1年間の期間限定ショップ「SAGYOの仮店舗」が、2023年10月14日にオープン!「なぜ京都に店舗を?」に答えるトークイベント、開催レポート

2023年12月18日(月)8時30分 PR TIMES STORY

「風景をつくっていく野良着」をテーマに掲げる、作業着メーカーSAGYO。東京、岡山、京都という異なる拠点を持つ3名が集まって運営しています。そんなSAGYOが、2023年10月14日京都のアート複合施設「kumagusuku」に、1年間期間限定のショップを構開設しました。その名も「SAGYOの仮店舗」。

ショップオープンに先駆け、10月13日の夜に招待制のオープニングイベントが開催されました。イベントには、アパレル、飲食、建築、デザイン、造園師など、京都で活動を行うさまざまなプレイヤーが集合し、SAGYOの商品や店舗をいち早く体験。

今回のオープニングイベント全体のプランニングやコーディネートを担当した株式会社マガザンの代表・岩崎氏を司会に迎えた「公開トークイベント」を開催。SAGYOの成り立ちや理念、今後についてメンバー3人と台本なしで語り合った様子をお伝えします。探求しながら商売としてものづくりを継続すること、フリーランス同士で共同プロジェクトを起こすこと、この時代に小規模メーカーが場所を持つ意義…などなど、新しく店舗ができたというだけにとどまらない話題が飛び交いました。

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【秋の夜長にSAGYOが語る会ー独立系で和服の作業着を作る】

登壇者:SAGYOメンバー・伊藤洋志(ディレクター・文筆家・遊撃農家)、岩崎恵子(デザイナー)、長山武史(エンジニア)

司会:株式会社マガザン・岩崎達也

文:小倉ちあき

写真:井上みなみ

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培われた野良着の知恵を、現代にブラッシュアップしていく

岩崎達也(以下、マガザン岩崎):先程SAGYOの服を試着させていただきましたが、びっくり! 着心地の良さと動きやすさが兼ね備わっていますよね。

岩崎恵子(以下、SAGYO岩崎):ありがとうございます。私たちの衣服は、田畑で農作業をする時に着る仕事着である「野良着」がベースになっています。民俗資料を参考にしながら、現代にも使えそうな型をひとつひとつ、農作業現場で実証を重ねながら商品化しています。

伊藤洋志(以下、伊藤):参考にしている民俗資料の一つは、神奈川大学の民俗学の研究所が出版している『日本の仕事着』(日本常民文化研究所)という書籍なんですが、四十七都道府県の野良着を調べ尽くしているとてつもない本なんです。

SAGYO岩崎:服作りの順序としては、民俗資料を参考にしながら、農作業の動きを想像してデザインを起こします。それを伊藤さんが実際に農作業で着用して使用感を確かめ、襟やポケットの位置、細部の箇所へのフィードバックをもとに修正を施し、野良着のデメリット部分をなくしたり、メリット部分をそのまま生かしたりしながら、現代に趣向を変えていきます。販売後でも機能面に気づきが出れば、改良して再販します。2015年からずっとそのスタイルで作り続けています。

マガザン岩崎:なるほど。SAGYOはどういう経緯で始まったのでしょうか?

SAGYO岩崎:私は2012年まで、京都のアパレルメーカーで企画・生産管理を担当していました。退職後に、伊藤洋志さんの執筆した書籍『ナリワイをつくる』の出版イベントに参加したんですが、その時に伺った伊藤さんの働き方に感銘して、打ち上げで仲良くなったのがきっかけですね。

伊藤:そうそう、書籍出版に伴って色々と各地を転々としながら出版イベントをしていたんですよね。『ナリワイをつくる』では、複数の仕事で生計をたてることの面白さ素晴らしさを書いていました。そうすることは健康的な仕事をたくさん生むことでもあると。

長山武史(以下、長山):他にも伊藤さんは和歌山の空き家を改装して田舎の居場所をつくろうという企画もしていて。僕もそれに参加していたんです。

SAGYO岩崎:私も長山さんにも会って、3人で意気投合。2015年からSAGYOの活動が始まりました。3人とも本業を持ちながらの運営というスタイルです。

マガザン岩崎:伊藤さんの考え方に共鳴し合ったんですね。ちなみにそれぞれどんなふうに役割分担をされているのですか?

