イタリア発、オリーブがつなぐ地方の再生。サラリーマンから転身した農園主が挑む「農家を経営者に、荒れ地を農園にする」おいしい取り組み。「農家の58.7%が70歳以上」という少子高齢化時代に生き残る戦略

2023年12月8日(金)13時30分 PR TIMES STORY

▲自社農園の現在の様子

株式会社地域をつなぐは、日本とイタリアで耕作放棄地解消に向けたオリーブ関連事業に取り組んでいます。創業から9年と若い日本企業ながら、イタリアのトスカーナでオリーブ農園を営み、日本人向け農業インターンシップを開催する、ちょっと珍しい企業です。日本では自治体等と連携してオリーブ栽培の普及に努めるほか、オリーブオイルの魅力を広めるための講演などを行っています。

2023年には、荒れ地から再生させた自社農園のオリーブ100%を使ったD2Cブランド「OliOlive」を立ち上げて、”海を越えた農家直送”を開始しました。

取締役社長の近藤佳裕は、もともと東京の広告代理店に勤め、農業やオリーブとは無縁だった元サラリーマン。それがなぜ海外でオリーブ農家になり、日本でのオリーブ普及に取り組むのか。このストーリーでは、自社の歩みとともに近藤のオリーブに込めた想いをお伝えします。

「人・文化・場所をつないで地域を活性化したい」株式会社地域をつなぐの社名に込めた想い

▲講習会の様子

2014年、地域をつなぐ創業者の近藤佳裕は東京の会社を辞め、大学時代を過ごした静岡県で創業します。会社員時代に携わったまちづくりの経験で「人・文化・場所をつなぐことで地域は好転する」と実感していたことから、社名は「地域をつなぐ」に。

フリーペーパーの発刊や商工会議所などでの研修講師、特産品開発、観光支援など「地域」に関わる幅広い業務を行っていましたが、現在は日本とイタリアでのオリーブ関連事業を軸に展開しています。

新たな特産品としてのオリーブ栽培を開始。イタリア・トスカーナで気づいたブランド化の落とし穴

2014年当時の静岡県下では、新たな特産品を生み出すことで人口流出を食い止めようと、オリーブ栽培が奨励されていました。静岡県産オリーブのブランド化を任された近藤は、成功事例や栽培手法を学ぶため、世界的な名産地トスカーナを訪れます。

▲トスカーナの景色

そこで彼は、「最高の田舎」と称されるほど美しいトスカーナの景色のなかに、年々、荒れたオリーブ園が増えていることに気が付きます。調べてみると、イタリアは特殊出生率1.25で世界ワースト14位。同15位の日本のように、少子高齢化による人手不足が起こっていました。

そもそも静岡県下でオリーブ栽培が推進された背景には、特産品となったオリーブがブランド化すれば新たな農業人口が生まれ、結果的に耕作放棄地が解消されるだろうとの思惑がありました。しかし、トスカーナで近藤が目にしたのは、地域をブランド化しても農業人口の減少や耕作放棄地の増加に歯止めがかからないという現実。

自分たちが日本で苗木を植えてオリーブ栽培を始めようというときに、名門トスカーナでは30年物の樹が耕作放棄されて枯れている・・・そんな状況を目の当たりにして、「このまま地域のブランド化だけを目指してもダメだ。」との結論に至ります。

そこで、トスカーナで成功しているオリーブ農家の共通点を探したところ、農作物を作るだけでなく自分たちで六次化まで取り組んでいることに気づき、「日本でも自立できるオリーブ農家を増やす」ことへ目的を変更します。

▲近藤(左から2番目)・大平(右から2番目)とオリーブ農家の仲間

同時に、トスカーナという地域が大好きになっていた近藤は「オリーブ栽培でトスカーナにも貢献したい」と思うように。そして、その気持ちを打ち明けたのが、当時の現地コーディネーターで現COOの大平美智子です。

「地形を変えて開墾するのではなく、荒れた土地や樹を再生させ、自然とオリーブが調和する地中海式の伝統的なオリーブ農業を継承したい。そして、日本にイタリア式農業のエッセンスを伝えたい。」

そんな近藤の想いを受け止めた大平の活躍で、トスカーナのチェルバイア地域で農業指導者を勤めたマルチェロが協力してくれることになります。彼のおかげで借り受ける農地も無事に決まり、名産地トスカーナに日本人農園主が運営するオリーブ農園がスタート。それは当時「日本国籍でのオリーブ農園主は見たことがない」と言われる珍しいチャレンジでした。

