「5分だけ運動する」がストレスを最も解消できる…長時間の運動より効果的な皆が知っている"軽い運動の名前"

2024年3月19日(火)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Young777

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ストレスを解消するには、どんな運動をすればいいか。心理学者の内藤誼人さんは「イギリスにあるエセックス大学のジョー・バートンの分析によると、エクササイズは5分もやれば十分に気分を高揚させ、自尊心を高められることがわかっている。一番手軽にできるのがラジオ体操だ。NHKのラジオ体操は、無料のアプリもあるので、いつでも自宅などで好きなときにやることができる」という——。(第2回/全8回)

※本稿は、内藤誼人『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


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■気分を盛り上げたいときに見つめたい色の種類


オランダにあるアムステルダム大学のA・ド・クラーンは、病院で処方される49種類の薬の色を調べて面白いことを発見しました。


錠剤の色が、赤、黄色、オレンジの薬は、興奮効果をもたらす薬として使われることが多く、青と緑は鎮静効果をもたらす薬に使われることが多かったのです。


私たちは、目に入ってくる視覚的な情報によって影響を受けます。そのため、錠剤の色もその効果を高めるものが選ばれているのでしょう。


もともとそれぞれの薬には、きちんとした薬効成分が入っているはずなので、どんな色でもかまわないように思えますが、そうではありません。


錠剤やカプセルの色を適切なものにすることによって、その効果をさらに強めることができるのです。


「なんだか最近、やる気が出てこない」
「気分を盛り上げようとしているのに、テンションが上がらない」


もしそういう悩みがあるのでしたら、赤、黄色、オレンジのような暖色系の色をしばらく見つめるようにするといいですよ。そうすれば、身体が興奮してくるので、やる気も出てきます。


■木々の緑、水辺の色は“癒しの色”


逆に、神経がピリピリしていて、筋肉がこわばっているように感じるのなら、青や水色など、寒色系の色を見つめると、リラックス作用を得ることができます。


自然の多いところを散歩していると、心が落ち着きます。それはなぜかというと、木々の緑ですとか、水辺の色などが“癒しの色”だからです。そういう風景を見ているから、心が落ち着いてくるのですね。


ストレスが溜まっているときには、リラックスしたほうがいいわけですから、自分の周囲を見渡して、水色のものを見つけてください。探してみると、意外にたくさん見つかると思います。それをしばらく見つめていると、心も身体もくつろいだ感じがしてくるでしょう。


