10代の「インスタの使い方」が怖すぎる…「DM欄ではわからない」悪い大人に自宅が特定されるリスク大の機能

2025年4月30日(水)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

10代から圧倒的な人気を誇るInstagramだが、10代を狙う悪意ある大人の温床でもある。こうした被害を防ぐために、Metaは一定のアクセス制限がかかるティーンアカウントの導入を始めた。「オンライングルーミング」と呼ばれる行為を繰り返す大人の手口を、ITジャーナリストの鈴木朋子さんが解説する——。
写真=iStock.com/mapo
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■日本の10代はInstagramで何をしているのか


Instagramは海外だけでなく、日本でも10代から圧倒的な人気を誇る。NTTドコモのモバイル社会研究所が2025年4月に公表した調査によると、SNSを利用している中学生は92%にのぼり、Instagramの利用率はLINEに次いで2位の52%で上昇傾向にある。


なお、この調査では小学生のSNS利用の実態も浮かび上がっている。本調査におけるSNSは、LINE以外すべて13歳以上の利用が規約に定められている。つまり、規約に反してSNSを利用している子どもが多いことがわかる。


出所=モバイル社会研究所

10代はInstagramで何をしているのか。実は、10代のInstagramの使い方は、大人とは少し異なる。


メインとして利用している機能は、24時間で消去される「ストーリーズ」。1日に何度も投稿することも珍しくない。自動で消えるため、映えていないシーンや日常の思いを気軽にシェアしている。


アカウントは複数持っており、メインアカウントは公的なアカウントとして多数の知り合いと繋がり、無難な投稿を行う。一方、サブアカウントは親しい人とだけ繋がり、プライバシーに踏み込んだ投稿も行っている。


メッセージ機能(DM)もあり、LINEの代わりに使っている人もいる。LINEには公式アカウントから多くのメッセージが来るため、仲が良い友人はDMのほうが速くて確実だからだ。


■あっという間に多数の10代のアカウントを入手できる


生配信ができる「ライブ」も人気だ。「インスタライブ」、略して「インライ」と呼ばれるライブ機能は、友達と集まったときなどに開始し、そこにいない友人との交流に使う。ライブ配信というと配信者になりたい人がファンと交流するイメージだが、10代はグループで行うビデオ通話の感覚で行っている。


Instagramの「ライブ」配信(出所=Meta)

どれも学生らしく楽しい利用法だが、ここに10代を狙うユーザーが入り込む。


ストーリーズは基本的に「公開」であるため、相互フォローでなくても見られてしまう。悪い大人は10代のアカウントをひとつ見つければ、そのフォローリストから10代を辿っていく。10代はリアルな友人と繋がっていることが多いため、あっという間に多数の10代のアカウントを入手できるのだ。


そして、一人ずつにDMを送り、親しくなっていく。最初は些細な雑談を交わし、信頼を得たと感じた段階で裸の画像のやり取りやリアルに会うことを要求する。これは「オンライングルーミング」と呼ばれる行為で、悪い大人にとってはゲームのひとつかもしれないが、子どもには一生のキズとなる。


ライブ配信は、その時間にその場所にいることがわかってしまう。異なるサービスではあるが、先月人気女性ライバーがライブ配信中に刺殺された。同様のことはインスタライブでも起こる可能性がある。配信場所が自宅である場合、ストーカー被害に遭う可能性もある。


こうした被害を防ぐために、Instagramのティーンアカウントが誕生した。


■10代利用者向け機能「ティーンアカウント」とは?


Metaは2025年1月21日、Instagramの10代利用者向け機能「ティーンアカウント」を発表した。ティーンアカウントとは、10代を保護するためにコンテンツやメッセージ機能の一部に制限をかけるものだ。日本国内でもすでに開始しており、今後数カ月以内に13歳から17歳の利用者すべてがティーンアカウントに移行されるという。


Instagramがこうした対策に乗り出した理由は、未成年者のSNS利用についての批判が高まり、対策を講じる必要があったためだ。子どものSNS利用に関しては、ルッキズム、摂食障害、誹謗中傷など、メンタルヘルスとともに健康への悪影響が懸念されている。


Metaのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、2024年1月、アメリカの上院公聴会に他のSNSプラットフォームのトップとともに召喚された。SNSの影響で自傷、自死してしまった子ども達の保護者も公聴会に参加し、ザッカーバーグ氏は保護者に対して謝罪を行った。


オーストラリアでは2024年11月、16歳未満のSNS利用の禁止法案が成立している。本法案は、対策を講じるべきプラットフォーム側に罰金を課すものだ。しかし、運営企業や人権団体からの反発も大きく、今後の動向が注目されている状況だ。


Instagramの「ティーンアカウント」(出所=Meta)

■不要な出会いや交流を閉じることができる「制限」


ティーンアカウントの対象者(13歳から17歳)には、以下の制限がかかる。


●非公開アカウントに切り替え
16歳未満のすべての10代の利用者、および新規登録する18歳未満の利用者は、原則非公開アカウントとなる。つまり、フォローを許可した人以外からは見られない。


