ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)の敷地全体が重要文化財指定へ

2024年5月17日(金)18時46分 PR TIMES

2024年5月17日に開催された文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、株式会社淀川製鋼所(代表取締役社長 二田 哲)が所有するフランク・ロイド・ライト設計「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」(1924年竣工、兵庫県芦屋市)の敷地を重要文化財に追加指定することが文部科学大臣に答申されました。今後、官報告示を経て正式に指定されます。
なお、主屋は1974年5月に指定されており、今回の指定をもって敷地全体が国指定重要文化財となります。竣工から100年、主屋の重要文化財指定から50年となる節目の年に、ヨドコウ迎賓館の敷地環境に新たな文化的価値が認められることとなります。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68872/8/68872-8-3b0eb0fd7ef5b9f58e9556cc150dd64b-3600x2400.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ヨドコウ迎賓館 外観(画像右下が東側敷地)
■概要
ヨドコウ迎賓館の東側敷地(非公開)には、主屋と同じ大谷石で装飾された階段や擁壁、半地下の鉄筋コンクリート造の建物が現存しており、これらは文化財の指定から外れたまま取り残された状態となっていました。当社は、これらの遺構の保存の在り方について兵庫県や芦屋市、有識者の方々と協議を行うとともに、主屋を取り巻く敷地全体の価値を評価いただくことを目的として、神戸大学名誉教授 足立裕司氏に周辺環境の調査を依頼しました。

現地調査は2023年1月から9月にかけて実施され、敷地の測量や遺構の実測の他、芦屋市教育委員会の協力の下、東側敷地の試掘が行われました。この試掘調査により、前面道路の拡幅や建物の建設により既に消失したと考えられていた「温室跡」や大谷石が敷き詰められた「渡り廊下跡」、また「滝の跡」や「池の跡」など新たな遺構が出土し、竣工に際して雑誌に投稿された図面や当時撮影されたと思われる写真で確認された東側敷地の姿が実際に垣間見えるようになりました。

これにより、東側敷地の付属建物や施設が主屋と一体として設計され、このエリアが庭園としての機能を有していたと考えられることが判明し、ライトの建築理念である「自然環境と調和した有機的建築」として当館を評価する上で、主屋だけでなく敷地環境すべてを包含して理解することの重要性が確認され、今回の答申に至りました。

今後当社は、行政や有識者の方々と連携し、出土した遺構の詳細調査および敷地全体の保存や活用の在り方について検討を進めてまいります。

■神戸大学名誉教授 足立裕司氏のコメント
旧山邑家住宅にはまだ十分に判っていないことが多く残されている。今回の調査から、庭園の様子や駐車スペース、使用人の住宅については確定することができたが、住宅として最小限必要とされる上水道、下水処理、電気などの設備やライトの建築観を表し、この当時としては画期的であった屋上庭園については今後の調査が必要である。

現場を差配したライトの弟子である南信(みなみまこと)が残した解説には、ライトからの教訓として上善如水という老子の理念が取り上げられている。自然の雨水を利用し、敷地下の滝や池へと流れる雨水処理の一端が明らかとなってきたことから、まさに上善如水の建築としての評価にふさわしい作品であることが判ってきた。それは弟子を通じたライトの観念ではあるが、逆に忠実な弟子であるからこそライトのめざした建築観を大事に守ってきたと思われる。ライトの思想を受け継いだ弟子たちが、ある意味では日本の伝統的な建築観との共通性として受容し、理解を深めていたように思われる。

有機的建築、環境共生の建築の先駆者などと評されるライトの建築であるが、旧山邑家住宅はその評価にふさわしい作品といえる。旧山邑家住宅は世界的に見ても現在へとつながる先駆的な課題に取り組んでいたことが明らかとなってきた。今後は旧山邑家住宅が有していた当初の全体像、つまり今回指定された敷地全体と建物の調和を少しでも取り戻していく努力が求められる。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68872/8/68872-8-4b227dc6d5cd79c1a90ed9e6ec1b3d6b-3500x2500.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]東側敷地に現存する遺構(階段・擁壁・半地下の建物)[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68872/8/68872-8-dbac73a76e76ade179526588dd81e218-3500x2500.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]大谷石が敷き詰められた渡り廊下跡
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68872/8/68872-8-e4ae5cab7de1f219807c12793aae0168-3500x2500.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]滝の跡
■フランク・ロイド・ライトについて
フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright, 1867-1959)は、アメリカ・ウィスコンシン州生まれの建築家で、ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエと共に20世紀を代表する近代建築の三大巨匠と呼ばれています。
ライトが建築家として名を馳せた20世紀初頭は、機能性と合理性を求める“モダニズム”が建築界の潮流でしたが、ライトは“周囲の自然環境と融和し、豊かな人間性を保証する建築”こそが理想であると考え「有機的建築(Organic Architecture)」を提唱しました。数多く手がけた建築作品の中でも「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」などは代表作として特に有名です。
ライトの母国アメリカ以外での作品は計画案を含めても30数件と少なく、その約1/3が日本でのものです。日本では、旧帝国ホテルの設計者として名が知られており、ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)はライトが帝国ホテル建築のために来日していた1918年に設計されました。

■ヨドコウ迎賓館について
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/68872/8/68872-8-983ba41431798945dc88c004123d1938-3600x2400.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ヨドコウ迎賓館 応接室
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)は、銘酒「櫻正宗」で知られる灘の酒造家・八代目山邑太左衛門の別邸として、フランク・ロイド・ライトが基本設計を行い、1924年に竣工した建物です。日本に現存するライト建築4件のうち、現在まで建築当初の姿を留めている住宅は当館のみとなっています。
当社淀川製鋼所は1947年に当館を取得し、社長邸や接客・接待の場として利用しました。1970年前後には老朽化による維持管理の難しさから取り壊しも検討しましたが、建築としての高い価値に鑑み、1972年に当館の保存を決定しました。1974年に主屋が国の重要文化財に指定されると、保存修理のための調査を経て1985年から1988年に保存修理工事を実施、1989年6月に「ヨドコウ迎賓館」として一般公開を開始しました。

●ヨドコウ迎賓館 Webサイト https://www.yodoko-geihinkan.jp/

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