自分が身につける洋服もそうですね。


モチベーションを上げたいときは、赤や黄色のものを身につけるようにするといいですし、気を休めたいのであればブルーやグリーンのシャツを選ぶとよいでしょう。


残業がつづいて精神的に疲労しているときでも、ブルーのシャツを着ていれば、そのぶんだけ心が休まります。


単なる気休め程度のことかもしれませんが、それでも少しはストレスが減らせるでしょうから、ぜひ試してみてください。


■掃除が面倒なときはシトラスの香りを嗅ごう


掃除が好きだという人は、あまりいません。単純に面倒くさいからです。


「どうせすぐにまた汚れてしまうのだから、掃除なんて意味がない」と思う人も少なくないのではないでしょうか。


だれにとっても掃除はできれば避けたいことかもしれませんが、そんな掃除を嫌がらずにやる方法があります。


まずシトラスの香りを嗅いでみるのです。


不思議なもので、シトラスの香りを嗅ぐと、私たちは知らないうちにきれい好きになってしまうという驚きの結果が報告されているのです。


オランダのラドバウド大学のロブ・ホーランドは、2つのグループに、シトラスの香りのする部屋と、無臭の部屋にそれぞれ入ってもらいました。


そこでインチキなアンケートをしばらくやらせてから、別の部屋で、ぼろぼろと崩れやすいビスケットを試食してもらったのです。


このとき、どれくらいテーブルに散らばったビスケットのクズをきちんと拾い上げるのかを、2名の判定者がこっそりと測定してみました。


すると、食べかすを拾い上げた回数は図表1のような結果になったのです。


出典=『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本

事前にたっぷりとシトラスの香りを嗅いだグループのほうが、食べかすを拾いやすくなることがわかりますね。


シトラスというと柑橘系のさわやかな感じの香りですが、そういう香りには、私たちをきれい好きにさせる効果があるといってよいでしょう。


なお、ホーランドの実験ではシトラスが用いられたわけですが、レモンやライムなどでも同じようにさわやかな香りは楽しめますから、シトラス以外の香りでも自分の好きな香りを使ってかまわないと思います。


■アロマテラピーの持つ心を癒す効果


心がイライラしたり、不安を感じたりすることで悩んでいるのであれば、アロマを取り入れてみるのはどうでしょうか。


心理療法のひとつに「アロマテラピー」というものがあることからわかるように、アロマは、心を癒すのに役に立ちます。


写真=iStock.com/botamochi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/botamochi

イランにあるシャールッド・ユニバーシティ・オブ・メディカル・サイエンシィズのアシュラフ・ジアシは、アロマテラピーの効果について調べた16の研究を集めて、メタ分析という手法で総合的に検証しました。


その結果、アロマテラピーは、心に好ましい作用をもたらすことがはっきりとわかりました。一番たくさんの研究報告がなされていたのがラベンダーなので、もしアロマの香りを選ぶのに迷ったら、とりあえずラベンダーにしておけば間違いありません。


もちろん、他にも効果が実証された香りはたくさんあります。


ジアシがメタ分析によって確認したところでは、ローズ、セージ、ゼラニウムは3つの研究で、カモミール、ビターオレンジ、スイートオレンジ、ペパーミントは2つの論文で効果的であることが示されました。こういう香りでもいいかもしれません。


■ラベンダーの香りで心拍数が正常な範囲に戻る


アロマテラピーのよいところは、アロマを買ってくれば、だれでもすぐに実践できること。自分の思考や性格を変えるのは難しいですが、アロマを買うことならだれでもできます。


ちょっぴりお金はかかるかもしれませんが、間違いなく効果がありますので、ぜひお試しください。


香りを嗅ぐと、私たちの身体はすぐに反応します。


ウェスタン・オレゴン大学のクリスティーナ・バーネットは、73名の大学生に、とても難しいクロスワードパズルを時間制限を設けて解かせることで、緊張と不安を煽り、実験的にストレス反応を起こさせました。


それから、ラベンダーか、あるいは水(無臭)の臭いを嗅がせて心拍数を測定してみたのですが、ラベンダーの香りを嗅がせると、あっという間に心拍数が正常な範囲に戻ることが確認できました。


アロマには、即効性があるといってよいでしょう。


アロマ用のオイルを、加湿器に1、2滴たらしておくと、部屋にほんのりとかぐわしい香りが漂い、心地よい癒しの効果を得ることができます。


「香りが生理的に苦手」という人は、香りが強烈すぎるのでしょう。香りは、ほんの少し香るくらいでいいのです。


また、香りが苦手といっても、アロマには、驚くほどたくさんの香りがありますので、探せばきっと好みの香りも見つかりますよ。


■「グループ・ウォーキング」の驚きの効果


健康のためにウォーキングでも始めようかという人は、一人きりでやるのではなく、だれか他の人も誘ってみるといいですよ。


自分一人で黙々とウォーキングをしてもよいのですが、他の人とおしゃべりしながらウォーキングをしたほうが、楽しさは倍増しますからね。


イギリスにあるエッジ・ヒル大学のメリッサ・マーセルは、健康増進プログラムに参加した人のうち、1081名には「グループ・ウォーキング」をしてもらいました。何人かで一緒にウォーキングをしてもらう条件です。


もう一方の435名はコントロール条件に割り振られ、こちらの人たちは特に何もしませんでした。


さて、13週間後、うつ病の診断をしてみると、グループでウォーキングをした人は、抑うつ、ストレス、ネガティブな気持ちが減少し、ポジティブな感情の高まりが確認されました。グループ・ウォーキングは大成功だったのです。


