「3つの要素があるかで天と地」稼ぎに稼いで幸福になるワガママ✕自ら不幸招くワガママ…振る舞いは正反対

2024年5月24日(金)6時15分 プレジデント社

富田英太 Hidehiro Tomita アチーブメントストラテジー代表。店舗売り上げ改善・黒字化経営のスペシャリストとして活動。著書に『社長はぜんぶ好き嫌いで決めなさい』(あさ出版)など。

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■「自己中」なのではなく勇気を持って叫んでいる


一般に「わがまま」というと、いわゆる「自己中」などといった、ネガティブなイメージが強いかもしれません。しかし、ビジネスシーンではそういった「わがまま」な部分がないと、ほかと差別化することができません。そのことを理解している経営者が「わがまま」を上手に自社アピールに生かしている、そんな印象を持っています。


富田英太Hidehiro Tomita アチーブメントストラテジー代表。店舗売り上げ改善・黒字化経営のスペシャリストとして活動。著書に『社長はぜんぶ好き嫌いで決めなさい』(あさ出版)など。

事実、私がコンサルタントとしてお付き合いしてきた経営者の中でも、大きな成果を出す人は、大抵「わがままな人」でした。


ただし、生来の「わがまま」と、ビジネス上で「わがままであること」は異なります。私のクライアントの「わがままビジネスパーソン」も、話してみると穏やかで人当たりのいい方ばかり。世間でイメージされるような唯我独尊・傍若無人タイプはいません。


では、どんなところが「わがまま」なのか。それは周囲に迎合せず、闇雲に時流に乗らず、自分の理想を貫くところ。「その事業は絶対失敗する」「そんな製品は誰も買わない」など、周囲が投げかける一般論や助言に対して、彼らはまさに馬耳東風。突飛なアイデアや言動は、時に「常識外れ」「頑固」などと評されることもあります。彼らは性格がわがままなのではなく、手段や戦略として「わがままに振る舞っている」のです。


高度経済成長期とは違い、現代社会はあらゆるモノやサービスがあふれています。その中で埋もれないためには、「突出した何か」が必要です。特にマス媒体に広告を持てない中小企業やベンチャー企業にとっては、顧客やファンの共感こそが命綱。「この会社が語るストーリーに共感するから商品を買う」「創業者の心意気に共感するから出資する」など、経営者の姿勢自体が広告塔になるからです。


SNS界隈では「ファン」と「アンチ」の数は比例します。「人に嫌われたくない」「敵をつくりたくない」と思うのなら、何もしなければいい。ただし、注目を集めることも味方をつくることもできないでしょう。「わがまま」な経営者は、勇気をもって「自分の思いを叫ぶ」ことで、多少の罵声や批判の声を受けながらも、共感を呼び、ファンを惹きつけているのです。


一例を挙げましょう。京都にMIYACOという会社があるのですが、中馬一登社長が掲げる哲学は、「ええやつの我がままは世界を救う(気がする)」というもの。その言葉通り、多種多様な志を持つ若者たちが中馬社長のもとに集い、食品・健康事業やアート・デザイン事業、教育・能力開発事業や地方創生事業など幅広く展開しています。


中馬社長は、「自分のしたいことをやっているうちに、多くのわがまま者が集まり、他人のわがままを支援することが自身のわがままを貫くために必要ということに気づいた」と語っています。「わがまま」な経営者は、他者のわがままをも懐深く受け止められる度量がなくてはできないのです。


こうしたリーダーの姿、企業の形は、日本企業の未来の可能性を示しているのではないでしょうか。従来のようなトップダウン型、ピラミッド型の会社ではなく、行動力のある同志が集い、それぞれの信念をビジネスの形に具現化していく、「自律分散型」の組織です。現代のような変化のスピードが速い社会では、こうした組織が成果を出していくと私は考えています。


■結果を自分で引き受ける「自責」が成功を生む


コンサルタントとして多くの経営者と向き合い、「成功する人」と「しない人」の両方を見てきました。その違いとして感じるのは、「自責の覚悟」ではないかと考えています。


企業経営者の中には、「コンサルタント」=「正解を教えてくれる先生」と勘違いしている人がいます。彼らは「これはどちらを選ぶべきですか」「私はどうしたらいいでしょう」と、選択と決断を丸投げしてきます。


しかし、コンサルタントは予言者でも教師でもありません。様々な選択肢は提示しますが、最終的に決断するのは経営者。それが理解できない人に限って「私は反対だったのに富田さんが言うから仕方なく従っただけ」と後から文句を言ってきます。