トスカーナでスタートしたオリーブ農園。荒れ果てた薮から復活までの地道な3年間

とはいえ、借り受けた当初の農園は荒れ果ててボスコ(藪)と化し、オリーブが取れるような状態ではありませんでした。ひたすら雑草を刈って樹を伐採し、ボスコを開墾する日々が3か月。

▲開墾の様子

オリーブはいったん放置すると「再生させるのに二倍の時間がかかる」と言われますが、伸び放題だった枝の樹形を整え、肥料を与え、害虫対策を施すだけの(まともに実が取れない)地道な日々が続きます。

オリーブオイルが「それなり」の品質に達したのは3年後です。収穫量はまだ少なく、農園が持つポテンシャルの3%程度しかありませんでしたが、ようやく復活の兆しが見えてきたのでした。

育てる・卸すだけでなく、ビジネスとして活動を広げる。

▲インターンシップの様子

農園の再生に取り組むなか、イタリア式農業を日本に広めるための活動もスタートさせます。自社農園をフィールドワークの場としたインターンシップです。

同じ農家でも、日本では育てた農作物を”卸す”までの一次産業がメインです。一方、イタリアで成功している農家は、農園の観光プランを販売したり、自社ブランドの加工品を製造・販売するなど積極的に六次化に取り組んでいます。農業経営を専門に学ぶ学校も多く、農家本人が農業をビジネスとしてとらえて活動の幅を広げていました。

人手不足は一緒でも、日本とイタリアの農家では活動の幅や収益が大きく違う・・・「農作業者」ではなく、イタリアのような「農業経営者」を日本にも増やしたい。そんな想いから、イタリアの有志に協力してもらって、自社農園をフィールドワークの場としたインターンシップを始めたのです。

▲視察団の皆さまと

イタリアにはグッチやフェンディ、フェラガモなど有名ブランドが多く、優れた職人の存在とともに、付加価値をつけてモノを売るということが上手です。「自分以外にも、その技や仕組みを学びたいという日本人農家はいるはずだ」そんな想いで始めたインターンシップは第4期まで続き、農業関係者の受け入れはもちろん、オリーブの産地化に関心のある地方議員の視察にもつながりました。

日本にオリーブ栽培を広めたいという想いが、東京ドーム14.4個分の実績に

イタリアでの経験をもとに、日本では地方自治体と連携してオリーブの栽培や六次化を進めたり、オリーブオイルの特徴や使い方を伝える講演など、オリーブに関連する様々な活動をしています。

▲講習会の様子

なかでも、力を入れているのがオリーブ栽培の振興です。良質なオリーブを実らせるための技術は高度ですが、日常の作業は草むしりなどの軽作業。さらに、他の果樹が30年以内に植え替えるところ、オリーブは1回植えて手入れをすれば日本では300年は樹が生きるとも言われ、少子高齢化の日本にぴったりの果樹です。

そんなオリーブ栽培の仲間を増やすために、静岡県を拠点として本州の栽培指導に飛び回り、気づけば東京ドーム14.4個分(約70ha)のオリーブ栽培に携わっていました。

▲純国産オリーブオイル品評会の様子

数多くのオリーブ農家と交流するうちに、実力を客観的に評価してもらう機会や、広く一般の方に存在を知ってもらう機会を設けたいと思うようになります。そこで、2022年、理事に就任している一般社団法人 静岡県オリーブ普及協会を通じて純国産オリーブ品評会を開催するなど、日本でオリーブを広めるため積極的に活動しています。

国際コンテストで金賞を受賞。国内外で高い評価を獲得するも、販売に苦戦。

▲収穫後、オリーブを搾油所へ運び込む様子

自社農園の生産量が順調に増えてきたころ、日本のレストランへの販売を見据えてコンテストに出品しました。すると、国際コンテストでは連続金賞を受賞、トスカーナのコンテストでも2位を受賞するなど国内外で高い評価を得ることができました。

いざ日本で営業する前は「金賞を取っているんだし、うまくいくだろう」と思っていましたが、現実は違っていました。取引が続かなかったり「味はいいが予算の都合で使えない」と断られることが続きます。

それでも試行錯誤しながら地道な活動を続けたところ、耕作放棄地を再生させる取り組みや、日本人がイタリアで農園運営していることへの激励も込めて、少しずつ採用してくださる方が出てきました。

コロナで赤字が広がり、2年後には農園閉鎖の危機に

コロナの規制が厳しくなったことで、日本では対面での営業活動が難しくなり、インターンシップは中止に。イタリアではロックダウンにより移動がままならなくなるなど、先が見通せない状況になってしまいます。

