「成長するために転職したい」は逃げである…本当に優秀な人が転職面接で言っている"一撃フレーズ"

2024年5月14日(火)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alexsl

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働くうえで一番重要なことは何か。コーチング・コンサルタントの礒谷幸始さんは「自分の『働く意味』をつくることだ。働く理由を聞かれて、お金や出世、家族といった代用品を挙げるようでは、ビジネスは行き詰まってしまう」という——。

※本稿は、礒谷幸始『無重力リーダーシップ』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


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■一生懸命働く理由は「お金」?


あなたは、なぜ働いているのか?


働いていれば、誰しもいちどは自分に問いかけたことがあるのではないだろうか。多くの人は「お金」だったり「出世」だったり、あるいは「家族」なんていう答えが多いと思う。


よく考えていくと、単に「お金」のために働くというのだけでは、しっくりこないのではないだろうか?


たとえば、お金を貯めて貯めて貯めまくったところで、それで死ぬときに墓場まで持っていけるわけもない。お金を何億円も残すというのが、そんなにうれしいことなのか?——普通に考えれば、そんなのは虚しすぎる。


ぼくたちの会社では、上場企業の取締役や、CxOとエグゼクティブクラスの人材エージェントを行っている。おもしろいもので、社会で活躍している人ほど、目の前のお金より社会性や世の中への価値機会を優先して仕事選びをする。結果的に成果を出せる自信があるからかもしれない。


なにより、お金の話ばっかり聞いていたら、誰も応援したくなくなるね。


■「出世」も「家族」もしっくりこない


「出世」にしても同じだ。仕事の肩書きなんていうのは、自分のごく一部にすぎない。現に、一歩外へ出たらそれが価値を持たない場合は多い。


ときどき、会社を定年で辞めて「株式会社○○○(世間的に名の知れた会社)元取締役」なんていう名刺を持ち歩いては、ドヤ顔で出したりする人を見るが、ぼくから見れば「で、どうしたん?」となる。


では、「家族」のためというのはどうだろうか? これはアリかもしれないが、当の家族は「家族のために働いているんだ」と言われたら、どう感じるだろうか?


——生計を共にするパートナーであれば「家計の一翼を担っている以上、当然でしょ」くらいにしか思わないだろうし、子どもに至っては「そんなふうに恩着せがましく言われてもなぁ……」と迷惑に感じるかもしれない。


毎日毎日、「会社に行きたくない」「仕事したくない」と言わんばかりの顔で通勤し、休日は無気力で1日中ゴロゴロしているような人に、「自分たちのため」などと言われても、うれしいはずがない。


■「将来なにしたい?」に対する子どもの回答


もしもみなさんが「お金」「出世」「家族」などと答えたのであれば、それは自分の「働く意味」がわからず、その代用品として「お金」や「出世」「家族」を持ち出しているだけだ。今日のビジネス現場が行き詰まっている原因も、おおもとはこの点にある。


あるとき小学生の息子に、「しいしいは将来、なにしたいの?」と聞いてみた(「しいしい」は彼のあだ名)。


「社長になりたい」
「いいやん。なんでそう思ったの?」
「だってパピー、社長でしょ? ぼくも社長したい。仕事、おもしろそうにやってるじゃん」


一方、中学生の娘に聞いてみた。


「ある(娘のあだ名)は将来、なにしたいの?」
「えー、ぜんぜんわかんないよ」
「そっか、まあいいんちゃう? これからいろんなものに触れていけば」
「そうだねー。でも、パピーの会社みたいな会社で働きたい」
「うれしいこと言うねー。でも、なんでそう思ったの?」
「心理学とかちょっと興味あるし、なによりミーティングとか? すごい楽しそうじゃん?」


■働くことの楽しさを「教育」している


礒谷家では、働くことは決してネガティブなものではなく、趣味みたいなものという価値観だ。嫌なことがあっても家族に愚痴を言うのではなく、意見をもらったり相談したりする。


とにかく「働くことは楽しい」と感じてもらいたいので、息子にコンビニでコーヒーを買ってきてもらい、購入プロセスに10円の手数料を乗せて支払い、その差額をうれしそうにお小遣いにしている姿を見たり、仕事でうれしいことがあれば、娘と腕を組んでその話をしながらトイプードルの散歩をしたりするのが大好きだ。