「先生に言われたから」「親に言われたから」「上司に言われたから」……これらは一見真面目なようで、実は「結果を引き受ける覚悟がない」ということ。決断も結果も人任せという未熟な人が、熱量高く目の前の課題に取り組み、従業員や顧客からの共感や支援を集められるのでしょうか。


一方「自責」の人は、「最後に決めるのは自分」ということを前提に動いています。いわば背水の陣ですから、失敗しても誰のせいにもできません。当然、仕事に対する必死さも違いますし、そうした熱意は必ず周囲にも伝わります。赤字続きで従業員の給料を払うだけで精一杯、岩にかじりつくように努力した結果、10年後に年商数億円規模の成果を達成した……というようなサクセスストーリーの裏には、「ビジネスわがまま」×「自責」の覚悟が隠れているのです。


昨今は「ゼブラ企業」と呼ばれる「企業利益」と「社会貢献」という、一見相反する2つを両立する企業モデルが注目されています。成長性や時価総額がマイルストーンとなるユニコーン企業とは異なり、社会貢献と利益の双方を目指す「ゼブラ企業」は、特に若い世代の共感を得ています。


「斜陽産業と化した地場産業を再び活性化させたい」「需要は少ないが、困っている人を助けるサービスをつくりたい」などの思いは、“常識”ある経験者たちの目には「無謀」「世間知らず」に映るでしょう。


しかし、「これをやりたい!」という欲望ほど強いものはありません。また自分でやりたいと言って始めた以上、「自責」にならざるをえない。こうした経営者は一度や二度失敗しても、再び立ち上がって前に進んでいくのです。


■「やりたくないことをやらない」もアリ


最近は副業や独立、フリーランスや起業家も増えています。そうした人々も周囲から「独立は危険だよ」「安定を手放すのか」と“助言”されるかもしれません。でも、その意見は本当に正しいのでしょうか。人生を終える瞬間、「あのとき周囲に反対されたから諦めたんだよな……」と後悔しても始まらないのです。


人生100年時代といわれ、70代でも働くことが常態化する時代、「わがまま」であることは、これまで以上に重要な要素になってきます。ずっと「上司のせい」「会社のせい」で他責に生きる人生は、悲しすぎませんか。


そうはいっても特別やりたいことなんてない、貫きたい「我」も理想もないよ、なんて声も聞こえてきそうです。そういう場合は「これだけはやりたくない」ことを探してみてはどうでしょう。「毎日の出社が耐えがたい」「環境に負荷をかけ続ける産業の一員でいるのが耐えがたい」など。高邁な理想を持つ人は少数派でも、「やりたくないこと」は誰にでもあるはずです。


かくいう私も、別に理想に燃えて独立したわけではなく、会社勤めに疑問を抱き、一度離れてみようと消極的に独立したのが人生を変える転機になりました。「やりたくないことはやらない」という決意も、案外大切な「わがまま」になりえるのです。


■「わがまま」×「自責」×「自己効力感」で幸福に


最後に、成功者に共通する要素として「自己効力感」を挙げておきましょう。「自分ならできる」という(根拠なき)自信を持つ力のことです。


もちろんビジネスの世界で挑戦する以上、本気で「根拠がゼロ」では困りますし、努力だって人一倍必要ですが、それでも自分ならできると心の奥底で信じる力は大切です。


ちなみにこれは他者との比較からは生まれません。偏差値や昇進年度の差、給与の違いなど数字による序列ではなく、自分の中で小さな目標と達成を繰り返すことでしか育まれません。「一週間でこの本を読み終える」「英単語を一日5個覚える」「通勤で地下鉄一駅分を歩く」、そんな小さな一歩からトライしてみてください。


戦略的「わがまま」×「自責」×「自己効力感」。この3つを手にした人間は、幸せな人生の切符を手にしたも同然だと私は信じています。


写真=iStock.com/LeoPatrizi
「自分の理想=わがまま」を貫く人は、周囲からも応援される。(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。


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富田 英太(とみた・ひでひろ)
アチーブメントストラテジー代表
東証一部上場コンサルティングファームのパートナーコンサルタントとして店舗経営のコンサルティングノウハウを修得し、店舗売り上げ改善・黒字化経営のスペシャリストとして活動。著書に『社長はぜんぶ好き嫌いで決めなさい』(あさ出版)など。
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(アチーブメントストラテジー代表 富田 英太 構成=三浦愛美)

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