モモコグミカンパニー、BiSH解散までの日々つづった『解散ノート』は“闘病記”「葛藤していた日々も宝物」

2024年2月10日(土)9時30分 マイナビニュース

●解散宣告を受け「貴重な日々」だと気づいた
多くのファンに愛されながら昨年6月29日をもって解散したガールズグループ・BiSH。彼女たちが「解散宣告」された日から東京ドームでのラストライブまでの3年半の日々をモモコグミカンパニーが赤裸々につづったエッセイ『解散ノート』が2月14日に発売される。解散をどのように受け入れ、ソロになる不安とどう向き合ってきたのか。苦悩も喜びもリアルタイムで書き留めてきたモモコグミカンパニーに、同書に込めた思いや解散後の変化など話を聞いた。
——『解散ノート』を読ませていただきましたが、本当に赤裸々に3年半の日々をつづられていて、当時の思いを知ることができました。
最初は本にしようと考えていなくて、自分で振り返りたい記憶だなと思って書き始めたんです。プロデューサーの渡辺(淳之介)さんから「解散という選択肢もあると思うけど、どう?」と言われた時は、BiSHとして5年ぐらい活動して人気も出てきた頃で、だんだん慣れてBiSHの音楽や自分の立場が当たり前のようになっていましたが、解散宣告を受けた瞬間から見え方がガラッと変わり、当たり前ではなくすごく貴重な日々なのだと気づき、これからの日々を残していこうと思ったのが始まりです。
——書いている途中で本として出したいという思いが芽生えたのでしょうか。
最後の1年ぐらいは、これは誰かの背中を押せる本になると思うから本にしようという気持ちで書いていましたが、最初の頃は自分がこの先、BiSHという大きいものが取り払われた時に、どういう不安を抱えたり、どういう葛藤をしたりするんだろうという興味もあって、赤裸々にリアルタイムで書き残していこうという思いでした。
——日記も書いているとおっしゃっていましたが、それともまた違うものとして書いていましたか?
『解散ノート』は“解散”というテーマがあったので、普通の日記とは違いますし、暴露本でもなく、自分の中では闘病記かなと思っています。エッセイも今まで2冊出しましたが、解散してから振り返って書くのでは遅いと思い、東京ドームまでの日々をリアルタイムで、その日のことをその日中に書くというのを徹底していました。
——「闘病記」という表現になるんですね。
病気を宣告された人はたぶん、残りの日々を愛おしいと思うんです。マイナスなことですけど、その日まで頑張って生きようというプラスの感情、生きるエネルギーが湧いてくる気がしていて、その感覚に似ているのかなと。解散はネガティブなことでもありますが、その日まで貴重な日々を生き抜こうという意思が芽生えたのも解散宣告を受けたからなので、闘病記という言葉がすごく近いなと感じています。
○BiSHにとって解散はブースターに「みんなの視線が一致した」
——『解散ノート』では、不安を吐露しながら前向きな気持ちに変わっていく変化を感じましたが、日々自身の思いを書きながら気持ちが変わっていったのでしょうか。
書きながらというか、生きながら変わっていったのかなと。解散を宣告されてから、自分単体と向き合うことになり、いろんな人に「自分には何もない」と相談したり、「夢だった小説に手を伸ばしてみよう」とか、そういう過程を経て一歩一歩進んでいった気がします。葛藤の日々があったからこそ、最後のほうはBiSHを真正面から楽しもうと思えたし、明るくなっていったのかなと思います。
——前向きに変わるきっかけになったことがありましたら教えてください。
解散を宣告された時に私は悲しいとも思いましたが、よかったとも思ったんです。女性グループで、いつまでもやっていきたいという子もいれば、私はこれがやりたいんだという子も解散がなかったら出てきていたと思うので。5年以上経ってメンバーが少しずつ別の方向を見始めた時に解散を突きつけられ、みんなの視線がBiSHの終わり“解散”に一致したのはすごく大きいことだと思っていて、BiSHにとって解散はブースターになったなと思います。
——解散が決まったことで、メンバーの皆さんの気持ちが一つになって最後に向かっていくことができたのですね。
そうですね。BiSHを愛してくれている人で、まだ解散を受け入れられていないという人もいると思いますが、『解散ノート』がそういう人たちの手助けになるのかなとも思っています。私なりの解散はこうだったというのを覗いてもらってどう感じるか、自分の気持ちを大切にしてほしいです。
——何か終わりに向かって進んでいる人たちが勇気をもらえる一冊になりそうです。
私は解散が決まってから当たり前だと思っていた日々が貴重な日々だと再認識することができましたが、誰でも次の日に自分の大切なものが目の前から消えるということはあると思うので、『解散ノート』を読んで、毎日ってすごく貴重なんだと感じてもらえるかもしれないし、将来に不安がある人の背中を押せるのではないかなと思っています。私は「自分には何があるんだろう」と模索してもがいている日々でしたが、最後は笑顔で東京ドームに立ってやり切ったと言えたので。プロデューサーの渡辺さんとの面談の様子も生々しく書いているので、一緒に面談を受けているような気持ちで読めると思いますし、少しでも人生に悩んでいる人たちの励みになればいいなと思います。
●解散と向き合って生きた中で見つけた希望
——BiSHの解散にしっかりと向き合って生きた中で、何か気づきや学びなどありましたらお聞かせください。
芸能界はもしかしたら汚いのかもしれないと思っていましたが、見てくれる人は見てくれるし、頑張ったら頑張った分だけ、結果が表に出て評価されなくても自分のためになっているというのがわかり、それはとても私にとって希望になりました。また、地に足つけて自分の人生を歩むってこういうことなんだなとわかってきて、自分の足で歩くってこんなに怖いことなんだということも知りました。
