【イマ旬!ハリレポ】アカデミー賞常連メリル・ストリープが持つ魅力を分析してみた

2018年3月3日(土)11時50分 シネマカフェ

メリル・ストリープ-(C)Getty Images

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今年で90回目を迎えるアカデミー賞。その間にメリル・ストリープは候補歴21回(今年分込)、受賞歴3回とほかに類を見ない功績を残しつづけている。映画界最高峰と言われるアカデミー賞の常連であるメリル・ストリープの魅力とはいったい何なのだろう? ロサンゼルス在住でメリルの大ファンでもある筆者が思い入れたっぷりに彼女の魅力を探ってみた。

【分析1】とにかく演技が上手い
今年も『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の名演で主演女優賞候補に挙がっている彼女だが、この筆者が最初にメリルを愛するようになったのは、時を遡る1978年。当方、まだ中学生だったのだが『クレイマー・クレイマー』という映画がきっかけだった。


ダスティン・ホフマン演じる仕事中毒の夫から、自立を求めて去っていく主婦を演じたメリルだったのだがセリフよりも表情とハートで演じている彼女に大きく心を揺さぶられたのを覚えている。

【分析2】穏やかなパワフルさ


そして『クレイマー・クレイマー』の数年後に見た『ソフィーの選択』(1982)でメリルは女優として絶対的な存在となった。第二次世界大戦前後を舞台にしたこの映画は、ナチス・ドイツの卑劣な将校たちによって自分の息子か娘のどちらかを強制収容所に差し出さなければ母子皆殺しという選択を迫られ、そのときに取った選択に一生苛まれる女性を演じた。ここでもメリルは表情と仕草で見ているものの胸を切り裂かんばかりの演技を披露し、アカデミー主演女優賞を獲得した。


メリルが持つ女優としてのもう一つの強みは、演じる役に合わせて巧みに変わる彼女のアクセントだ。字幕で鑑賞していると気がつかないが、どんなに上手い俳優でも方言や他国の訛りをやらせると、どうもおぼつかないという例がよくある。だがメリルはどんな訛りでも操る技を心得ており、アメリカ人である彼女がイギリスの首相マーガレット・サッチャーを演じてアカデミー賞を受賞したことでもその素晴らしさが証明されている。訛りを操るメリルの技は、ハリウッド業界内でも賞賛されている高度なスキルなのだ。

【分析3】美しすぎずに美しい


メリルはパーフェクトな美女ではないが「気さく美人」だと思う。見た相手を「美しい」と思う感情は十人十色だが、強いて美人をふたつのカテゴリーで分けるならば筆者的には「冷たい美人」と「気さくな美人」に分別できると思う。これは性格云々とはあくまでも無関係で見た目の印象ということだ。「冷たい美人」の例を挙げると二コール・キッドマンやシャーリーズ・セロンなど、超絶的な美しさのあまりに近寄りがたいという印象の美貌で、時にはICY QUEEN(=氷の女王)などと呼ばれてしまうタイプである。

「気さく美人」は、サンドラ・ブロックやエマ・ストーンといったタイプで、美人だけど近くにいてもリラックスできるかな? というタイプで、メリルもこのカテゴリーに入ると思う。


平凡な主婦役(『マディソン郡の橋』)から英国首相(『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)まで、何をやってもシックリくるルックスで、かつ美しい。これは幅広い役柄を演じられるという利点であり、これにメリルの抜群な演技力が加わるとアカデミー賞常連、という稀なステータスが手に入るのだ。


【分析4】ゴシップ誌の標的にされない私生活


その昔、メリルは『ディア・ハンター』という名作に出演し、そこで共演したジョン・カサールという俳優と恋に落ちたが間も無くジョンが肺がんにおかされ、メリルの献身的な看病も虚しく世を去ってしまうという悲劇が起きた。彼女がゴシップ誌を賑わせたのはそのときくらいではないか。最近でこそハリウッドのセクハラ問題や男女平等問題に言及したメリルの様子がニュースで報道されることがあるものの、アンジーとブラピのようなイメージとはかけ離れている。


彫刻家ドナルド・J・ガマー氏と今年で結婚40周年を迎えるメリルは、セレブには非常に稀な長い結婚生活を維持している。4人の子どもたちも常識ある大人に育っており長男はミュージシャン、3人の娘はそれぞれがエンタメ業界で活躍をしている。親の七光りを乱用せず行儀の良い子どもたちの存在もメリルが妙なスポットライトにさらされない理由だろう。


安定したファミリーライフは、メリルの体現する安定したオーラの賜物ではないか。彼女がハリウッド内外から尊敬の念を集める要素のひとつでもある。

【分析5】女王のレベルなのにおごり高ぶらない


数年前にメリルが『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でアカデミー主演女優賞を受賞した直後、受賞者お立ち台インタビューで、ラッキーにも質問する機会をもらった。3回目のアカデミー賞受賞にも関わらずキラキラとして心底嬉しそうで非常に飾り気のない女性という印象だった。おかげで聞き手のこちらの緊張がほぐれていくのを感じたのを覚えている。


メリルほどの功績をあげた女優がこれほどリラックスしたエネルギーを発散しているというのは天性のもので誰にでも備わっているものではない。ハリウッドは彼女の才能はもちろんこの特殊エネルギーに反応しているのではないか。ハリウッドで素晴らしい功績をあげ続けつつも"普通の人”エネルギーを発散している自然体メリルの美しさ。天才レベルの演技力とハリウッドに欠けがちなナチュラル好感度。この稀有な組み合わせがメリルの持つ魅力といえるのではないだろうか。(text,interview:Akemi K. Tosto)

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