さらにイタリア国内では、ロシアのウクライナ侵攻での物価高騰や政策による人件費の値上げがあり、気づけば年間5百万円の赤字が積み上がっていました。

▲コロナ禍での収穫の様子

人手不足も深刻でした。帰国しなかった日本人を臨時作業者として雇用してやり繰りする状態が続き、2021年には「このままの状態が続けば2年以内に農園を閉鎖するしかない」というところまで追い詰められます。

品質の良いものをお客さまに味わってほしい。初めてのD2Cブランド立ち上げを決意

そんな折、レストランでオリーブオイルを口にしたというお客さまから「美味しくて衝撃を受けた。ぜひ購入したい」という問い合わせが相次ぎ、新たなチャレンジのきっかけになります。

「日本人にとってオリーブオイルは珍しくないはず。それなのに、このオリーブオイルを初めての味だと感じるのは、品質の良いものが少ないのではないか?だとしたら、日本人オリーブ農家として見過ごせない!」

そんな思いから、D2Cブランドを立ち上げることを決心したのです。

プロのマーケティング戦略を活用し、「海を越えた農家直送」スタート

▲OliOliveショッピングサイト

とはいっても、瓶やラベル、梱包材、ショッピングサイトの準備など、やることは山積みです。なによりオリーブオイルの魅力が伝えられなければ、数多くのオリーブオイルに埋もれてしまう・・・

「農家として思い入れが強くなりすぎた自分では、主観から抜け出せない。ここはプロに頼もう」と、マーケティングやラベルデザイン、商品写真の撮影などを外部の専門家へ依頼します。食品ロスを生まない受注生産方式や、シンプルな梱包、リサイクル素材の多い瓶の採用など、できる限り環境に配慮した工夫も取り入れました。

話し合いやモニターテストを重ね、オンラインサイトをオープンしたのが2023年8月。当初の予定から約半年遅れでしたが、一般のお客さまへ販売できる体制が整い、とうとう海を越えた農家直送が始まりました。

SDGsなオリーブオイル「OliOlive」を広め、これからも地域活性化のために。

(福井県での栽培指導の様子)

オリーブ栽培や農業経験ゼロだった元サラリーマンの近藤。この5年で、自身もオリーブ農家となり、イタリアでは自社農園の約12haを再生させることに成功。日本では東京ドーム14.4個分のオリーブ栽培の輪を広げてきました。

インターンシップは、第4期まで続いたのちコロナ禍で中断していましたが、2024年に再開の予定です。第5期は募集後すぐに満員となり、第6期の開催が決定するなど、ニーズの高さを改めて実感。今後も、イタリアのオリーブ農家のような農業経営者を日本に増やすための場として続けていきたいと考えています。

一般の方へは、オリーブオイルの特徴や耕作放棄地の現状を伝える活動をしています。2022年は7回の講演を行い、約300人の方にご参加いただきました。京都府の自治体が主催したセミナーのアンケートでは「分かりやすかった」「知らないことが多く勉強になった」との回答が多く、日本とイタリアの2か国でオリーブ栽培に携わっているからこそ伝えられる内容に好評をいただき、手ごたえを感じています。

2023年に立ち上げたD2Cブランドの「OliOlive」は、まだ世間に知られいませんが、「美味しく栄養たっぷりでSDGsなオリーブオイル」として広く知っていただけるよう取り組んでいきます。

弊社は、日伊でオリーブ栽培による耕作放棄地解消に取り組むオンリーワン企業として、農家としての経験やこれまでのノウハウを活かしながら、より一層地域の豊かなまちづくりに貢献していく所存です。

<関連情報>

■株式会社地域をつなぐ

私たちは場所をつなぐことで社会の発展に貢献し、文化をつなぐことで歴史や誇りを伝え、人をつなぐことで、喜びを得、そして地域をつなぐことで、企業として新たな価値の創造を目指します。

・会社ホームページ https://www.chiiki-tsunagu.com/business/internship/

■オリーブオイルの農家直送「OliOlive」

イタリア自社農園産オリーブ100%を使用。本場ならではのピリッとした苦み・辛みを日本人向けにマイルドに独自ブレンドしたオリーブオイル。イタリア伝統製法×JAPAN QUALITYが特徴で、一般的なオリーブオイルと比べて栄養たっぷり(約3倍)。

*1カ月に1本(12本/年)のご購入でオリーブ1本の樹の維持につながります。

・オンラインサイト https://www.oliolive.jp/


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