これができないと孤独な老後が待ち受ける…高齢になっても「親友」「新友」ができる人がやっている行動
2024年5月1日(水)15時15分 プレジデント社
※本稿は、坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/lucigerma
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lucigerma
■友人は「選ぶ」ものではなく「出会う」もの
「友を選ばば書を読みて、六分の侠気四分の熱」というのは与謝野鉄幹の詩です。人生を豊かにするうえで友人はとても重要です。
私は、友人は「選ぶ」ものではなく「出会う」もの、友情は「育てる」ものだと思っています。
なんでも打ち明けることのできる友人、自分の長所も欠点も受け入れて励ましてくれる友人がいてほしいと、多くの人は願います。
人生、そうした友人に巡り会えば、それはとてもすばらしいことではありますが、それは現実には難しいことでもあります。
そうした友人との出会いに恵まれるのは縁に左右されます。そして友情にまで育つのは、出会ったあとのつきあい方が大きくものをいいます。
出会いは偶然のものです。たまたま近所に住んでいた、中学や高校で同級生になった、職場の同僚のなかで気が合った、などなど。
しかしせっかく出会って、しばらく親しくつきあっていても、引っ越したり卒業したり、転勤すると、いつの間にか接する機会が少なくなり、やがて連絡先もわからなくなっていきます。
しかし、いくらこちらが素敵だな、立派だなと思う相手でも、きっかけがなくて親しくなれない場合も多いのに、いっときとはいえ親しくなれたのは、とてもラッキーなこと。
その縁が消えてしまうのはさびしいことなので、細々でもいいから、友人とのつながりは保ちたいものです。
■偶然の出会いから一歩進んで、メンテナンスの努力を
昔は年賀状や暑中見舞いが、そうしたつながりを保つ手段でしたが、いまはメールやSNSなど、いろいろな手段でつながることができます。ただ私は、オンラインでつながるだけで満足せず、たまには直接会うことも必要だと思います。
ともあれ、出会った人とのつながりを続けていけば、単なる幼馴染みや同僚が大事な友人になっていきます。
そうした友人の何人かが、できれば「人生の伴走者」になってほしいものです。お互いが別々に生活していても、動向は把握している。何もかも理解しているほどではないが、互いに好意を持っていて、頼まれれば助け合う……。
こうした友人を大事にしていきたいものです。そのためには偶然の出会いから一歩進んで、メンテナンスの努力が必要になります。
メンテナンスとは、一方的にどちらかだけが助けてもらうのではなく、できることでお返しをして、互いに感謝を伝えることです。
縁があって出会った友人のなかで、いろいろなことを教えてくれる人、いい人を紹介してくれる人、仕事で協力してくれる人、よい医者や病院を紹介してくれる人……つながりは、そうしたやりとりのなかで深まっていくのです。
ではどうしたら、そんな「人生の宝」といえる友人に恵まれるのでしょうか。
それは、自分がしてほしいことを相手にする利他的行動がカギです。たとえば、相手の役に立つことを教える、相手の長所を褒める、相手の成功や幸福をよろこぶ、相手の行動に感謝する……。
■新しい環境に身を置き、友情を育む
先ほど「褒めることが大事」と述べました。現代の日本人は、全体として自己肯定感が低い傾向がありますが、自己肯定感を高めるには人に与えること、感謝することが有効だといわれています。
私の経験からも、友人から感謝されたり、自分の善意や努力を認めてくれたり、自分の能力を高く評価してくれる友人がいたら、自己肯定感は高まり幸福になります。
友情は、自分が友人のよいところを発見してそれを伝え、頑張っているのを応援することで育まれます。褒めれば相手もよろこびますが、よろこぶ相手を見ている自分自身もうれしく、幸せになります。
つまり「利他の原理」が働くのですが、利他的に行動するのが友人を得る秘訣です。そうした友人のなかから、生涯の親友ができるかもしれません。
人生で友情を培った大事な友人も、高齢期になると亡くなったり、病気などで交流できなくなったりしていきます。これはとても悲しいことです。
年を取ったら友人、とくに親友は少なくなり、新しい友人はできないからさびしくなるだけだと思い込んでいる人も多くいます。
でも心がけしだいで、年を取っても新たな出会いに恵まれます。といってもいきなり友人、親友との出会いを期待するのではなく、新しい知り合いを増やし、そのなかから友情を育んでいけばよいのです。
そうした新しい出会いに恵まれるには、若いときや壮年期もそうですが、新しい環境に身を置くことです。
写真=iStock.com/RichVintage
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■いまからだって「新友」も「親友」もつくれる
新しい場に行けば新しい出会いがあります。習い事でもリハビリでも、新しいことをはじめて、新しい場に出るのです。そこで新しく出会った人のなかで気が合う人ができる可能性があります。
その人が励ましたり助け合ったりすることができる「新友」になるかもしれません。もちろん一方的に待っているだけでなく、こちらから働きかける、言葉をかけることも大事です。
坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)
あるいは、ご無沙汰していた同窓会に顔を出すと、昔にはなかった新鮮な出会いがある可能性もあります。
「新友」でなくても、「推し」の人を見つけて応援するのもおすすめです。友人は相互作用の産物で相手の気持ちに左右されますが、「推し」やファンの場合は、こちらが一方的に応援していればいいのですから、ハードルは高くありません。
気に入った人を「推し」、つまりファンになって応援しましょう。アイドルやスポーツ選手だけではなく、身近にも一生懸命頑張っている人がいるはずです。
そんな形で、高齢になっても人を褒める、応援する、助けようとする人のまわりには、新友が集まってくるはずです。
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坂東 眞理子(ばんどう・まりこ)
昭和女子大学総長
1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)に入省。内閣総理大臣官房男女共同参画室長。埼玉県副知事。在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年、昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。2007年に同大学学長、2014年理事長、2016年総長。2023年に理事長退任。著書に300万部を超えるベストセラーの『女性の品格』(PHP研究所)のほか『70歳のたしなみ』(小学館)など多数。
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(昭和女子大学総長 坂東 眞理子)