銚子漁港の年間水揚げ過去50年間で最少…イワシとサバが不振、黒潮の北上で「南下しきれず」
2024年12月30日(月)9時2分 読売新聞
全国から漁船が集まる銚子漁港だが、今年の水揚げ量は過去50年で最少となりそうだ(22日、千葉県銚子市で)
一昨年まで12年連続で日本一を続けていた千葉県の銚子漁港で、今年の年間水揚げ量は過去50年間で最少となることが確実だ。25日現在の水揚げ量は14万1065トンで、この半世紀で最低だった1995年の18万4154トンを大きく下回っている。異常とも言われる黒潮(暖流)の北上と、それに伴う海水温の上昇が原因とみられる。(長原敏夫)
銚子漁港には全国から漁船が集結する。銚子市漁協によると、海難事故防止を目的にした新航路(いわゆる銚子漁港運河)が完成してから2年後の1973年、水揚げ量は初めて20万トンを超え、74年も19万5501トンを記録した。
その後も右肩上がりで、ピークの84年には81万9116トンに達した。以降は全国的に漁獲量が減少したこともあって水揚げ量も減ったが、90年代初頭は30万トン台、12年連続の日本一だった2011年から22年は21万トン台〜28万トン台で推移してきた。
今年は、水揚げの8割以上を占めてきたイワシとサバの不振が目立つ。サバの水揚げ量は25日現在で7542トン。年間水揚げ量が16万5105トンだった16年の20分の1以下、10万715トンだった21年の8%弱にすぎない。マイワシも11万5275トンで、昨年の8割弱にとどまる。
不漁の原因とされるのが黒潮の北上だ。黒潮は南方から日本列島沖を北上し、千葉県沖で東に進路を変えて列島から遠ざかるが、昨年春以降は直進して北上を続け、東北沖まで達している。このため、海水温も上昇。気象庁の観測では東北沖の海水面温度は今月20日を過ぎても18度に達し、平年よりも6〜4度も高い。
海水温の上昇で、イワシやサバが北の海にとどまり続けている可能性がある。イワシやサバは春に南の海で産卵し、その後北上して夏を北の海で過ごし、秋から冬にかけて再び南下するが、県水産総合研究センターの尾崎真澄資源研究室長は「10月頃から始まっていたサバの南下が、年々遅れてきている。(海水温が高すぎて)南下し切れず、千葉県沖に到達できない個体も出てきている」と話す。
初夏が旬の千葉県産のイワシは「入梅イワシ」と呼ばれるが、今年は早々に北上してしまい、漁期を逸している。
水揚げ量の低迷は、銚子市の工業出荷額の3分の1を占める水産物加工業にとっても大きな打撃だ。
全銚子市水産加工業協同組合によると、組合を構成する20社のうち半数は、地元の港に水揚げされた魚を冷凍処理して東南アジアや中東に輸出したり、養殖の餌用に出荷したりする冷凍加工業者だ。松岡良司組合長は「冷凍加工業者は、魚がないので仕事ができない。仕事量は数年前の半分以下に減っている。ここ数年で事業規模を縮小した会社もある」と話す。
気象庁海洋気象情報室は、「これだけ長期間、黒潮が東北地方にまで北上するのは、過去に観測されたことがない。来年以降も続くかどうかは予測できない」と話している。