愛希れいか、ドラマ&舞台で躍進続く 宝塚退団から6年、今も変わらぬ同期との絆

2025年3月5日(水)6時30分 クランクイン!

宝塚歌劇団退団後も『エリザベート』『マリー・キュリー』など舞台を中心に精力的な活躍を見せ、さらなる進化を続ける愛希れいか。大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』での熱演が大きな話題を集めるなど、近年は映像作品でも存在感を発揮している。そんな彼女がミュージカル『イリュージョニスト』で1年ぶりの舞台に挑む。コロナ禍に上演されたコンサートバージョンから4年、待望のフルバージョンでのお披露目への思い、そして宝塚で活躍を続ける同期への熱い思いなどを語ってもらった。

◆コロナ禍の5公演だけの上演を経て待望のフルバージョンお披露目



 2006年にエドワード・ノートン主演にて映画化された(2008年日本公開)、ピューリッツァー賞受賞作家スティーヴン・ミルハウザーによる短編小説『Eisenheim the Illusionist(幻影師、アイゼンハイム)』を原作とする本作。ミュージカル『タイタニック』『グランドホテル』で知られるトム・サザーランドの演出のもと、愛希のほか、海宝直人、成河、栗原英雄、濱田めぐみら実力派キャストが集結。ウィーンを舞台に、天才幻影師と公爵令嬢の禁断の愛、傾国の危機が迫るオーストリア皇太子の苦悩、嘘と真実に翻弄される人間模様を描く。

——コロナ禍の4年前は、コンサートバージョンとして5公演のみの上演となった本作。満を持してのフルバージョンでの公演となります。



愛希:前回コンサートバージョンとして一度皆様にお届けしておりますが、今回も初演のような気持ちで取り組ませていただいています。前回コンサートバージョンに持っていくまでにものすごくいろいろなことがあって、キャストもスタッフもこの作品に対して強い思いを感じていました。

上演後すぐ再演をというお話がありましたが、その時は5公演だけでもお届けできたこと、この作品のスタートを切れたということになによりも安心したといいますか、「よし、やるぞ!」と気持ちをまた持って行けるほどではなかったのが正直なところでした。皆さんお忙しい方ばかりなので再演は難しいだろうなとも思っていたので、4年という時が経ってしまいましたが皆さんがそろい、また精一杯頑張りたいなという気持ちでいます。

——前回コンサートバージョンで上演すると決まった時のお気持ちはいかがでしたか?



愛希:コロナでお稽古がストップしてしまい、毎日のようにオンラインで話し合っていたので、いつ聞いたのか正直憶えていないんです。できるのかどうか、どういう形で何公演やるのか、1日の中でも変わっていましたし…。前回フルバージョンのお稽古をしていた時の映像もあるのですが、これ私なの?と憶えていないくらいで、本当に作品に対して必死で、とにかく今やれることをやっていこうという気持ちでいたと思います。

——お稽古場の雰囲気はいかがですか?



愛希:今回の台本が来た時点で、かなり内容が練られている印象があったんですね。だけどお稽古をしていくと、もっとこうしたほうがいいんじゃないかということが出てきて。トムと一緒にキャスト同士が本当に細かいところまでずっと話し合いながらやっています。4年前もあんなに話し合ったのに、まだまだ演劇というのは深められるんだなと改めて感じています。

トムは私には思いつかないことをどんどんどんどん思いついて、本当にすごいです。私たちはトムの期待に応えて、彼の頭の中を表現しようと一生懸命頑張っている感じですが、彼は子どもみたいに無邪気なところがあって、思いついたアイデアを「やって」とリスクエストしてくるんです(笑)。私たちに絶大な信頼を置いてくれているのはありがたいなと思います。大変ですが(笑)。

でもこのカンパニーは皆さんプロフェッショナルで、1日1日、1回1回にちゃんと自分で達成感を持ってトムのリクエストに応えられちゃうんですよね。本当にすごいと思います。

◆ソフィという女性がどう映ったか、皆さんの感想を聞きたい


——演じられるソフィはどんな人物だと捉えられていますか?



愛希:トムはこの登場人物の中で一番強い人間だとおっしゃるんですが、私もその通りだと思います。純粋なんだけど純粋じゃなくて、賢くもあるんですけど、いろんなことを自覚してやっているというよりは、知らず知らず人を転がしたり、そういう素質を持っている人といいますか。彼女が一番のイリュージョニストなんじゃないかと思うくらい。

なによりも自分の感情を押し殺して生きるというのが当たり前の時代で、これだけ強い意志を持って生きている。かなり執着心が強い人だとも思いますし、すごくこの時代の女性というものを表しているとも思います。何を思っているか分からないミステリアスな女性ですね。

エリザベートもそうですが、この時代の女性の息苦しさというのは理解できるし、そのことを思うととても胸が苦しいなというのはあります。ソフィも政略結婚ですけども、宮廷にいて当たり前に恋愛をして誰かと結ばれるということがない時代。恋愛はあったんだろうけど、恋愛をして結ばれるということはない。この時代を調べると、この人たちはどれだけ自分の気持ちを押し殺してきたんだろうととても苦しくなるし、歌詞に自由という言葉が出てきますが、本当に自由になりたかったんだろうなと感じます。

——そんなソフィをどう演じたいと考えられていますか?



