「肉のまとめ買い→小分けで冷凍保存」は節約に見えるが…FPが明かす「お金の貯まらない人の冷蔵庫」にあるもの
2025年4月28日(月)9時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo
※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
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■冷蔵庫と家計管理の密接な関係
今日の夕飯の献立はもう決まっていますか? ぱっとメニューが言えた人は、家計管理がきちんとできている、財テク向きの方かもしれません。逆に、冷蔵庫の中身を思い出せず、何も献立が浮かばなかった人は要注意。実は、ご自宅の「冷蔵庫」から、お金が貯まる人と貯まらない人の差がはっきり見えてくるんです。
冒頭、唐突に夕飯の献立をお聞きしました。ご飯を作ろうと思うと、まず冷蔵庫にある食材=在庫を確認する必要があります。つまり、献立を考えるには、冷蔵庫の中身を把握しておくことが前提となるわけですが、このことは、家計管理にも密接に結びついているのです。さて、読者の皆さんは今日の夕飯に使う食材をぱっと思い出せたでしょうか。
ここで早速ですが、私がこれまでに取材などで拝見したさまざまなご家庭の冷蔵庫から導き出した、「お金の貯まらない人の冷蔵庫あるある」TOP5をお伝えします。
■干からびた野菜、放置されたドレッシング…
①賞味期限切れの食材が大量にある
賞味期限の切れた食品が冷蔵庫にどれくらいあるかで、無駄になってしまった支出が見えてきます。伺ったご家庭の中には、原型をとどめていない干からびた野菜が冷蔵庫の奥からゴロゴロと出てきた家も。ピーマンが20個出てきた時には、「なんでこんなにピーマンを?」と思わず質問すると、「安売りしていたのでつい買ってしまった」とのこと。すでに家の冷蔵庫にピーマンがあったにもかかわらず在庫を把握していなかったため、「お得」につられて無計画に買い物をした結果、食材を使い切れず無駄にしてしまったのです。
②最後にいつ使ったかわからない調味料が大量にある
ナンプラーや甜麺醤、チリソースといった、ある特定の料理を作るために買った調味料が冷蔵庫に眠っていませんか? 取材で伺ったご家庭の多くで、冷蔵庫のドアポケットに刺さったまま何年も放置されている調味料が散見されました。賞味期限が2、3年過ぎているドレッシングの瓶が10本ぐらい見つかったお家もありましたね。また、「冷や汁のたれ」「ジャージャー麺の素」といった汎用性の低いピンポイントの調味料も、1回使ったままリピートせず、かといって捨てるのも惜しくてそのままになっていることも。あと、ファストフードについてくる小袋のケチャップやマスタード、刺し身のパックに付いていたわさびや生姜の小袋を大量に溜め込んでいるご家庭も多かったです。
■保冷剤の量でわかる「惣菜やスイーツ購入」の頻度
③冷蔵庫が整理されていない
スーパーで買ってきたものを、空いているスペースにとりあえず押し込んでいませんか。すると食材の定位置が決まらないため、探すのも一苦労。在庫管理も困難となり、無駄なものを買ってしまうという負のループがはじまります。一度冷蔵庫を整理してみると、①②のような要らない食材がごっそり出てきて驚くかもしれませんよ。
④保冷剤が大量にある
これから暑くなる季節ということもあり、便利に思える保冷剤ですが、それでも、一日に何十個も使うでしょうか? また、保冷剤がたくさんあるということはそれだけ惣菜やスイーツを買う頻度が多いということ。つまり、保冷剤がたくさんある=食費がかさんで出費が多い可能性が高いです。
⑤入れなくていいものまで冷蔵庫に格納している
食材の中には常温保存で問題ないものもありますが、とりあえず、なんでもかんでも冷蔵庫に突っ込んでいる人も多かったです。一番多かったのは、じゃがいもや玉ねぎ。芋類などは常温保存できるものが多いので、風通しの良い暗所に置いておけば、冷蔵庫の省エネにつながりますよ。
写真=iStock.com/ismagilov
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■冷蔵庫にホワイトボードを貼ってムダをなくす
ここまで、お金の貯まらない人の冷蔵庫の例をご紹介してきましたが、逆に、お金の貯まる人の冷蔵庫とはどんなものか気になりますよね。私がもっとも感動した上野さんご夫妻(仮名/30代)の例を共有します。
共働きの上野さん夫妻。小さいお子さんもいて忙しいはずですが、まず、冷蔵庫がピカピカでものすごく綺麗でした。中を開けると、肉、ハムやベーコンといった加工品、チーズなど、食材ごとにストッカーに分けて格納してあります。「左側に置いてあるチーズやハムのストッカーは主に朝食ゾーンになっていて、起きたらまずここから食材を取るんです」とのこと。置く場所を決めてルーティンにしてしまえば献立で悩む必要もなく時短になるなと、目からウロコです。
