“多様性”はエンタメを飛躍・成長させるもの――日テレ初キャンペーン『Colorful Weekend』はどう立ち上がったのか

2024年2月21日(水)6時0分 マイナビニュース

●性的マイノリティ当事者の社員らが提案
日本テレビは、“多様性”に触れる週末キャンペーン『Colorful Weekend(カラフルウィークエンド)』を、23〜25日の3連休に初めて実施する。「一人ひとり違う私たちがお互いを知り、誰もが自分らしく生きられるヒントを届ける」というテーマに沿い、土曜の夜と日曜の昼に2つの特番を放送するほか、レギュラー放送の12番組が参加して関連企画を展開するものだ。
企画・提案者の1人である日本テレビ報道局プロデューサーの白川大介氏は、ゲイを公表した性的マイノリティの当事者。社長室サステナビリティ推進事務局を兼務し、多様な人材の活躍と共生というテーマのもと、多様性についての研修や、日本最大規模のLGBTQイベント「東京レインボープライド」へのブース出展などの活動を行っている。
今回のキャンペーンはどのように立ち上がり、週末の日テレをどのように彩ろうとしているのか。白川氏に話を聞いた——。
○“局としての積極的な取り組みを強みに
このキャンペーンが立ち上がったのは、トランスジェンダー女性であることを公表して『news zero』にコメンテーターとして出演もした谷生俊美氏(グローバルビジネス局スタジオセンタープロデューサー)と白川氏で、定期的に行っていた企画ブレストが発端。
「谷生さんも僕も、性的マイノリティであることをオープンにして、それが受け入れられて働けている点において、日テレはすごくいい会社だなという思いがあったんです。そこで、局として“多様性”に関して積極的に取り組んでいることを強みとして、世の中の人に知っていただくことができないかと考え、これまで日本テレビでやってきた『カラダWEEK』や『Good For the Planet グップラ』のようなシリーズとして、キャンペーンを発案しました」
そこから、白川氏や、当時『news every.』に出演していた小西美穂キャスター(現・関西学院大学総合政策学部特別客員教授)、報道局(当時)の長谷部真矢プロデューサーで立ち上げた、組織を超えた有志が参加する「ジェンダーチームプロジェクト」や、サステナビリティ推進事務局のメンバー、この問題に関心ある社員ら24人のメンバーが集まり、開局70年の企画募集に提案した。
○バラエティでは「配慮」のイメージも持たれがちだが…
キャンペーンの前提としてあるのは、“多様性”がエンタメを制約するものではなく、むしろ面白く飛躍・成長させるものであるということ。そこで、誰もが知っている名曲に秘められたメッセージをひも解いていく音楽番組『世界を変えた20人のアーティスト 〜曲に秘められたメッセージ〜』(24日19:00〜)と、70年の膨大な映像アーカイブを通して日本社会の変化を見つめていくドキュメンタリー『Colorfulライフラリー 〜人生ってみんな違ってスバラシイ〜』(25日15:00〜 ※関東ほか)という2つの特番を配置した。
「“多様性”という言葉を聞いたときに、堅いとかニュースで伝えなければいけないと思われがちで、バラエティ番組においては、ともすれば配慮しなければいけないことというイメージを持たれる方も多いと思うんです。しかし、谷生さんが早い段階から、“私たちはエンタメを作る会社だからエンタメを通して伝えよう”とチームの意識をまとめていきました。そこで、最終的には音楽番組という形でエンタテインメントを通して多様性に楽しく触れてもらう。さらに、人生ドキュメンタリーの蓄積を見ることによって、社会にいる多様な人について知ってもらうという2つの柱に収れんされていきました」
『世界を変えた20人のアーティスト』は黒柳徹子小泉孝太郎がMCを務め、岡本知高、Cocco後藤真希、s**t kingz、東方神起、美輪明宏が出演。特集するのは、MISIA、ビートルズ、BTS、GLAY、中森明菜、Official髭男dismといったアーティストたちだ。