愛希:歌やセリフを通してソフィはどういう人物なのかお客様にダイレクトにお伝えできますが、セリフがないところでどうお伝えできるか大事にしたいと思っています。劇場にいらしてくださった皆様に私の姿がどういうふうに映って、それが観終わったときにどんなふうに変化しているのかすごく楽しみなんです。観終わった後に感想をDMやお手紙で教えてください(笑)。

——2023年の『大奥 Season2』や、今年の大河ドラマ『べらぼう』など映像作品にも積極的に取り組まれている印象があります。最近は『3000万』や『未恋〜かくれぼっちたち〜』など、現代に生きる女性を演じる愛希さんも拝見できて新鮮ですが、映像での経験は、舞台でのお芝居に活きているなと感じられますか?



愛希:出会うスタッフの方や共演者の方々が、舞台の方とはまた違う分野で活躍されてきた方だったりするので、お芝居に対する考え方や思いに新しく出会えるというのが一番刺激であり、学びですね。何が役に立っていたり、何か変わっていたりっていうのは自分では分からないんですけども、たまに、あぁこういうことが役に立っているのかなと思ったりもしますが、なによりも新しい出会いがあることが大きいかなと思います。

◆今も宝塚で輝く同期の姿は勇気をもらえる


——宝塚を退団されてもう6年も経ったんですね。



愛希:コロナ禍というのもあって、自分が思うようにできなかったこともありました。でもこうして映像作品も舞台もやらせてもらえているというのは、退団直後には考えられなかったことだったので、すごく刺激的です。この6年が長かったか短かったかというと、どちらにも捉えられる感じですね。

——この6年で大きく変わったなと感じられる部分はどこですか?



愛希:猫との暮らしが始まったことです。私は小さいころから宝塚に入りたくて、そのことしか考えていなくて、ただひたすら夢のことを考えて、夢の中で遊んでいるみたいな感じがありました。もちろんその中で挫折もありましたけど、好きなことをずっとやり続けている感じで、仕事のことしか考えていない人生を歩んできました。

でも30を超えたときに、やっぱり立ち止まることがあって。この仕事を続けるかっていうこともそうですし、いろいろ悩んだこともあったんですけど、猫ちゃんを迎えて、少しリフレッシュする時間ができました。ご飯って言われたらご飯をあげて、撫でてと言われたら撫でて、そうした生活の中で自然とリフレッシュできたので、猫の存在は大きかったなと思いますね。もしその子たちがいなかったら、一生『イリュージョニスト』のことを考えていたり、皇太子レオポルド役の成河さんに首を締められるシーンのお稽古をした後、首を絞められる夢を見るくらい、ずっと考えてしまうタイプなので(笑)、夢の中でも作品のことを考えていたりしたと思います。なので自分に戻ることができる猫たちの存在は大きいですね。

——古巣・宝塚では、同期の皆さんがトップスターになられ卒業を迎えられたり、一方月組で新人時代を共に過ごされた朝美絢さんが雪組でトップになられましたし、同じく95期の桜木みなとさんも宙組でトップに就任されます。



愛希:同期が今でもあの場所で輝いている姿を見るとものすごく勇気をもらえますし、懐かしい気持ちにもなります。先日朝美のプレお披露目を観たときも、本当に感慨深いというか…。もちろん彼女はトップになるだろうと思っていましたけど、実際にその姿を見ると、涙が出てきちゃうくらいうれしくて…。なによりもみんないい子たちなんで、頑張ってほしいと思うんですね(涙声)。それくらい共に頑張ってきた仲間がセンターで輝いているのを見ると、本当に涙が出てきちゃって。あぁ、ダメだ、泣いちゃう(こらえきれず涙が落ちる)。

礼真琴の『ANTHEM-アンセム-』も観まして、彼女は昔から天才だったんですけど、改めて天才だなと思って。こんなに天才なのにすごく努力をするし、周りに気を遣えるんですね。ここまで頑張ったなと思いましたし、彼女に見合った武道館という場所で輝いている姿に勇気をもらって、毎朝運転中に彼女の「souls」を聴いて、私も頑張ろうと思いながらお稽古に来ています。

——同期の皆さんも愛希さんの活躍に刺激を受けていると思います。今回の『イリュージョニスト』でも、新しい愛希さんを拝見できることを期待しています。



愛希:『イリュージョニスト』というタイトルだけあって、この作品自体にいろいろな仕掛けがあるので、一度観て結末を知ったらもう一度観たくなると思います。かなり緻密に作られていますし、私たちもそうお届けしようと思っていますので、ぜひ何度でも劇場に足を運んでいただきたいなと思います。

(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

 ミュージカル『イリュージョニスト』は、東京・日生劇場にて3月11日〜29日、大阪・梅田芸術劇場メインホールにて4月8日〜20日上演。

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