン コンサルティンググループ、三井不動産などを経て、2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。15年オラガ総研株式会社を設立し、代表取締役を務める。全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。主な著書に『空き家問題』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』(いずれも祥伝社新書)、『不動産の未来』(朝日新書)、『負動産地獄 その相続は重荷です』(文春新書)など。
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(不動産事業プロデューサー 牧野 知弘)

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