「暑いですね」と言った相手が本当に望んでいる返答はこれ…その時、"人を動かせない人"がよく口にする言葉
2025年4月22日(火)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/trumzz
※本稿は、杉田隆史『「なんだか生きづらい」がスーッとなくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
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■「正論」を言えば言うほど人は動かない
昔、私がある会社で一緒に働いた人で、いい意味で正義感が強いというか、悪い意味でガマンできない人がいました。仮にBさんとしましょうか。
そのBさん、「あの人は仕事ができないからなんとかしてほしい」とか、「私情をはさんだ人事はおかしい」とか、問題に気がつくと、すぐに直接トップの人に話しに行くんです。
そのBさんの言い分を聞いてみると、たしかに全部正しいことばかりなんです。
ところが、Bさんはそういった正論を言っているにもかかわらず、言い分は通らないばかりか、かえってまわりの状況が悪くなって、トラブルが絶えないんですね。
そしてついにはBさん、会社にいづらくなったのか、辞めてしまいました。
そんなBさんの姿を見て私が思ったのは、こんなことなんです。
「正論は人を動かさない」
おそらくBさんの今までの人生は、「私は正しいことを言っているのに、まわりがいけないんだ」と憤ることの連続だったのではないだろうかと……。
正論というのは、自分が相手より少しでも正しいと思うと、つい言ってしまいがちだし、それが相手に聞き入れられないと、「私は正しいことを言っているのに、わからない相手がいけないんだ!」ということになって、そこで「話が終わってしまう」んですよね。あとは、自分の問題ではなく、相手の問題なんだと。
でも、たしかに正論は、まさに正しいんですけど、言えば言うほどよけい「人を動かさない」、ということもあると思います。正しいことばかり言う学級委員はなぜか人望がなかったりするのも、そういうことなんだと。
■「共感」から入る
では何が「人を動かすのか?」ってことですよね。
まず次の2つのパターンの会話例を見てください。
あなたならパターン1と2、どちらの友人のリアクションのほうがうれしいですか?
パターン1
あなた 最近、全然仕事のやる気が出なくて……。
友人 そんなこと言っても仕事なんだから、やるしかないじゃん!
パターン2
あなた 最近、全然仕事のやる気が出なくて……。
友人 そうかぁ、やる気が出ないんだね。
まずパターン1は、「正論」を言っています。
でも「ただ正論を言えばいいってもんじゃない」ということは、先にお話ししたとおりですよね。
それに対してパターン2は、「共感」しています。
人は共感してもらえると、心が軽くなって、ちょっとだけ前に進めるようになるんですよ。
人を動かすのは、「正論」ではなく「共感」なんです。
写真=iStock.com/JGalione
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■「相手の気持ち」に共感していないケースは多い
「共感が大切だってことはとっくに知ってるよ!」なんて思う方もいるかと思います。でも私たちって「共感」が大切だとわかっていながら、ついつい自分本位な前向きメッセージとか言っちゃいませんか。
たとえば、キレイな女性がいて、「フラれちゃった……」なんて、ションボリしていたとしましょう。そんな時つい励まそうと思って、
「○○さんなんて若くてキレイなんだから、大丈夫だって。○○さんのこと好きだっていう男なんか、世の中にいっぱいいるって」
なんて言っちゃいませんか?
これって一見問題がない返答のように見えるんですけど、その女性の立場からすれば、落ち込んでいる気持ちに全然「共感」されていないんですよね。
おそらくその女性は、「そうだよね、ありがとう」なんて言いながらも、どこか理解されない淋しさを感じるのではないでしょうか。
むしろ、こんな時はしんみりと、「あぁ、そういう時って、つらいよねぇ」なんて、まずその女性の気持ちを代弁して、「共感」してあげるのがいいかなと思います。
■「暑いね」と言った相手がほしいもの
「共感」というのは、なにも悩んでいる時だけでなく、日常のさまざまな場面でもよく使われています。
ほら、「スモール・トーク」ってあるじゃないですか。あまり深くならない話。日常のコミュニケーションにおいて、「スモール・トーク」って必須ですよね。それがうまくできないと、どこかギクシャクする。
たとえば、ある女性の話なんですけど、人から「暑いですねー」とか言われた時、「エッ? 暑い? そもそも私、仕事中には暑いとか寒いとか感じないんですよ」
とか質問にマジメに答えちゃうんですよ。
杉田隆史『「なんだか生きづらい」がスーッとなくなる本』(三笠書房)
この場合の「暑いですねー」は、挨拶代わりの言葉で、答えなんかはどうでもいいんですね。相手の人は、単にその女性との出会いがしら、ちょっと言葉を交わして「共感」したいだけだと思うんです。
それなのに、その女性が妙にマジメに答えてしまったことで、「共感」が成り立たないというか、その答えは軽く相手を拒絶しているような感じにさえなっていますよね。現にその女性、友人がほとんどいないって言っていましたし……。
このように「共感」がうまくできないことで、どこか人との関係がギクシャクしちゃう人もいるんです。
スモール・トークって当たりさわりないようで、じつは当たりさわりあるんですよ。
■人間関係がうまくいっていない人はこの言葉を
もちろん人間関係がうまくいっている間柄であれば、正論ばかり言っても、スモール・トークなんかしなくても全然大丈夫なんです。
ただ“なんか相手との関係がうまくいってないな”と思ったら、この「共感」ということを思い出してみてくださいね。
どうでしょう、あなたはちゃんと人に「共感」していますか?
ただ正論だけを伝えていませんか?
——正論は人を動かさない。
共感こそが人を動かす。
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杉田 隆史(すぎた・たかし)
心理セラピスト、メンタルトラベル代表
1970年東京都生まれ。高校の頃から漠然とした生きづらさに悩み、「心の病気じゃないけどツライ」という状態を20年間続けて、引きこもりも経験。2006年に心理セラピーと出会い、初めて生きづらさから解放されたことをきっかけに、日本における第一人者たちからさまざまな心理セラピーの技法を学ぶ。自らの経験から、「心の病気じゃないけどツライ」という人の受け皿の必要性を感じ、「悩んでいない人の悩み相談」という看板を掲げて、心理セラピーの個人セッション、ワークショップを開催。クライアントは日本国内はもちろん、海外からも訪れ、これまで5000人以上の悩みを聴き、セラピーを行なってきた。
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(心理セラピスト、メンタルトラベル代表 杉田 隆史)