裁判所が旧統一教会に解散を命ずる確率が"判明"…元「中の人」で教団に最高裁で勝った私だから言える"結論"

2024年5月14日(火)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

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文科省が東京地裁に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を請求してから半年が経過した。いつ裁判所の判断が下るかは未定だが、元信者で脱会後に教団と最高裁まで争ったことのあるジャーナリストの多田文明さんが、司法が解散を命ずる確率を予測した——。
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■旧統一教会への「解散命令」決定の足音


旧統一教会への「解散命令」決定の足音がひたひたと近づいています。


なぜ、そう言えるのか。私自身が元信者として長く教団の悪質な霊感商法などの実態を見てきたことに加え、今回の解散命令請求の裁判にかかわる「当事者」だからです。


昨年10月、文部科学省が教団に対する解散命令を東京地方裁判所に請求しました。実際、解散命令がなされるかどうか。多くの人が注目していますが、その判断は司法に委ねられています。


文科省はこれまでに170人を超える私を含む元信者など被害者にヒアリングを行い、7回にわたる報告徴収・質問権を行使しました。教団の回答が十分な内容でなかったところもありましたが、元信者らの口で語られた教団の実態の陳述書や資料など5000点以上の証拠が裁判所に提出されています。


2023年10月12日、盛山正仁文科大臣が解散命令請求の会見を行った際にも「不法行為として旧統一教会に対する損害賠償請求を認容する民事判決は、文化庁において把握した限りでは32件であり、一審で請求が認容されるなどした被害者の総数は169人、認容等をされた総額は約22億円、1人当たりの平均金額は約1320万円におよびます」と述べており、このなかには、教団の使用者責任を認めた判決もあります。


文科省は、献金の獲得や物品販売の活動は財産利得の目的としたものとして「宗教法人の目的を著しく逸脱するもの」であり「献金勧誘行為などは、旧統一教会の業務ないし活動として行ったものであり、宗教法人世界平和統一家庭連合の行為と評価できるもの」としています。


旧統一教会は、昔から霊感商法や正体を隠した勧誘などは信者らが勝手にやったことで教団本部とは関係がないとしていますが、もはやその主張は通じなくなっています。


かつて「中の人」だった私も文化庁のヒアリングにて、教団内での実態について話しましたが、そうした全国の元信者らの証言が積み重なり、解散命令請求の要件とされている「悪質性」「組織性」が白日のもとにさらされて、司法の場において適正に判断されると信じています。


■解散命令の司法判断が内部で確実に進んでいると断言できる理由


しかしながら解散命令請求の裁判は非公開です。どのような観点で裁判が推移しているのかがまったく見えません。文科省も裁判の経過を公表できないなか、旧統一教会の田中富広会長は今年2月22日の審問後に会見を開いて、文科省の解散命令請求は「明らかな間違い」との意見陳述をしました。


文科省が解散命令請求すると決断した背景にあるのは、教団の「組織性・悪質性・継続性」です。元信者らが教団に対して起こした過去の民事裁判は、まさにその教団の「組織性・悪質性」を明らかにするうえで、非常に有効です。


私も1999年に元信者らとともに、統一教会相手に教団名を隠した布教活動についての違法性を問う裁判(違法伝道訴訟)を起こしました。2002年に東京地方裁判にて勝訴判決が出て、2004年に最高裁にて判決が確定しています。


写真=iStock.com/deepblue4you
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冒頭で「足音が近づいている」と書きましたが、なぜ、解散命令の司法判断が内部で確実に進んでいるといえるのかといえば、解散命令請求裁判の“前哨戦”に私たち被害者の声を聞いた文科省の側が“勝利”しているからです。東京地裁は今年3月、教団に対して10万円の過料の支払いを命じました。


これは教団が文科省の報告徴収・質問権に対して、十分な回答をしなかったことに対する“行政罰”。教団をめぐって民事裁判で下された数々の「違法判断」を、これまでは裁判官がどのように受け止める可能性があるか皆目わかりませんでしたが、この過料支払い命令によって、司法の“立ち位置”がわかりました。支払い命令の決定文にもこう書かれていました。