長山:僕はエンジニアなので、SAGYOの中では物流システムの構築を担当しています。それぞれ本業がある中、副業をどうすれば少人数で効率良く回せるか、システム化できるかを考えています。

SAGYO岩崎:私はSAGYOの運営代表で、衣類のデザイン、生産管理、オンラインストアの運営、雑用諸々を担当しています。

伊藤:私は、遊撃農家と称して変わった農家もやっていまして、収穫期だけ各地の農園に出向いて主に収穫作業とオンライン販売を担当しています。SAGYOの新製品は、基本的に僕が農作業時にフィールドテストをして、動作確認して全ての使用感をチェックしています。

もんペ、羽織、靴下の開発秘話

マガザン岩崎:フィールドワークからデザインに落とし込む作業からも、真摯な姿勢が伝わってきます。そうして作られた商品には、どんなものがあるんでしょうか?

伊藤:一番初期に作られたのが「作業もんぺ まくる」です。裾の部分がニットになっていて切り替えがあり、水場で長靴を履くような場面で、簡単に裾をまくれます。くるくると巻き上げる手間がなく、裾の上げ下ろしがしやすい。見た目も裾だけ色が変わったりもして面白いので個人的にも気に入っています。裾の上げ下ろしがしやすい工夫がなされています。

このように簡単に裾をまくることができます。自転車乗りにもおすすめ。

マガザン岩崎:僕の実家が農家なので、祖父が水田で苗を植える時に、裾をまくっていたのを思い出しました!

伊藤:ちなみにもんぺって、大正〜昭和に普及した服なんですが、2015年の立ち上げの時に型を作り、改良しながらずっと作り続けています。

SAGYO岩崎:「伊達羽織」は、小豆島の農家さんにヒアリングした時に、“農作業でお尻が汚れるから、軽トラに乗る時にカバーできるような羽織ものがあったらいいな”という話にヒントを得て生まれました。お尻まで隠れる羽織に、かつ、スマホやメモ帳などを全部ポケットに詰め込んで手ぶらで動けるよう仕様になっています。

”ハードな作業から打ち合わせや外出にスムーズに移行できる汚れ隠しの羽織でもあり、オフィスワークから屋外打ち合わせに移行できる埃避け羽織でもあります”(SAGYO公式サイトより)

マガザン岩崎:農家さんの声も直接生かされているんですね。あともうひとつ、知る人ぞ知る大ヒット商品「マグロ漁船の靴下」についても伺いたいです。

伊藤:この商品は、知り合いのアーティストがきっかけで生まれました。彼の実家が靴下工場を営んでいたこともあって、毎年冬になったら作品と一緒に靴下を販売していました。しかも通称「マグロの靴下」と言って売っていて、名前だけでもインパクト抜群。知り合い友人の周辺ではちょっとした人気アイテムでした。それが彼の実家の工場が生産していた靴下だったんです。

長山:実際に遠洋漁業の漁師さんが履くためのもので、それがめちゃめちゃ暖かくて。気に入って、みんなで仕入れて愛用していたんですよ。

マガザン岩崎:あれですよね、マグロの遠洋漁業ってえげつなく寒いから、その時に履くやつですよね。

伊藤:そうです。でもある時、もう「マグロの靴下」の製造をやめることになって……。ええ!あれなくなるの?ってなりまして、あまりにもったいないので、SAGYOでネーミングと一緒にその靴下の生産を引き継ぎたいと申し出たんです。

SAGYO岩崎:当時その工場が作っていた靴下は、足首から下が全部ウールで、足首から上はアクリルで作られていて、防寒性もありながら水捌けが良いのですが、ゴム長靴の下に履く仕様になっている分とてもゴツかったのです。SAGYOでリプロダクトする時に、日常でも履き心地のいいように糸をラムウールに変え、滑り止めをつけて履き心地をプラスしました。

マグロ漁船の靴下は全4色展開。

長山:印象的な配色は、そのまま。普通の冬物のソックスってどうしてもグレートーンでくすみがちな配色が多かったりするので、意外性もあるのか結構好評でとてもよく売れている商品です。

伊藤:底冷えする京都にこそうってつけ! 寒い地域の足が冷える方には特に必須の靴下です。90歳のおばあちゃんにプレゼントしたら、すごく喜んでくれたという声も聞きました。その方には分厚さに加えて滑り止めがついていることが響いたそうです。ちなみに、滑り止めは引き継いだ後のSAGYO版のオリジナルです。

SAGYOは、ファッションじゃない!SAGYOならではのこだわりとは。

マガザン岩崎:ちなみにSAGYOの服って、どういうジャンルにあたるんでしょうか。例えば洋服や和服など既存のファッションカテゴリーがあると思うんですが、意識されていることはありますか?

