オープンAI幹部「AIは一部の仕事に取って代わる」

2023年6月22日(木)16時0分 JBpress

 「AI(人工知能)は一部の仕事に取って代わる可能性がある」と、対話AI「Chat(チャット)GPT」を手がける米オープンAIの幹部が語った。多くの人が恐れていることをついにAIトップ企業の幹部が口にしたと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

 語ったのは、オープンAIのブラッド・ライトキャップCOO(最高執行責任者)である。同社の技術は新しい仕事を生み出すこともあるが、同時に一部の仕事をなくす可能性もあると説明した。


アルトマンCEO「一部の仕事は完全に自動化」

 フランスのカンヌで開催されたイベントで、ライトキャップ氏は「どの大企業にも、収益認識の目的で契約書を審査・確認する大勢の人がいる。しかしそれは将来の仕事ではないかもしれない」と語った。

 AIがますます高度化するにつれて、オープンAIのようなイノベーター企業は、自社の技術が雇用や労働者に与える影響について、微妙なバランスを取ろうとしているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。つまり、AIによるマイナスとプラスの影響を慎重に検討し、社会に及ぼす悪影響を最小限に抑え、プラスの影響を最大化したいと考えているようだ。

 その一方で、オープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)も「AIによって、一部の仕事が完全に自動化される可能性がある」と述べるなど、一部社会に及ぼす影響について警鐘を鳴らしている。


「雇用も生み出す生成AI」

 2023年6月19日に開幕した「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」におけるウォール・ストリート・ジャーナルのイベントで、ライトキャップ氏は、「AIは将来的に一部の仕事を消す一方で、他の仕事を創出する可能性もある」と説明した。

 例えば、AIを使用してコンピューターコードの量を2倍にする企業は、他の業務にさらに多くの従業員が必要になるという。そうした企業は、プロダクトデザインを行うためにより多くの人を雇う必要があり、流通や業務、販売、マーケティングの部門でも、これまで以上に人員が求められるという。

 一方、既存の従業員は、単純な作業をAIに任せることで、例えばこれまで奪われていた1日あたり1時間を取り戻すことができるようになり生産性が向上すると、同氏は述べた。「このような生産性の爆発的な向上は、すでに現実世界で起きていると考えられる」(ライトキャップ氏)

 同氏はまた、AIモデルは仕事が素晴らしく得意であるが、我々が、どのようなタスクを実行するべきかを指示する必要があり、その成果を 我々がじっくり確認・検証する必要があるとも述べた。「人々は"指揮者"として、より多くの役割を果たすようになる」とライトキャップ氏は強調した。


主要国3億人の雇用に影響か

 ただ、急速に普及する生成AIを巡っては、世界の国内総生産(GDP)を増加させる効果があるものの、労働市場に「重大な混乱」をもたらすといった指摘もある。

 英フィナンシャル・タイムズが引用した、米金融大手ゴールドマン・サックスの調査によると、最近起こったAIのブレークスルーにより、米国とユーロ圏で行われる業務の4分の1が自動化される可能性がある。

 人間の成果物と見分けがつかないコンテンツを作成できるChatGPTなどの生成AIシステムは、生産性追求のブームを引き起こし、今後10年で世界の年間経済成長率を7%押し上げる効果があるという。

 しかし、このテクノロジーが人々の期待に応えることになれば、主要国全体で3億人に相当するフルタイム労働者の仕事が自動化されると、エコノミストらは指摘している。

筆者:小久保 重信

JBpress

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