「温泉の泉質」は法律で定められていた!単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉…泉質10種の特徴をざっくりご紹介

2024年2月10日(土)9時0分 婦人公論.jp


「泉質」は含まれている成分の種類と量によって決まるそうでーー(写真提供:Photo AC)

訪れた温泉は約500湯、女ひとりで温泉を巡りまくっているという永井千晴さん。旅行情報誌編集部で働いた経験を活かし、現在は「温泉オタク会社員」としてブログなどで温泉情報を発信しています。その「温泉オタク会社員」こと永井さんが温泉の楽しみ方を紹介する当連載。今回のテーマは「ざっくり把握したい泉質」です。

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泉質で選ばなくていいけど、ざっくり把握する


温泉は、含まれている成分の種類と量によって、「泉質」が決まります。法律によって定められているもので、何度か改訂もされてきました。2020年時点では、10種類の泉質があります。

泉質ももちろん見ますが、それよりも大事なのは、湯船に注がれている温泉の状態。

最も一般的な泉質は「単純泉」というのですが、それひとつとっても、個性的ですばらしい湯もあれば、塩素のにおいがして鮮度がよくなく、ちょっぴり残念な思いをする湯もあります。

だから、平たくいってしまえば、「泉質で温泉は選べない」のが、私の考え。

それよりもレビューやレポートに書いてある温泉の状態を踏まえて、行くかどうかを判断していくのが間違いないと思います。

とはいえ、泉質がまったく意味をなさないわけではありません。ざっくり特徴を把握するのも大切です。私の独断と偏見による見方も交えて解説していきます。

単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉


【単純泉】

成分含有量が一定に達していない温泉で、湯あたりしにくく、最もシンプルな浴感です。とはいえ、入浴剤を入れた自宅のお風呂より基本的には成分は濃いので、「効果が薄い」わけではありません。

無味無臭で透明、さらさらした浴感が多く、老若男女だれにでもおすすめできる温泉です。だからか、各地の“名湯”といわれる温泉も、この単純泉が多いのです。

◆泉質別適応症(浴用)
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態

◆主な温泉地
鬼怒川温泉(栃木)、越後湯沢温泉(新潟)、下呂温泉(岐阜)、箱根湯本温泉(神奈川)、道後温泉(愛媛)、湯布院温泉(大分)

【塩化物泉】

名前の通り、塩分の濃い温泉です。海の近くに湧いていることの多い温泉で、保温効果が高く、湯冷めせずぽっかぽか。無色透明なものもあれば、ほんのり茶色や緑色に濁っている場合も。

◆泉質別適応症(浴用)
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症

◆主な温泉地
定山渓温泉(北海道)、秋保温泉(宮城)、和倉温泉(石川)、熱海温泉(静岡)、城崎温泉(兵庫)、皆生温泉(鳥取)、指宿温泉(鹿児島)

【炭酸水素塩泉】

皮膚の角質や毛穴の汚れを取り、表面をなめらかにすることから、「美肌の湯」と呼ばれる泉質です。

その分、水分が蒸発して乾燥しやすくなるので、湯上がりの保湿をしっかり行ったほうがよい泉質でもあります。無色透明なものもあれば、白く淡い色がついたもの、茶褐色のものなど様々。

◆泉質別適応症(浴用)
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症

◆主な温泉地
東鳴子温泉(宮城)、龍神温泉(和歌山)、湯村温泉(兵庫)、嬉野温泉(佐賀)、妙見温泉(鹿児島)

硫酸塩泉、硫黄泉、酸性泉


【硫酸塩泉】

硫酸塩泉の中で、成分含有量によりさらに3種類に分かれるのですが、ざっくり「傷の湯」「脳卒中の湯」といわれ、きりきずや動脈硬化予防によいとされています。

また、うるおいや弾力を与える効果が期待されることから美肌の湯ともいわれます。個人的には、特有のダシっぽいにおいがとても好きです(芒硝泉のにおいといわれています。形容しがたいにおい……)。