伊藤:うーん、ファッションではないことは確かです。どちらかというと道具に近いかも、もしかするとSAGYOは道具屋かもしれません。

イベントの様子。京都のさまざまな分野で活躍するクリエイターを中心に、約50名が集まりました。

伊藤:例えば今のアパレル業界だと、素材をハイテクにしていこうという路線があると思うんです。ゴアテックスとか。SAGYOは素材のハイテクを追うのではなく、経年変化も楽しめて耐久性のある素材を中心にして衣類の形を追求しています。人間の体の動きを支援するための服でありたいですね。

というのは野良着はもともと、着る人の体の寸法に合わせて1着1着作るものでした。山仕事や田畑での作業、畜産など家族の職業に合わせて、最適化していたんです。例えば重たいものを持つ仕事の方が着る野良着には肩に当て布がついているなど、必ず作業に適した機能が施されています。だから袴や羽織も、少しずつ細部が異なるんですよね。それが現場仕事への本当の最適化なんだと思います。

イベントには京都のミックスジュース専門店『CORNER MIX』が出店。新発売したばかりのカレーは、深い味わいと爽やかなスパイスの香りがたまりません!

マガザン岩崎:なるほど。SAGYOはファッションじゃないとおっしゃったことが印象的ですね。デザイン的な部分についてはいかがでしょうか?

SAGYO岩崎:動きやすさを重視しながらも、デザインを意識することは心がけています。

伊藤:さじ加減が重要ですね。洋服とは異なり、和装の場合は体に布を合わせていく感じなので、設計を間違えるとどうしてもシルエットが洋服よりも無格好になりがちなんです。例えば、作務衣。面白い可能性を持っている服でも、世の中全体の日常着の和装のデザインの蓄積は少ないから、デザインを一歩間違えば部屋着になってしまったりとかします。「立衿作務衣」は、そうならないように襟をつけて、シルエットを整えることで、なんなら打ち合わせなどでも着られるデザインにしています。

「立衿作務衣」、生地は毎ロットごとに変わるため同じものは基本生産されない。

長山:着ることによって気持ちよさを感じたり、これを着て仕事をしたいなと思える部分を大切にしています。「働くこと=ネガティブな作業」となりがちなところを、SAGYOの服を着ることで「さあ、やるぞ!」と晴れた気持ちで作業にとりかかれるような効果が得られるといいなと、メンバーで常々話しています。自分が着ていてモチベーションが上がる服でないと、仕事のクオリティにも影響してきますしね。

SAGYOディレクターの伊藤氏が遊撃的農家仕事で収穫しているみかんを来場者に振る舞いました。

SAGYO岩崎:岡山のある女性杜氏さんは、毎年2〜3着をリピートして買い続けてくださっています。一般的な店で買った服だとテンションが上がらないし、昔ならではの作業着だと若干動きにくい、ちょうどいい塩梅の野良着を見つけたと話してくださっています。農作業をされる方にも収穫やお祭り、販売に出かけるなどのハレの日に、SAGYOの服を着てくださる方も多いです。

伊藤:靴下以外の野良着は、卸売りはせずに直売か全国のパートナーさんによるポップアップ販売会で頒布しています。それは手に届く人に高額にならないようにという配慮で、初期から変わらない姿勢です。お店にとっても買取販売はリスクが高く、卸売にすると高単価にせざるを得ないので。その分、販売量を一気に増やすことはできません。日々、どこかで断捨離しているぐらいの世の中なのでそれぐらいがちょうどいいと思っています。

長山:欠品しない数を予測して、昨年の売れた数にちょっとだけプラスして生産するということを毎年続けています。これに関しては、ほとんど勘なんでデータを使ってない分、怖いのは怖いんですが、余るよりは売り切れてすいませんという方が僕たちらしいと思っています。

京都kumagusukuで、やりたいこと

マガザン岩崎:さまざまな野良着を、現代風にブラッシュアップしながら服作りをされていることがよくわかりました! さてここで本題といいますか、この度京都に「SAGYOの仮店舗」を出店する理由についてお聞きしたいです。これまではオンラインショップとポップアップのみでの販売でしたよね。なぜでしょう?