さらに驚いたのは、冷蔵庫に貼ってあったホワイトボード。「豚肉 300グラム(5/10)、ネギ2本(5/13)、マヨネーズ2/3本(5月いっぱい)」と、冷蔵庫の中にある食材と残量、賞味期限をすべて書き込んだ「在庫管理表」が書いてあったのです。ストッカーに分けられているため在庫の把握がしやすく、なくなった食材は、文字に横線を引くことで、今日買い足すべき食材が一目瞭然。献立も在庫管理表の賞味期限を見て、「豚肉の賞味期限が明日までだから生姜焼き」というかたちで決定するとのこと。
また、上野さん夫妻は毎月1回、「家計会議」を開催。冷蔵庫の中身や日用品など、費目ごとに使ったお金を振り返り、使うお金を毎月、微調整していたのです。この徹底ぶりには、プロの私も大感動。そうして余ったお金を貯蓄に回し続けた結果、上野さん夫妻は30代ながらすでに1000万円の貯金を達成していました。
■「お得」につられて食材を大量買い
ではここで、上野さん夫妻の真逆の例もご紹介しておきましょう。小幡さん一家(仮名/40代)は、とにかく「セール」「お得」に目がありません。5人家族ということもあり、買い物はまとめ買いが基本。ブラックフライデーといったセール期間にまとめて飲み物やお菓子などを箱買いし、肉などもコストコなどで大容量パックを購入後、小分けにして冷凍するようにしていました。スーパーで買うより割安になっているものが多く、お得に買い物はできているように見えますね。
しかし、小幡家の冷蔵庫を見てみると、家族それぞれが半端に飲み残したペットボトルがゴロゴロと散乱。また、大容量ボトルで買ったドレッシングは使い切れず、賞味期限切れになっていました。せっかく小分けにして冷凍した肉も、部位などを記載していないので何の肉かわからず、長期間入れっぱなしだったために霜までつき、ますます判別不能の代物と化していました。「お得」につられて買った食材の多くが使い切れないまま無駄になり、結果的には「割高」になっていたのです。
写真=iStock.com/Qwart
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■「お得に買物」がストレス解消になっているのでは
小幡さんのクローゼットも拝見したのですが、たくさん洋服は持っているのに、普段着ているのは決まった数着のみで、残りのほとんどがタンスの肥やしになっていました。クローゼットと冷蔵庫の関係は相関していることが多く、冷蔵庫が整理されている方は、クローゼットも整理整頓されている場合が多いです。
小幡家のケースでは、冷蔵庫もクローゼットもものは多いのに実際に使っているものは少なく、残りのほとんどが無駄になってしまっていたのです。家計簿を見せてもらうと、毎月赤字にならないギリギリのラインで推移していました。
ただ、小幡さん一家の例は珍しいものではなく、むしろ、忙しい現代人にとって「お得に買物をする」という行為自体がストレス発散になっているのではないかと思いました。というのも、知り合いのあるエリート女性のお家に行くと、段ボールが山積みになっているんですね。「これは一体?」と聞けば、「夜な夜なネットショッピングしちゃって、開けられないまま置いてある」と言います。ひとつひとつは決して高くないらしいのですが、「買う」という行為自体が目的となっているので、封も切らず使わないままになってしまっているのです。
■整理整頓が「お金が貯まる家」をつくる
結論を申し上げると、冷蔵庫が汚い人はお家全体も整理整頓できていないケースが多く、“整理できない”生活習慣は、お買い物の際の計画性のなさにも通じ、家計が放漫財政になっている——ということです。逆から言えば、冷蔵庫の管理を徹底できると家計のコントロールがしやすく、貯蓄も貯まりやすくなる、ということですね。
冷蔵庫は一例ですが、整理整頓して家を綺麗に保つと「在庫の見える化」となり、ひいては計画性ある買い物や時短も可能となり、お金を貯めやすい環境が整っていくということなんです。
少し話はズレますが、先日、生協を頼んでいる女性が、「箱から出してしまうのが本当に面倒」とこぼしていました。私も、食洗機で洗い終わった食器を食器棚に戻すのが億劫になります。「整理して収納する」ことへのハードルが高くなっていることも、整理整頓が進まない要因のひとつなのではないかと思いました。新年度のはじまりを機に、まずは冷蔵庫の中を一段ずつ整理してみるのはいかがでしょうか。
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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。
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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)