アップル版の生成AI「Apple GPT」、24年登場か?

2023年7月26日(水)16時0分 JBpress

 米ブルームバーグ通信はこのほど、米アップルが、米オープンAIや米グーグルなどと競合する生成AI(人工知能)技術の開発を進めていると報じた。一部のエンジニアが「Apple GPT」と呼ぶ、対話AIサービスをすでに作成したという。


アップルの大規模言語モデルとフレームワーク

 オープンAIの「Chat(チャット)GPT」や米グーグルの「Bard(バード)」といった生成AIでは、大規模言語モデル(LLM)がその技術の中核を成す。ブルームバーグによれば、アップルは自社のLLM開発に向け、「Ajax(エイジャックス)」と呼ぶ独自フレームワークを構築した。その基盤を用いてApple GPTを作ったという。ただ、同社はまだ、この技術を消費者に提供するための明確な戦略を打ち出していない。

 アップルは長年、自社製品にさまざまなAI機能を取り入れてきた。その一方で、生成AIの導入については慎重な姿勢を示している。ティム・クックCEO(最高経営責任者)は23年5月の決算説明会で、「(生成AIには)潜在的な可能性はあるが、解決すべき問題がいくつかある」と述べていた。同氏は、アップル製品にさらに多くのAIを取り入れていくとも述べたが、「非常に慎重な方法で」と付け加えた。また、米ABCテレビのニューストーク番組に出演したクック氏はChatGPTを使用していると明かしたものの、「注意深く見ている」と述べるにとどめた。


アップル、生成AI乗り遅れ懸念

 今後スマートフォンなど電子機器の操作方法が大きく変化する可能性があるといわれている。こうしたなか、アップルはその変化の機会を逃してしまうのではないかと懸念しているという。生成AIは人々のスマホやパソコンとのつながり方(インタフェース)を変革させる可能性を持つといわれている。年間3200億ドル(約44兆6700億円)の収益を上げるアップルのハードウエアが、AIの進歩についていくことができなければ、同社の主力事業は打撃を受けることになる。

 そこで、アップルはフレームワークAjaxを使いAIサービス基盤を開発した。関係者によると、アップルがAjaxを構築したのは2022年だった。その目的は社内での機械学習(マシンラーニング)開発を統一することだったという。

 アップルはこのシステムを基に、検索や音声アシスタント「Siri」、地図アプリ「Maps」などにAI関連の改良を加えている。Ajaxは現在、LLM開発に用いられているほか、対話AIツール(Apple GPT)の基盤になっている。

 Apple GPTは22年末に実験という位置付けで少数のエンジニアチームによって作成された。その社内運用は一時、セキュリティー上の懸念から中止されたが、その後より多くの従業員が使えるようになった。ただし、アクセスには特別な承認が必要で、厳しい制約もある。例えば、生成物は顧客向けの機能を開発するために使用することはできない。

 それでもアップルの従業員は、これを活用し製品プロトタイプなどを作成している。Apple GPTは、テキストの要約や質問に答えるなどして仕事を手助けしているという。

 ブルームバーグによると、アップルは今も生成AIサービスの消費者向けアプローチを検討中だ。現在AIやソフトウェアエンジニア、クラウドサービスエンジニアなどのチーム間で横断的な取り組みを進めている。まだ具体的な計画はないものの、関係者によれば、24年に重要なAI関連の発表を行うことを目指しているという。


アップルが今後注目される2つのAI分野

 アップルにおけるAI開発は、18年に入社したジョン・ジャナンドレア氏が指揮している。それ以前の同氏はグーグルに8年在籍し、AIや検索の責任者を務めていた。

 アップルは18年12月にジャナンドレア氏を機械学習&AI戦略担当シニアバイスプレジデントに任命し、役員チームに加えた。それ以降同氏は、クックCEO直属の部下としてチームを指揮してきた。

 ブルームバーグによると、アップルにおけるAI開発は現在、ジャナンドレア氏とソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏が統括している。

 アップルは18年以降、AIに関する目立った機能をそれほど多くリリースしてないが、今後少なくとも2つの分野で注目される可能性がある、とブルームバーグは報じている。

 1つは、現在開発中の新しい健康コーチングサービス「Quartz」(開発コード名)。これは、腕時計端末「Apple Watch」からのデータを基に個々の利用者に合った健康管理プランを作成するものだという。もう1つは、アップルが開発中とされる電気自動車(EV)だ。こちらはAIを活用した自動運転機能を提供する。

筆者:小久保 重信

JBpress

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