「信者らによる献金勧誘等行為について不法行為が認定されており、22件の民事判決で認定された事実関係によれば、全国各地において長期間にわたり、多数の被害者らに対し、その財産権や人格権を侵害する違法な行為が繰り返されていたとされており、22件の民事判決で認容された被害者らの損害額の総額が15億円超に上っている。(中略)被害に遭った者すべてが訴訟を提起するとは考え難いことからすれば、22件の民事判決で被害者とされた者のほかにも、(旧統一教会の)信者から同様の被害に遭った者が少なからずいることが推認される」


教団の不法行為によって社会全体で甚大な被害が生み出された状況が認められると、司法がみていることは明らかです。これにより、私は「解散請求決定は確実に前に進んでいる」と確信したのです。


■「旧統一教会に解散命令を言い渡す確率は90%超はある」


振り返れば、1990年代に私を含む元信者らが弁護士らとともに起こした裁判は、教団の違法性が何も示されていないなかでの戦いで、原野に生えている草や木を一つ一つ刈り取りながら前に進むような艱難辛苦の歩みでした。私の裁判のスタートは1999年ですが、それより前に教団に戦いを挑んだ元信者らの歩みはより険しい道だったはずです。


当時は、今のように世論が味方についているわけではなく、逆に信者になったのは、自己責任だろうといった「逆風」のなかで行われました。


しかも1990年代から2000年代にかけて教団は多くの信者とお金を集めて隆盛を極めていた時期で、組織的な攻撃性はすさまじいものがありました。何より教団の関連団体である勝共連合を通じて多くの政治家とのつながりもあり、教団は飛ぶ鳥を落とす勢いでした。そうしたビハインドの環境下で元信者や弁護士らは裁判を起こしてきたわけです。


当時、元信者らは教団を辞めた時にはお金もほとんどなく、社会に放り出された形で、一からすべてを始めなければなりません。長く信者であった者ほど、布教とお金集めの活動だけをしてきたために、仕事におけるスキルもありません。自らの生活をするために精一杯という人たちもたくさん見てきました。


それでも、巨大な宗教団体・旧統一教会を相手に、人生を奪われたことへの損害賠償や献金の返金を求めての裁判を起こして戦おうと立ち上がる人たちがいました。


当時の旧統一教会という巨大組織からみれば、数千万円の損害賠償請求をする元信者らは、取るに足らない存在であったかもしれません。それゆえ教団側は「霊感商法は信者らが勝手にやったこと」という詭弁を弄して、責任を逃れようとしました。


しかし真実の言葉にまさるものはありません。司法の場などでの元信者らの告白によって、社会が動き、国が動き、今に至っています。


教団は、コンプライアンス宣言(2009年)において今後は「教団名を隠しての伝道はしない」としていますが、これからの改善だけで終わりではありません。教義を教え込む施設にもかかわらず「自己啓発の勉強をするビデオセンター」とウソをついて誘うことで、「ここは統一教会ですか?」と尋ねられれば、「違います」と答えなければなりません。一つのウソをつくことで、新たなウソもつかなければならなくなります。こうした「ウソを重ねて布教してきた」過去の事実をしっかりと見つめ、社会に贖罪しなければなりません。


非訟事件である今回の解散命令請求への司法判断がいつなされるのか、その時期は全くのブラックボックスです。しかし、解散命令事由の彼らの言動が「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」にあたると判断するのは当然のことですし、前出の過料の決定文をみる限り、裁判所が旧統一教会に解散命令を言い渡す確率は100%とまでは言いませんが、90%超はあると私は見ています。


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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
悪質業者への潜入取材経験からジャーナリスト、ヤフーニュースオーサーとして活動。近著に詐欺商法の事例満載の『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)がある。
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(ルポライター 多田 文明)

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