山下智久「嘘がつけない男」を演じることで、本音が言いやすくなった。個人事務所を立ち上げ、海外経験を経て得た〈自己主張〉

2024年2月20日(火)12時15分 婦人公論.jp


「海外での経験を通して身についたことのひとつに、《自己主張》があります。人に迷惑をかけないのが大前提ですが、相手に〈こうしたらいいのでは〉〈ここは間違っていると思う〉と意見を伝えることは、生きていくうえで重要なことだと改めて思うようになりました」(撮影:宅間國博)

端正な顔立ちとクールな演技でファンを魅了し続ける山下智久さん。3年前に独立して以来、海外への進出でも注目されている。新たな世界に飛び出した今、何を感じているのだろうか(撮影=宅間國博 構成=上田恵子)

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言うべきことを言える人間に


2020年に個人事務所を立ち上げました。それからの数年間は、広い海に出て懸命に船を漕ぎ進むような時間でしたね。コロナ下ということで大変なこともありましたが、サポートしてくれるスタッフ、そして応援してくださる皆さんのおかげで、なんとかこうして航海を続けられています。今は舵の取り方を模索しながら、新しい景色を見せていただいている、という感じです。

最近は海外の映画やドラマへの出演が増え、日本を離れて仕事をする機会も多くなってきました。もちろん日本が一番居心地がいいのですが、外から眺めることで、日本と海外、それぞれのいいところとそうでないところも見えてきます。

たとえば日本は、あらゆることがものすごく正確に進行していきますよね。これは素晴らしいことである半面、その厳密さが自分の首を絞める場合もある気がして、もうちょっと緩めてもいいのかなあと思ったり。

一方、日本に比べて何事も大らかな海外では、電車が時間通りに来ないなど、大らかすぎて生活に支障が出ることも(笑)。そういう経験をするたびに、すべては表裏一体、長所と短所は同じところにあるんだなあと感じるようになりました。

想定外のことに出会うと焦るけれど、世の中の大半は自分の思い通りにはいかないもの。大切なのは、起きたことをどう受け止め、いかに楽しむか。心にゆとりを持ち、心の調整をすることで、物事への対応力をつけていくしかないのだと学びました。

海外での経験を通して身についたことのひとつに、《自己主張》があります。人に迷惑をかけないのが大前提ですが、相手に「こうしたらいいのでは」「ここは間違っていると思う」と意見を伝えることは、生きていくうえで重要なことだと改めて思うようになりました。

黙ってスルーするのではなく、言うべきときに言うべきことを言う。言うだけならタダですし、伝わらなければ話し合えばいいんですから。「僕はこう思うんですけど、どうですか?」と本音でディスカッションするほうが、相手との関係も深まりますよね。

本音でつきあう大切さを実感


そんなふうに考えるようになったのは、ドラマの役柄の影響もあります。僕は2022年に、不動産取引の裏側を描いたドラマ『正直不動産』に出演しました。僕が演じた永瀬財地は、契約成立のためなら嘘もいとわない、不動産屋の敏腕営業マン。

ところがある日、祠と石碑を壊してしまったことで祟られ、《嘘がつけない体》になってしまいます。目の前の相手に本音しか言えないためにトラブルも起こるのですが、最終的にはそれが良い方向へ転がっていく。

最近は、デジタルの「おかげ」なのか「せい」なのかわかりませんが、コミュニケーションが取りやすくなる一方で、人と人との実質的な距離が離れていっている気がします。お客さんや仕事仲間と嘘抜きで向き合う永瀬のように、人との繋がりを強くするためには、面と向かって本音で意見を言い合うことが必要なんじゃないか。彼を演じて、そんなことを強く思うようになりました。

ドラマでは、永瀬が嘘をつこうとするとびゅーん! と強風が吹いてきて、どうしても本音を言わずにいられなくなる、という設定ですが、最近はプライベートでも友だちが、「ほら、言っていいよ!」と僕をあおいで風を送ってくるように(笑)。おかげで本音を言いやすくなりました。

不動産への意識も変わりましたね。細かい法律のルールがある分野ですが、騙そうと思えば簡単に相手を騙せてしまう。家というのは、人生でもっとも長い時間を過ごす場所です。知っているといないとでは大きな差が出てしまうので、自分だけでなく家族のためにも最低限の知識は身につけておくべきだなと思いました。

ちなみに、僕自身が住まいを選ぶ際に大事にしているのは「日当たり」です。日は当たれば当たるほど気分が上がるので。パーッと日が差す部屋で朝を迎えると、「よし、今日も頑張ろう!」と背中を押され、人生を楽しく過ごせる気がするんです。

今回、続篇となる『正直不動産2』で再び永瀬を演じています。俳優の仕事をしていくうえで続篇をやらせていただけるのは、本当に光栄なこと。今は発言ひとつにも気をつけないといけない時代で、生きづらさを感じている人も多いと思います。ぜひ嘘のつけない永瀬を見て、本音で生きる爽快さ、気持ち良さを感じていただければ嬉しいです。

ドラマは最初のシーズンのときからアドリブが多く、不動産屋に来るお客さんとの会話など、自分でセリフを作っているシーンも結構あります。当日の朝に監督から「ここで何かお願いします」と言われて、一か八かでやってみたり。ぜひ、そのあたりにも注目してみてください。

また前シーズンに続き、今回も山崎努さんとご一緒しています。努さんはドラマ『クロサギ』でお世話になって以来、僕が師匠として慕っている人。常に力をくださる、人生の大先輩です。こうして何度も共演できるのは決して当たり前ではないことを心に留めて、ワンシーンワンシーン、一言一言、味わいながら演じています。


「サウナに入っている間はデジタルから切り離されて、完全に一人の世界。ほんの30分ほどですが、心の整理整頓をする時間として大切にしています」

見ていない世界がまだまだたくさんある


プライベートでは、大のサウナ好き。実は今朝もすでに行ってきて、《整った》状態でこの取材に臨んでいます(笑)。サウナの後に水風呂に入ると免疫力が上がるそうですが、メンタル面も整いますし、実際に風邪を引きにくくなった気がするのです。

あともうひとつ、サウナに入っている間はデジタルから切り離されて、完全に一人の世界。ほんの30分ほどですが、心の整理整頓をする時間として大切にしています。

2024年は、演技はもちろん、音楽ともじっくり向き合っていきたいと思っているんです。音楽には、一瞬で観客と繋がれて同じ気持ちを共有できる、強いエネルギーがあります。せっかくやらせてもらえる環境があるのだから、そこを大事にして活動の場を広げていきたい。

僕がこうしていられるのはファンの皆さんのおかげですし、ライブはその反応をダイレクトに感じられる場です。会える機会をもっと持てるよう頑張りますので、楽しみに待っていてください。

僕は先に環境を作らないと動けないタイプなので、まずは音楽制作の環境を整えなくては。そしてSNSを含め、ちゃんとチームと相談して、更新の頻度を上げていくつもりです。

ここ数年で仕事の幅が広がり、いろいろなものを見た気になっていますが、見ていない世界がまだまだたくさんあります。「もっと先へ行くぞ」という気持ちを忘れずに、次のステージを目指して航海を続けていきたいです。

山下さん主演のドラマ『正直不動産2』はNHK総合&BSP4Kにて放送中(毎週火曜日22:00〜22:45、全10話)

婦人公論.jp

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