——自分の足で歩く怖さを感じつつ、その大切さを感じられたわけですね。
そうですね。つらくなって親に「解散決まっているけど、私はもうダメだから、最後までできない」って泣きながら電話したこともありますし、いつでも強くいられたわけではないですが、葛藤していた日々もすごく宝物だったと思うし、今、自分が1人でいられるのも、その時期があったからだなと感じています。『解散ノート』を読み返して、周りの方々からもらった言葉にハッとすることもあります。
——どんな言葉が刺さりましたか?
プロデューサーの渡辺さんから「血の通ったものに人は集まるんだよ」と言われたことは、今でも大事にしています。芸能界は、普通にカメラに映ればその場をやり過ごすことはできると思いますが、血の通ったものに人は集まって見てくれるんだなと思うようになりました。
○『解散ノート』が区切りに「BiSHについてガッツリ話すのは最後」
——BiSH解散から7カ月以上経ちましたが、解散後の変化もお聞かせください。
BiSH時代は地方公演など遠征が多くて、朝始発で行って日帰りという生活を送っていたので、朝早く起きなくていいというのは助かっています(笑)。以前は寝ることに執着していましたが、今は本を読んだり、誰かの話を聞きに行ったり、吸収する時間に使えるように。あと、挨拶などほかのメンバーに頼っていた部分がありましたが、今は頑張って自分で楽屋挨拶などしています。恥ずかしがっていちゃダメだろと、自分で自分のお尻を叩いて。
——吸収する時間に使えるようになったということですが、どんなことを吸収されていますか?
いろいろありますが正直まだ全然休めていなくて、6月29日に解散し、全力でペダルを漕いでマックスのギアで駆け抜けていたのがまだ止まっていなくて、余力で動いている感じなんです。だから、新たにこれをやりましたというのはまだあまり言えませんが、やりたいと思っていたことはけっこうできていて、『解散ノート』を出すこともそうですし、YouTubeを始めたいと言って作らせていただき、うれしいなと感じています。
——この『解散ノート』はご自身の中で一つの区切りになりそうですか?
BiSHについてガッツリ話すのは『解散ノート』で最後にしようと思っていて、区切りになると思っています。自分の中で本当に終わるというか、寂しいなという気持ちもあるし、読んでもらえるうれしさもあるし、複雑な感情になっています。
●自身の作品への願いとBiSHメンバーへの思い
——今後の活動はどのように思い描いていますか?
人を巻き込みたいと思ったら、どうにかして巻き込んで大きいことをやりたいと思いますし、執筆活動も続けていきたいと思っています。自分の作品にはもうちょっと頑張ってほしいなと、作家という肩書きからするとその願いもあって、『解散ノート』も私のことを知らない人でも手に取りたいと思うぐらい羽ばたいてくれたら本望だなと思います。
——文学賞を受賞したいという願望もあるのでしょうか。
賞は本当に意識していなくて、読んでくれた人から感想をもらうことが一番の幸せで、何かしらいい影響を与えたいという思いはすごい強くあります。あとは自分の中での納得感……これを出したんだっていう喜び。『解散ノート』に関しては、出せるだけでうれしいなと思っていますし、BiSHの曲は永遠に残っていくので『解散ノート』をきっかけにまたBiSHを聴き始めてくれたり、いい風を吹かせられたらいいなと思っています。
○BiSHメンバーは“戦友”「自分も頑張ろうという気持ちに」
——BiSHのメンバーの皆さんは今それぞれ活躍されていますが、そういった姿から刺激をもらうこともありますか?
そうですね。今隣に並んだらジャンルが違うなと思う人たちばかりですが、だからこそすごく心強いなと思っています。例えば、歌で不安になったらこの子に相談に乗ってもらおうとか、絵だったらこの子かなとか。そして、ずっと一緒に戦ってきた同志なので、みんなが頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろうという気持ちになれる存在で、メンバーにいいことが起これば心から喜ばしいなと思います。
——これからも戦友のような存在に?
本当に戦友です。友達でもなければ他人でもなくて、今一緒に戦っているのかと言われるとわかりませんが、過去に大きな敵を一緒に倒した仲間という感じがしています。
——最後にファンの方にメッセージをお願いします。
『解散ノート』を読むにあたって、身構えているファンの方もいると思いますが、あなたにとってのBiSHの解散もすごく貴重なものなので、私に全部賛成ですと言う必要もないし、私にとっての解散はこうですという感じで気軽に読んでいただければいいなと思います。そして、BiSHを知らない人でも、これを機会にBiSHを知ってくれて、音楽を聴いてくれたらうれしいです。
■モモコグミカンパニー
9月4日生まれ、東京都出身。ICU(国際基督教大学)卒業。2015年3月に結成され、高い人気を誇りながら2023年6月の東京ドームライブを最後に解散したガールズグループ・BiSHの初期からのメンバーとして活躍。メンバー最多の17曲を作詞。2022年に『御伽の国のみくる』で小説家デビューし、2023年7月に2冊目の小説『悪魔のコーラス』を発売。これまでにエッセイ2冊も上梓。2023年9月から音楽プロジェクト(momo)を始動するなど、幅広く活動している。

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