長山:スタッフを雇ったり、家賃が発生したりすると、固定費自体が重くなって販売ノルマが発生します。これは現状の売れ筋に引き寄せられるマイナス要因になりやすい。なので、立ち上げ当初からお店を出す予定はありませんでした。研究開発を重視して、固定費をかけず、当初は低空飛行でもなるべく長くSAGYOの事業を続けたいという理想がありました。

SAGYO岩崎:店舗に踏み切ったのはkumagusukuさんの存在ありきでしたね。元々ホステルだった客室がそれぞれ店舗に変わったアートモールで、スタッフなしでも気軽にお店が始められるというコンセプトに、すごく共感しました。ぜひやってみたいと思っていた矢先に店舗ブースが空いたタイミングで、1年間の「仮店舗」として入らせていただくことになりました。

SAGYO岩崎:kumagusukuの常駐スタッフさんが接客してくださるので、低コストでお店を持つことができました。下げ札にも一着一着のその服にまつわる説明が書いてありますので、それを読んでいただければ、何のための野良着なのかもわかると思います。

京都という共感され、受け入れられた土地でのスタート

マガザン岩崎:例えば都道府県でいうと、大阪や千葉など首都圏の近隣でも色々あったと思うのですが、京都を選んだことに理由はあったのでしょうか?

伊藤:実は一番最初の販売会を2015年の冬に京都の本屋の軒先でやったんですが、無名なわりには想像以上に売れたんですよね。ビックリするぐらい普通に受け入れてくれた感覚で。京都の人は、変わったものに慣れているのか、和服的なものに馴染みがあるのか、その両方か。そこまで抵抗もなくすんなり受け入れてくれる人が多いと思います。日常で着る仕事用の袴なんて今も当時もそこまでありません。

マガザン岩崎:京都在住者として、わかる気がします(笑)

長山:購入者データを見てみても、京都のお客さんが意外に多いんです。SAGYOがやろうとしてることや目指すことに、共感を持ってもらえる人が京都にすごく多いと感じています。

SAGYO岩崎:あとは、3人とも京都に住んでいた時期があるので親近感もあったかも。長山さんは今も住んでいますし、伊藤さんも大学時代に、私も大学から就職して10年ほど住んでいました。

伊藤:「SAGYOの仮店舗」では、SAGYOの服をオシャレだからではなく、作業着として選んでほしいという想いから、「トレーニングセンター」的な要素をつけたいと思っています。農作業で使われていた、鍬(くわ)や背負子(しょいこ)などの農具が置いていきたいと思います。実際に店舗でSAGYOの服を着て体を動かしながら、こんなふうに使うんだと実体験できるようにしたい。現代の私たちは、和服を着た時の体の使い方を学ぶ必要もあると僕は思っています。3、40年前ぐらいは夏だけ和服を着ている大学教授とかいたんですが、そういう人でも季節の初め頃は着崩れしやすかったらしく、体の動かし方の慣れは大事だと。

⾝体の使い⽅を0から⾒直すための実践「⾝体ゼロベース」を⾏うアーティスト安藤隆⼀郎⽒の作品『背負⼦(しょいこ)』を背負う様子。この他にも体の動きを確認できるツールを⽤意する予定。また、安藤⽒監修のもと、⾝体の操作を楽しく学べる、映像、⼩冊⼦などのツール開発を⾏う予定です。乞うご期待!

伊藤:私も学生時代からずっと、着物が日常着の選択肢のひとつ日常着になればいいと思っていたことが、SAGYOに繋がっています。これはそんな不思議なことではなくて、アジア圏の元気な国に行ったら民族衣装を現代的にしたものを着てる人はそこそこいます。ちなみに今、時代を遡りに遡って弥生時代に着られていたと言われる貫頭衣(かんとうい)も作っています。貫頭衣というのは縫い合わせて大きくした一枚の布の中央に穴をあけて頭を通して着る袖なしの服のことで、昔と違うのは左右で身幅フルサイズの巨大ポケット付きなところ。ゆとりがあるので体が動くと布がはためいて風が起きるので涼しいんです。それでいて、冬でもセーターなどを厚着した上から着ても使える。今あるようなファンの付いた機能特化型の作業服もいいですが、こういうシンプルな知恵を活かしたいんですよね。当時の多数の人の知恵から生まれた服を、現代にこそ使えるものに改良できないか?と常に問いかけて、これからも改良を続けていきたいです。

マガザン岩崎:10月14日からの「SAGYOの仮店舗」は、まさに風景のある野良着が実体験できる場所になりそうですね! 本日はありがとうございました。

『SAGYOの仮店舗』(2023年10月14日から2024年10月14日まで開設予定)

京都市中京区壬⽣⾺場町37-3 kumagusuku内

Facebook:https://www.facebook.com/hellosagyo

Instagram:https://www.instagram.com/hellosagyo/

オンラインショップ:https://shop.sagyo.jp/


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