ウォーキング自体にもストレス解消効果はあるのですが、さらに他の人とのおしゃべりを加えたグループ・ウォーキングは、その効果をより高めてくれると考えられます。


たまに何人かで公園を散歩しているグループを見かけることがありますが、そういうグループ・ウォーキングはどんどんやったほうがいいと思います。


出典=『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本

■遠足、ハイキング…企業はレクリエーションを増やした方がいい


かつての日本企業では、レクリエーションをかねて社員でハイキングや遠足に出かけるというイベントをちょこちょこやっていました。


会社のレクリエーションが面倒くさいという人も当然いたでしょうが、実際にやってみると、意外に面白いものです。みんなで連れ立っておしゃべりしながら自然の多いところを歩くのは、よい気分転換になるのです。


また、社内のレクリエーションを通して、お互いにもっと仲良くなれる、という効果もありました。


最近ではこうしたレクリエーションは、どの企業でも軒並み減ってきているようですが、本当はもっと増やしたほうがよいと思います。


デイケアサービスをしている施設では、みんなで散歩に出かける「お出かけレク」をやっています。みんなで歩くだけなのですが、施設の入居者たちには大変に好評だそうです。これもひとつのグループ・ウォーキングでしょう。


自分一人で散歩するのもいいですが、家族や友人と一緒に散歩に出かけてみてください。外の空気をたくさん吸いながらウォーキングをしていると、心に溜まっていたストレスをきれいに発散することができますよ。


■自然の中で「5分」運動してみる


自然が多いところでジョギングをしたり、ウォーキングをしたりするのはストレスを吹き飛ばすのに役立ちます。では、どれくらいの時間やればいいのでしょうか。


イギリスにあるエセックス大学のジョー・バートンによりますと、なんとエクササイズはわずか5分で十分なのだそうです。


自然の中でのエクササイズ(グリーン・エクササイズといいます)の効果を調べた10個の論文を総合的に分析したところ、エクササイズを5分もやれば十分に気分を高揚させ、自尊心が高められることがわかりました。


バートンによると、次に効果が高いのは10分から60分のエクササイズ。半日、あるいは1日中ずっとエクササイズをやると、逆に効果は下がってしまうそうです。


エクササイズはやればやるだけよい、というわけでもないようです。


出典=『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本

また、バートンは水辺でのアクティビティのほうがより効果が高いことも突き止めています。どうせエクササイズをするのなら、自然の多いところでも、特に川や海、あるいは噴水や滝のようなものがあるところがおすすめです。


バートンによれば、男性でも女性でも水辺の運動は効果的ですが、男性はさらにモチベーションが上がることも明らかにしています。


■NHKのラジオ体操無料アプリの活用を


たった5分間でもエクササイズが効果的というのは、ありがたいですよね。現代人は、やることをたくさん抱えていてとても忙しいので、なかなか運動の時間も確保できません。けれども5分でよいのなら、何とかなるのではないでしょうか。



内藤誼人『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』(明日香出版社)

私も毎日川沿いの道を2キロくらいウォーキングしていますが、5分でいいのならもっと短くともかまわないのではないかと思います。


5分のエクササイズということで、一番手軽にできるのがラジオ体操。


ラジオ体操には、第一と第二があるのですが、それぞれ約3分。合わせて6分です。ということは、自然の多いところでラジオ体操をすれば、十分に心身の健康にも役立つでしょう。しっかりラジオ体操をすれば、よいストレス解消になりそうです。


NHKのラジオ体操は、無料のアプリもありますので、いつでも好きなときにやることができます。


「ちょっとストレスが溜まってきたかな」と感じるのであれば、自宅でちょっとやってみるのもいいですね。たった5、6分ですので、あっという間に終わります。


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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。
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(心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長 内藤 誼人)

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