●メッセージの制限
自身がフォローしている(相互フォロー含む)相手からしかメッセージを受け取ることができない。


●不適切なコンテンツの制限
発見タブやリールなどに表示されるコンテンツの種類が制限される。人々が戦う様子や美容整形を勧める内容は表示されない。


●タグ付け・メンション・コメント・DMの制限
タグ付けやメンションはフォローしているアカウントからのみに制限される。また、コメントやメッセージに攻撃的な言葉が含まれた場合、フィルタリングされる。


●利用時間のリマインド、スリープモード
1日あたりの利用時間が60分を超えると、アプリを閉じるように通知が届く。また、午後10時から午前7時まではスリープモードになり、通知がミュートされる。


●ライブ配信の制限
13歳から15歳の利用者は保護者の許可なしにライブ動画を配信することができない。


つまり、ティーンアカウントにより、不要な出会いや交流を閉じることができる。


■年齢を偽って登録することを防ぐ仕組みを開発


また、ティーンアカウントの制限を緩和、または強めたい場合は、さらにInstagramのペアレンタルコントロール機能を設定する必要がある。Instagramのペアレンタルコントロール機能は、1日の利用時間の上限を超えた際にはアプリのブロックも可能になるなど、ティーンアカウントよりも制限を強められるが、一方で子どもが勝手にペアレンタルコントロールを外すことも可能だ。


年齢認証についても強化する動きがある。先ほどの調査で、本来は利用できない小学生でもInstagramを利用している実態が見えたが、年齢を偽って登録することを防ぐ仕組みを開発しているのだ。


Metaによると、4月21日からアメリカにおいて、AIを使って10代を検出するテストを開始した。日本においても、Instagramに登録した生年月日を18歳以上になるように変更しようとすると「本人確認書類のアップロード」または「セルフィー動画の録画」を求められるテストをすでに開始している。AIによる検出の開始も待たれるところだ。


■Instagramは知らないうちに位置情報を共有している?


Instagramといえば、「インスタで家バレする!」という騒ぎを目にした人がいるかもしれない。Metaは4月10日、Instagramの新機能「Instagram Map」のテストを日本を含む一部の地域で開始した。Instagram Mapとは、Instagramで「親しい友達」リストに入れているアカウントなど、特定の相手と現在地を共有できる機能だ。


この機能は、自ら位置情報をシェアするという操作をしなければ、現在地を共有されることはない。つまり、デフォルトは「オフ」になっている。


しかし、Metaからのアナウンスがないまま実装されたことや、Instagram Mapの設定画面がわかりにくいため、自分の居場所が公開されていると考えたユーザーがSNSに声を挙げたのだ。


位置情報の共有は、重大なプライバシーを露出することとなる。前述したように何もしなくても問題ないのだが、10代に限らず、不安な人は対策しておくといい。


対策には2つの方法がある。Instagram Mapをオフにする方法、そしてInstagram自体に位置情報の利用を許可しない設定を行う方法だ。ここでは、Instagramに位置情報の利用を許可しない方法を紹介する。


iOSでは、「設定」アプリの「プライバシーとセキュリティ」にある「位置情報サービス」で「Instagram」を選び、「しない」を選択する。Androidでは、「設定」アプリの「位置情報」から「アプリの権限」などで「Instagram」を選び、「許可しない」を選択する(※OSバージョンや機種により手順が異なる場合がある)。


筆者提供
iOSでは、「位置情報サービス」で「Instagram」を選び、「しない」を選択する - 筆者提供
筆者提供
Androidでは、「アプリの権限」などで「Instagram」を選び、「許可しない」を選択する - 筆者提供

■子どものSNS利用は、家庭だけに任せておけない


インターネットの世界は利用者の年齢に合わせてゾーニングされていないため、子どもは大人の世界に放り出されている状態だ。


Instagramのティーンアカウントは強制的に10代向けの制限がかかるため、筆者は効果的だと考えている。しかし、他のSNSやゲーム、ネットサービスの利用なども考えると、スマホ全体を10代向けにカスタマイズする対応も必要だ。OSの開発会社や携帯電話会社が提供する「フィルタリング」や「ペアレンタルコントロール」もぜひ活用してほしい。


また、子どもに制限を掛けるうえでは、家庭でのルール作りも大切だ。子どもがなぜスマホを使いたいのかを尋ね、適切なスマホ利用時間や場所、注意点などを家族でしっかり話し合う。子どもが納得するルールを作成し、そのルールを守るために機能制限を行うフィルタリングを利用する。つまり、フィルタリングとルールの合わせ技が有効だ。


とはいえ、ITの進化は速く、次々と新たなサービスがリリースされる。これまでになかった手段で子どもへの悪影響が及ぶかもしれない。この課題を子育て世帯だけに任せてしまうのは酷であると考える。プラットフォーム、学校、行政など、子どもを取り巻く人々の協力により、子どもの健やかなネット活用施策に取り組んでほしい。


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鈴木 朋子(すずき・ともこ)
ITライター・スマホ安全アドバイザー
メーカー系SIerのSEを経て、フリーランスに。SNSなどスマートフォンを主軸にしたIT関連記事を多く手がける。10代の生み出すデジタルカルチャーを追い続けており、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。
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(ITライター・スマホ安全アドバイザー 鈴木 朋子)

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