人間は、ほかの動物とは根本的に違う。ただ食べて、寝て、子孫を増やせばそれで満足できるわけではない。


一人ひとりに必ず生きていく意味があり、それを自覚できなければ、真の満足を得ることはできない。なかなか厄介な生き物だが、だからこそぼくらは働くうえで、単なる「なんのため」にとどまらず、一歩進んだ「意味」を自分自身でつくる必要がある。


■「働く意味」をつくるのがリーダーの役割


自由で、枠にはまらない「無重力リーダーシップ」に求められるのは、まさにその部分だ。つまり、チームや組織のメンバーに「働く意味」をつくることである。「べき論」を押しつけるのではなく、相手自身に気づいてもらうこと。どうするべきかの答えは、あくまで相手のなかに隠されている。


もちろん、それは簡単ではない。そもそも、その「意味」は自分自身に見えていないケースがほとんどだし、だからこそ、お金、出世、家族など、「自分以外のもの」にすがりついてしまうのだろう。それぞれの送ってきた人生、現在の立場、理想とする価値によってもバラバラだ。


たとえば、人生において「勝ち負け」をもっとも重視する人の場合、働く意味は個々のビジネスで勝利することである。そのためには他人を押しのけてでも成功する結果こそ望ましいが、逆に人生における価値を「調和」に置くタイプであれば、ときには自分が縁の下の力持ちになって仲間と成功を分かち合うことに、意味を見出すはずだ。


写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
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■昭和時代のブラックなやり方とは違う


ぼくは「働く意味」として、どちらもアリだと思う。他人を押しのけてまで「勝ち」をつかむ人も、チームの成果より「和」を重んじる人も、それぞれ流儀が違うだけだ。


それに人というのは、置かれた状況やそのときのメンタルによって、普段とは大きく違う行動をとることもよくある。いつもは温厚で通っている人物が、突然自分がコントロールできなくなってブチ切れるとかがいい例だ。


無重力リーダーシップでは、そんな人間ならではの不安定な部分も含め、周囲の一人ひとりに「働く意味」をつくっていってほしい。


ただし、リーダーが「意味をつくる」といっても、それは「会社や組織のために機械のように働け」と「洗脳」することではない。


昭和時代のリーダーやコンサルタントの一部では、いまでもそうした無茶な洗脳をよしとする向きがあるようだが、そうしたブラックなやり方は、スポーツでいえばドーピングのようなもの。一瞬は効果があるように見えても、じきに不正などの大きな問題を起こしたり、指示待ちのロボット社員ばかりになったり、先は知れている。


■最初の一歩は「自分を知ること」


「働く意味をつくる」とは、周囲の人の価値観や人生観にまで関わり、同時に目の前のビジネスが目指す方向性と絶妙なバランスをとる、というプロセスだ。そのためには、相手の内なる声にとことん耳を傾け、隠された表情に目を向けてほしい。


他人の心を理解するのは難しい。だから、最初は自分を知ることから始めてみたらいい。自分を客観的に見つめ直してみる。そもそも、自分はなんで働いているのか、考えてみる。


そうすれば知らなかった自分に出会えるかもしれないし、周囲に対しても新しい意図が生まれて、見方が変わるかもしれない。すると、周囲の望むこと=ビジネスの目標というプロセスに至る第一歩が生まれるのではないだろうか?


Qあなたにとって、「働く意味」はなにか?
A.

■「成長できる会社」とはどんな会社か


ぼくの話は「成長したい!」と思っている人しか共感しないと思うが、次の問いにあなたはどう答えるだろうか?


Q成長できる会社とは、どんな要素のある会社だろうか? 1分間で、その要件を箇条書きでできる限り出してください。
A.

「成長したい!」という前提のもと、この問いを尋ねると、たいていは「ネームバリューのある会社」「人気企業」「福利厚生を重視しているところ」などと答える。


でも、こうした会社は「成長したい」というニーズと合っているのだろうか?


