「Evernote」は終わるどころかAI機能が追加され進歩している件

2024年4月30日(火)12時22分 ITmedia NEWS

 Evernoteの日本法人解散というニュースが4月27日に流れました。以前のEvernoteからの変化を追っているものとしては、「特に不思議はない」という感じではあったのですが、それを知らない皆さんにとってはショッキングなニュースだったようで、中には「もうEvernote終わりですか」という印象を持たれた方もいたようです。
 この点については、すでにEvernote Japanから「ご安心ください」というアナウンスが出ています。とはいっても、「最近のEvernoteどうなの?」「大丈夫なの?」という印象を持ってしまう人がいるのも致し方がないといえばないかなとも思います。私は以前、Evernoteでアンバサダーをやっていたこともあり、実際に相談というか、問い合わせというようなものも受けました。
 今回の日本法人解散が、Evernote全体に何か影響があるとかというと「ほぼ何もない」ということでいいでしょう。というのも、Evernoteというサービスにおいて、いちばん大きな変化はとっくの昔に起きていたことであるからです。
 以前のEvernoteでは、日本は米国に続くユーザー数があったこともあり、かなり積極的に活動を行ってきました。しかし、現在のEvernoteはすでに伊Bending Spoons傘下のサービスであり、すでにその本部も欧州に移管されています。Evernote発祥の地である米国にも、すでにスタッフはいません。
 この流れは、一度本社にリソースを集中させ、サービスを強化していくということだと思います。その時点で日本にあった機能も縮小になっていたことはいうまでもありません。
●実はAIで進化していた
 Evernoteのサービスは、Web経由でもアプリ経由でも重くて使いにくい時期がありました。また価格の改定や無料プランの仕様変更もあり、それを従来からのユーザーが“改悪”と受け取った部分があったことも確かです。さらにいうと、こういったゴタゴタがなかったわけではないEvernoteですが、ではそこから何か他のサービスに移行しようとすると、割と選択肢がありません。
 もちろん、類似サービスはたくさんあります。「UpNote」「Onenote」「GoogleDoc」「Dropbox」でも、近いことはできるといえばできます。ただ、どうにも帯に短したすきに長しという感じであり、決定的な移行先はいまだに出てきていないといっていいと思います。ここに関しては、やっぱりEvernoteの基本設計って正しかったんだなと思うしかないわけです。中でもScanSnapとの接続による紙書類のデータ連携と自動処理は見事で、これがあるためにEvernoteを使い続けているユーザーもいます(私もそうです)。
 そういう時期がありながらも、主に有料ユーザーに向けてのサービスの見直しは粛々と続けられ、3月にはセキュリティリスク防止を目的としたレガシーアプリの廃止も実施されました。そして、約束されていたAI機能の強化は進んでいます。
 このEvernoteのAI機能については、あまり紹介されていませんので、ここで紹介しておきましょう。EvernoteのAI機能ですでに一部のユーザーで実装が始まっているのが、「AI検索」と「AI編集」です。
●AI検索
 正直、AI検索については“まだまだ”というところもあるのですが、これまでの検索では苦手だった期間を指定しての検索は楽になりました。もちろん、期間とキーワードを組み合わせての検索も可能です。
 その精度については、まだまだ改善してほしいところではありますが、PDF内部のテキストもすでに検索対象になっているのはすばらしいところです。
●AI編集
 AI検索と比較すると、より実務でも使えそうなのがAI編集です。そもそも生成AIの得意な領域ですから、当然といえば当然です。
 AI編集が利用可能なのは、ノートのテキスト。
 AI編集でできることは以下の内容です。
・要約(段落、拡張、箇条書き、ツイッター、メール)
・誤字を修正
・執筆支援(序論、結論、タイトル)
・翻訳
・トーンを変える(この機能はまだ利用できませんでした)
 実際に使ってみた画面は以下のようになります。実行させるとAIがテキストを自動的に編集して、コピーできるようになります。
 中でも、これはけっこう使えるなと思ったのが、Xの文章作成とメールの作成です。
 例えばXは、文字数、絵文字、ハッシュタグを付けてくれます。メールはメールのタイトル、書き出し、メールの締めも含めて作成してくれます。
 もちろん、実際に使う際には、これを修正する必要はありますが、修正する元となる文章を生成してくれるだけでも、これは仕事の負荷を軽減してくれます。そして、いちいち別途AIの画面を開かなくていいというのも、地味にうれしいところです。
 また、こういったAI機能の強化を考えると、より今のEvernote向きのユーザーというのが見えてきます。
・すでにEvernoteに作成された文書を数多く持っている
・社内などの組織に資料があり、そこからのアウトプットが頻繁にある
・企業のSNS担当やサポートとして、外部向けに内部の文書を変換することが多い
 また、現在の生成AIの発展の方向を考えれば、進化はマルチモーダルの方向に向かっていますので、メモサービスとしてマルチモーダルであるEvernoteが生成AIを取り込んでいるのは、実に真っ当な進化の方向だと考えることもできます。
 最後に繰り返しになりますが、今のEvernoteは以前のEvernoteとは違う会社です。しかし、一時期のゴタゴタ期を抜け出して、次の進化に向かっているところです。日本法人解散というニュースだけで判断するのではなく、実際にEvernoteを使ってみて、これからの進化を見ていくのもいいのではないでしょうか。少なくとも、私は自分の過去のEvernoteに貯めこんだデータがAIによる進化で今後どうなっていくのか楽しみにしています。

ITmedia NEWS

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