黒柳は「私は音楽番組が大好き! 新しい音楽が聞けると思うだけで、今からわくわくしています。しかも小泉さんとも初めてご一緒できますし、とてもうれしいです」、小泉は「まさか徹子さんとこのような形でご一緒できる日が来るだなんて夢にも思っていませんでしたので、心から光栄です! 様々なアーティストの方ともお会いできますので、限られた時間の中で思い切り楽しみたいです」とコメントしている。
●すべての課題は網羅できない…継続展開へ意欲
フラッグシップとなる2つの特番に加え、『Oha!4 NEWS LIVE』『ZIP!』『DayDay.』『ヒルナンデス!』『news every.』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』『news zero』『ズームイン!!サタデー』『Going! Sports&News』『シューイチ』『サンデーPUSHスポーツ』『真相報道バンキシャ!』という12のレギュラー番組が参加する。それぞれの番組は、どのようにテーマを落とし込んでいったのか。
「提案するにあたって、プロジェクトメンバーでブレストを行い、“多様性”のキーワードを広く出していきました。そこで、『LGBTQ』『障がい』『エスニシティ(民族)』といったわりと想像しやすいものから、家族の形、女性が置かれている社会的なハンディキャップ、貧困、ルッキズム、ボディポジティブ、さらにはメガネや薄毛といったところまで出てきた上で整理して例として示し、参加番組の担当者から番組のテイストに合うテーマを選んだり新たに提案してもらいました」
各番組が選んだテーマは、「LGBTQ」や「障がい」といったイメージされやすいものに偏らず、「結果として幅広く彩りあるラインナップにつながったと思っています」と手応えを感じた。一方で、「絶対に忘れてはいけないのは、 無限にある“多様性”のすべての課題を網羅することはできないため、“私のことは取り上げられなかった”と思ってしまう方をゼロにはできないということ。だからこそ、今後の野望として、このキャンペーンを来年以降も続けることによってカバーする範囲を広げたり、また新しいテーマを発見したりしていければと思っています」と意欲を示した。
○“多様”ד統一”をどう成立させるか
テレビ局に限らず、各所で実施されるキャンペーンは、統一のテーマを設け、それに基づいた企画を組織的に展開していくものだが、“多様”と“統一”は相対する位置づけにある言葉だ。それだけに、今回のテーマ設定は一つのチャレンジとも言えるが、どのようにキャンペーンとして成立させようとしているのか。
「コアメッセージを、コピーライターの渡邊千佳さんと一緒に作ったのですが、それが『ちがうって、どきどきするね。』という言葉なんです。このキャンペーンを提案したときに、改めて“多様性のある社会”とは何かを我々も自問自答したのですが、それは、人間は一人ひとりが違うということと、その違った状態が尊重されることが当たり前だということなんだと。なので、この精神に基づいた様々な企画を各番組でやっていくというところに落ち着きました。そこを守って、12の番組と2つの特番の中で、彩りのある3日間になればと思っています」
日テレの従来のキャンペーンは『カラダWEEK』がオレンジ、『グップラ』が水色、さらに言えば『24時間テレビ』が黄色とイメージカラーを掲げてきたが、今回は色とりどりのタイルが重なって虹をイメージさせるビジュアルを、プロジェクトメンバーである布村順一デザイナーが制作。白川氏は「真ん中が透明になっているのがポイントだと思っていて、ここから何色にでも変われるということを示していると考えています」と解説している。
●白川大介1981年、大阪府生まれ。04年に日本テレビ放送網へ入社し、『ザ!鉄腕!DASH!!』『ZIP!』などの番組制作に携わる。17年に報道局へ異動し、社会部記者を経て、報道番組『news zero』でカルチャーを担当。21年には生配信番組『Update the world』を企画し、社会の価値観のアップデートを目指した。現在は報道局プロデューサーとして、『news zero』やカルチャー分野のニュース配信に関わりながら、社長室サステナビリティ推進事務局で多様な人材の活躍と共生に向けての活動を行っている。

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