これは、ぼくたち大人側に責任があるのかもしれない。つまり、ぼくたちが無意識的に、若い人に対してこんなふうに洗脳してしまっているような気がする。


いまの時代、週休3日制で、ハードに働くことはせず、タイパよく効率的に働き、幸せな人生を実現していく——それが理想的なビジネスパーソンの人生である、という風潮があるように思う。なぜ、働くことを嫌なものとして、働くことを嫌いになるような文脈をつくっているんだろうか?


「成長できる会社? なら、研修制度がしっかりしている会社かな……」と答えても、なんら非はない。そう教えられてきたんだから、それが真実だと真に受けているだけで、ただ純粋なんやと思う。


■「成長のために転職したい」は逃げである


ところで、この「成長できる要素」も、少しずつ変わってきた。いまは外部の協力パートナーというかメンターというか、社内では聞けない話を聞いてくれる、「社外の味方」的な存在が必要とされる時代である。いずれにせよ、相手に成長させてもらうことを期待していては、成長できないように思う。


オーナー社長であれば、会社というのはほぼほぼ人生そのものだ。特に株を100パーセント保有しているのであれば、会社と自分の人生がイコールになる。経営者の自己実現は会社の目標の実現と一致するから、経営者が目指すのは会社の目標となる。


経営者でなくても、会社に対してロイヤリティが高い人は会社のことを考えるが、そうでない人は基本的に自分のことしか考えていない。スキルアップのために転職する人もいるだろうし、その場所としての職業選択かもしれない(ぼくの会社はエグゼクティブクラスのキャリアコンサルティングをしているので、そういう人こそそうではない)。


「成長したい」
「成長のために、スキルを身につけるために転職したい」


——そう考える人もいるが、それは逃げであることが多い。だって、どんな会社でもやることは、ほぼほぼ一緒なんだから。ヒト・モノ・カネ——それに情報を使って、事業を成長させる方法を考える。


「できないことをできるようになりたい!」というのなら、スキルを身につけるのもアリだろう。でも、それでは会社の年商は上がらない。ビジネス界で成長している人は、そういう考え方はしない。


■優秀な人は「年収を高くして」とは言わない


ここで、みなさんに考えてほしい。


Q「成長する人」と「成長しない人」の違いはなにか?
A.

この違いについて、ぼくは、「自分のバリュー=付加価値がつくれるようになる」という点だと考えている。



礒谷幸始『無重力リーダーシップ』(クロスメディア・パブリッシング)

たとえば、プロ経営者と呼ばれる人なら、業種が違っても経営できる。これはひと握りの存在かもしれないが、ビジネスパーソンの最高峰だ。だったら、目指すべきはそこではないか?——こうした人にとっては、社会に役立つ会社であれば、どんな会社でもいい。


多くの人は、ビジネスゲームを勘違いしている。だから視野が狭く、自分のニーズとやるべきことが合っていない、わかっていない状態だ。


わかりやすい例が、転職時の年収を高く請求する、というパターン。優秀な人ほど、転職時に「年収が下がってもいい」と言う。実際に、そのほうが信頼されやすく、成果を上げやすいことを知っているのだ。


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礒谷 幸始(いそや・ゆきはる)
株式会社リード・イノベーション代表取締役
1981年、千葉県生まれ。私立江戸川学園取手高校から立命館大学経営学部へ進学。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、主将としてチームを大学史上初の日本一に導く。卒業後は日本アイ・ビー・エム株式会社に入社し、営業活動をしながら社会人アメフトXリーグ1部所属IBM BigBlueのキャプテンとして常勝チームへと成長させる。営業マネージャー、アメフトチーム創りの経験から、人や組織を成長させることに興味を持ち、その後は人事としてエンターテイメント企業、東証1部飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを務め、飲食チェーン企業では2年間でエントリー数を5倍以上にするなど、採用難易度の高い業界で次々と採用を成功させる。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任。150社以上のクライアント企業の幹部メンバー達と対峙した実績をもとに、クライアントと向き合いながら自社の史上最高のチーム創りも研究。同時にベンチャーキャピタリストとして、成長ベンチャー企業の支援を行っている。著書に『無重力リーダーシップ』(クロスメディア・パブリッシング)、『1万人を面接してわかった 上位5%で辞めない人財を採る方法77』(プレジデント社)がある。
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(株式会社リード・イノベーション代表取締役 礒谷 幸始)

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