Amazonプライムデー、異例「サービス推し」のワケ

2023年7月20日(木)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムの会員向け年次大型セール「プライムデー(Prime Day)」が7月12日深夜に終了した。同社によれば、2日間でプライム会員は世界中で3億7500万個以上の商品を購入し、アマゾンが提供した割引額は計25億ドル(約3500億円)に達した。


アマゾン史上最高もEC成長鈍化

 初日の7月11日は、一日の販売額としてアマゾン史上最高を記録。2日間を通して出品業者の販売額は過去最高を更新し、これまでで「最大のプライムデーになった」(アマゾン)。

 一方、米アドビが推計した2日間の米国内プライムデー売上高は約127億ドル(約1兆7600億円)で、前年比6.1%増にとどまった。伸び率はかつて数十%を記録していたが、最近は物価高などの影響で縮小傾向にある。

 米調査会社のインサイダー・インテリジェンスの主席アナリストである、アンドリュー・リプスマン氏は「アマゾンが得意とする商品カテゴリーで買い控えが起こっており、全体としてアマゾンの電子商取引(EC)事業は成長が鈍化している」と指摘する。


アマゾン、23年は物品からサービス

 ただ、ロイター通信によると、23年のプライムデーでは、多くの会員が料理宅配や旅行・宿泊、ヘルスケアなどサービスの割引商品に飛びついた。アマゾンや同社と提携する企業が、これらをプライムデーの目玉商品として売り込んだからだ。

 「サービスや体験の販売は、まだ収益に大きな影響を及ぼすとは言えないかもしれないが、アマゾンは今後状況が変化することを期待しているようだ」と米ハンティントン・ナショナル銀行のデイビッド・クリンク氏は述べている。「アマゾンは物品の流通という既存のビジネスから価値を引き出し、バリューチェーンを上位に押し上げようとしている」(同氏)

 米小売り最大手ウォルマートも同様の戦略を取っている。ウォルマートは自社のサブスクリプション(定額課金)サービス「Walmart+」の会員に、提携する米パラマウント・グローバルの動画配信サービス「Paramount+」を提供している。


料理宅配、旅行・宿泊、診療サービス

 ロイターによると、今回のプライムデーで目玉サービスとして販売・提供されたものには、料理宅配の米グラブハブ(Grubhub)、旅行予約サイトの米プライスライン・グループ、アマゾン傘下の米ワン・メディカル(One Medical)といった企業の会員プログラムや割引プランなどがある。

 アマゾンとグラブハブは22年から提携しているが、23年6月に提携を拡大した。現在は、プライム会員に対し、料理宅配会員プログラム「Grubhub+」のサブスクを1年間無料で提供している。

 今回初めてプライムデーに参加したプライスラインは、宿泊料金が最大6割引きになる「Hotel Express」をさらに2割引きして販売した。

 アマゾン傘下のワン・メディカルは、初期診療(プライマリーケア)を対面やオンラインで受けられるサービスを提供している。ロイターによれば、今回同社はプライムデーの終了日までにサインアップした顧客に対し1年間のサブスクサービス料を28%引きで提供した。


サービス強化は広告事業の強化につながる

 インサイダー・インテリジェンスのリプスマン氏によると、アマゾンは他社のサービスや会員プログラムの割引き販売に力を入れることで広告サービスを強化できる可能性があるという。これらサービス提供企業がアマゾンのサイトに広告を掲出し、その広告料を支払ってくれるからだ。

 23年1〜3月期におけるアマゾンの広告収入は95億900万ドル(約1兆3200億円)で、前年同期から21%増加した(アマゾンの決算資料)。

 ロイターによると、投資家らは、今回のプライムデーの実績が反映される23年7〜9月期におけるアマゾンの広告収入は112億ドル(約1兆5500億円)に達すると予測している。

  リプスマン氏は、「アマゾンがグラブハブやプライスラインとの提携を通じて得た販売データは、そのセクターの他の企業の広告精度を向上させるためにも役立つだろう」と述べている。

筆者:小久保 重信

JBpress

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