もっと「バカ!」「アホ!」と口に出していい…メンタルがタフになる"ののしり言葉"の意外な効果
2024年10月24日(木)15時15分 プレジデント社
※本稿は、内藤誼人『考えすぎて動けない自分が、「すぐやる人」に変わる本』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Phawat Topaisan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Phawat Topaisan
■ののしり言葉を喚くことの意外な効果
「バカ」とか「アホ」といった言葉は、ののしり言葉と呼ばれています。
そういう言葉は下品ですので人前ではあまり使わないほうがいいのですが、実はののしり言葉には、「自分を強くする」という意外な効果もあるのです。
英国キール大学のリチャード・ステファンズは、ののしり言葉を口に出しながら、あるいは何も口に出さないで冷たい水の入ったバケツに手を突っ込ませ、できるだけ我慢をしてもらう、という実験をしてみました。
その結果、男性であれ、女性であれ、ののしり言葉を喚いていたほうが、簡単にギブアップすることもなく、長く我慢できることがわかったのです。
実際の結果も示しておきましょう。
ステファンズによると、実験に参加した71名中52名(73%)は、ののしり言葉を喚いたときのほうが、口を閉じているときよりも我慢できたそうです。
ちなみに、ステファンズはこの面白い研究で、イグノーベル賞をとっています。
退屈な仕事など、我慢や忍耐を求められる場合には、少々はしたなくはありますが、汚い言葉を口にするのも悪くありません。
出所=『考えすぎて動けない自分が、「すぐやる人」に変わる本』
「チクショウ、負けないぞ!」
「クソ、このまま引き下がれるか!」
こんな感じの言葉を口に出しながら取り組めば、頑張れるのではないでしょうか。
ただし、周囲に人がいるかどうかは、きちんと確認しておきましょう。人に聞かれると、悪い印象を与えてしまうかもしれませんから。
重い荷物を運ばなければならないときや、やりたくもないゴミ拾いのボランティアにムリヤリ参加させられたときなどは、作業に取りかかる前に、一言、二言、心の中で「チクショウ」などと叫んでから始めてみてください。
やりたくない作業でも、それなりには頑張れるようになるかもしれませんよ。
■「内向的か、外交的か」の判断基準
私たちは、自分に合ったことしかできませんし、やる気も出ません。
どんなにやる気を絞り出そうとしても出せないのであれば、自分には合わないことをやろうとしているのではないかということを疑ってみてください。
イスラエルにあるベングリオン大学のアヴィ・アソールは、570名の中学生に、内向性と外向性を測定する心理テストを受けてもらう一方で、「15人(あるいは1人)の知らない人の前で発表する」という状況で、どれくらいやる気を感じるかを調べてみました。
その結果、内向的な人は、「15人の前での発表」のときにやる気が出ず、逆に外向的な人は「1人しかいないときの発表」でやる気が出ないことがわかりました。
内向的な人は、一人で黙々と作業をするようなことが好きなタイプです。
引っ込み思案でもありますし、大声を出したりするのも苦手なので、大勢の人の前で発表しなければならないことは、苦痛でしかありません。そういう人にとっては「15人の前での発表」は気が滅入るのです。
逆に、外向的な人は、非常に社交的で、みんなとワイワイやるのが好きなタイプ。そういうタイプは、たくさんの人に見られると思えば、自然と興奮するのでやる気も高くなるのです。観衆が1人では、気分も盛り上がりません。
■悶々としながら耐えてもやる気にはつながらない
この研究からわかるように、自分の肌というか、性質に合わないことでは、やる気が出ないのは当たり前なのです。
もし、どうしても仕事のやる気が出ないというのであれば、その仕事の内容が自分と合っていないという可能性があります。
そういう境遇で悶々としながら生活するよりも、いっそのこと違う部署への異動願を出すか、あるいは転職をしたほうがいいかもしれません。自分に合わないことは、逆立ちをしてもやる気にはならないでしょうから。
私は、会社を設立したときに、会社の経理を自分でやろうと思ったことがありましたが、1年も持たずに税理士にお願いすることにしました。
私はもともといいかげんな性格なので、経理の作業のようなものはどうしてもやる気にならなかったのです。
写真=iStock.com/Wavebreakmedia
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自分に合わないことは、やろうとしてもどうせやる気にもならないでしょうから、他の人に代わりにやってもらうようにしたほうが得策かもしれません。
お互いに自分の得意なことだけをやり、苦手なことはお互いに交換することができるのなら、どちらにとってもウィン・ウィンになります。
なかなかそう簡単にはうまく交換できないかもしれませんが、だれか自分の代わりにやってくれそうな人を探したほうが、自分でやるよりもてっとり早いということはよくあります。
■元気やエネルギーを与えてくれる「パワーポーズ」
頭を後ろにそらして相手を見下ろそうとしたり、偉そうに腕を組んだり、足を大きく開いて座ったりする姿勢は、尊大でいばって見えますので、基本的にはやらないほうがいいとされています。
けれども、元気が出ないときにはあえてそういうポーズをとってみるのも悪くありません。
なぜなら、そういうポーズは、心理学には「パワーポーズ」と呼ばれていて、私たちにパワー、すなわち元気やエネルギーを与えてくれるポーズだからです。
ケンブリッジ大学のイ・ウンヘは、パワーポーズの効果を確認するため、重りの入った段ボールを持ち上げ、その重さを推測してもらうという実験をしたことがあります。
参加者が持ち上げるのは2回。1回目は普通に持ち上げてもらい、2回目はパワーポーズをとらせてから、あるいは弱々しいポーズをとらせてから、持ち上げてもらいました。
この実験でのパワーポーズは、イスのひじ掛けに腕を乗せ、片足の足首をもう片方の太ももに乗せるというポーズ。
弱々しいポーズのほうは、肩を落としてうなだれ、手を太ももに置いて、両足をぴったり閉じて座る、というものでした。
この姿勢を3分間とってもらったのです。
■「力が出ない」のは、悪い姿勢が原因の可能性
では、段ボールの重さの推測値はどうなったのでしょうか。
それぞれのグループの答えの平均を見てみましょう。
パワーポーズをとったグループでは、ポーズをとる前は3.17kg、ポーズをとった後は2.83kgとなりました。
一方、弱々しいポーズをとったグループでは、ポーズをとる前は3.30kg、ポーズをとった後は3.40kgとなりました。
パワーポーズをとった後には、「なんだ、こんなもの」と段ボールを軽いと感じたことがわかりますね。逆に、弱々しいポーズをとると、より重く感じてしまうようです。
出所=『考えすぎて動けない自分が、「すぐやる人」に変わる本』
あなたは、普段どんな姿勢をとっているでしょうか。
街中を歩いているときに、お店のウィンドウに自分の姿が映ったら、ちょっと確認してみましょう。
内藤誼人『考えすぎて動けない自分が、「すぐやる人」に変わる本』(明日香出版社)
猫背で、うなだれた姿勢になっていたりしませんか。だとしたら、自分でも気がつかないうちに元気が奪われる姿勢になっているということです。
私たちは、自分の姿勢というものをあまり意識していませんが、それはよくありません。
弱々しい姿勢をとっていると、心のほうも落ち込みやすく、ネガティブな方向に行きやすくなります。
「力が出ない」のは、悪い姿勢が原因かもしれません。
最近は、スマホの画面を見つめすぎて、いわゆる“スマホ首”に悩んでいる人も多いのではないかと思いますが、スマホ首の姿勢はまさしくうなだれた首の姿勢。そういう姿勢をとっていたら、元気が出ないのも当然です。
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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。
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(心理学者 内藤 誼人 イラストレーション=神林美生)