◆泉質別適応症(浴用)
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症

◆主な温泉地
浅虫温泉(青森)、法師温泉(群馬)、山代温泉(石川)、玉造温泉(島根)

【硫黄泉】

成分含有量により「硫黄型」と「硫化水素型」に分かれます。よくたまごの腐ったようなにおいと評されるのは、硫黄そのものではなく硫化水素ガスのこと。

山に湧く温泉が多く、無色透明から乳白色、緑色までさまざま。あのにおいを嗅ぐと、「温泉に来た〜!」という感じがします。

◆泉質別適応症(浴用)
耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症

◆主な温泉地
登別温泉(北海道)、高湯温泉(福島)、万座温泉(群馬)、塩原温泉(栃木)、月岡温泉(新潟)、野沢温泉(長野)、白骨温泉(長野)、霧島温泉(鹿児島)

【酸性泉】

名前の通り、酸の強い温泉のこと。殺菌力が高く、皮膚疾患によいとされています。刺激が強いため、肌の弱い人はシャワーなどで洗い流したほうがよいでしょう。ぴりりとくる浴感は酸性泉ならでは。実際に酸っぱいにおいもします。

◆泉質別適応症(浴用)
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症

◆主な温泉地
酸ヶ湯温泉(青森)、玉川温泉(秋田)、蔵王温泉(山形)、岳温泉(福島)、草津温泉(群馬)、明礬温泉(大分)

二酸化炭素泉、含鉄泉、放射能泉


【二酸化炭素泉】

名前の通り、二酸化炭素を含む温泉です。入浴すると、アワがびっしり肌にまとわりつきます。温度が高いとアワがつきにくくなってしまうので、ぬる湯が多いです。

心臓に負担をかけず血のめぐりがよくなることから、「心臓の湯」と呼ばれています。

◆泉質別適応症(浴用)
きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症

◆主な温泉地
有馬温泉の銀泉(兵庫)、長湯温泉(大分)

【含鉄泉】

鉄分を含むため、においも鉄くさいです。空気に触れると酸化して茶褐色になります。

「婦人の湯」と呼ばれており、貧血や月経障害など、女性に関係の深い症状に効果が期待できるとされています。

◆泉質別適応症(飲用)
鉄欠乏性貧血

◆主な温泉地
長良川温泉(岐阜)、有馬温泉の金泉(兵庫)、塚原温泉(大分)

【放射能泉】

放射性物質「ラドン」を含む温泉です。放射能というとドキッとしますが、微量であれば免疫力向上が期待できるといわれています(ホルミシス効果)。

無色透明でほとんどにおいもないため、温泉そのものの個性を汲み取りにくい泉質ではあります。数日かけてじっくり浸かるのがよさそうです。


(写真提供:Photo AC)

◆泉質別適応症(浴用)
高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

◆主な温泉地
栃尾又温泉(新潟)、増富温泉(山梨)、三朝温泉(鳥取)

含よう素泉


【含よう素泉】

2014年の改訂で追加された、新しい泉質です。うがい薬などに使われている(例:ヨードチンキ)よう素を多く含んだ温泉で、薬のようなにおいがします。黄〜茶褐色の色をしています。

◆泉質別適応症(浴用)
なし

◆主な温泉地
大手町温泉(東京)

泉質は、温泉分析書に書かれています。びしっと「単純泉」「硫黄泉」と書かれている場合もありますが、

・ナトリウム・カルシウム—炭酸水素塩・塩化物泉
・酸性・含硫黄—カルシウム—塩化物泉

などと複雑なものも。

だいたいこうやってたくさん成分が書かれているのは、「めちゃくちゃ濃い」と思ってもらえたら大丈夫です。

いずれにせよ、自宅のお風呂よりはるかにさまざまな成分を含んでいるので、湯あたりに気をつけて、水分と休憩を忘れずに浸かるのがおすすめです。

※本稿は、『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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