徳永えり、出産を経て女優復帰した思い 一度は引退を考えるも「楽しい」と心から感じて涙

2025年3月8日(土)12時45分 マイナビニュース


●冷静に子育て「母親役が生きたとしたら演じてきた甲斐があります(笑)」
NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17〜18)の女中・トキ役をはじめ、数々のドラマや映画で活躍している徳永えり。プライベートでは2019年に一般男性と結婚し、2023年に第1子を出産して母に。そして昨年2月に仕事を再開し、復帰作となる映画『35年目のラブレター』が3月7日に公開を迎えた。連ドラへの出演も決定しているという徳永にインタビューし、出産・子育ての話や今の仕事に対する思いなどを聞いた。
——ご出産おめでとうございます。初めての出産はいかがでしたか?
大変でした。ただ出産後珍事件があったので、我が子が生まれた時は感動に浸るというよりは冷静でした。
——子育てはいかがですか?
それも冷静で、何か起きてもあまり動揺することがなく、子供が泣いても怒ってもあまり食らわないというか。あなたはあなただねという感じが強いです。
——母親役をたくさん演じられてきたから、ドンと構えていられるのでしょうか。
母親役が生きたのか、だとしたら演じてきた甲斐があります(笑)。確かに両手で数えられる以上の人数を生んで育ててきたので。うちの子が熱性けいれんを起こしたときも冷静で、初めてのお母さんはパニックになる方が多いらしく、「2人目ですか?」と聞かれました。子供のことだけではなく、自分のことも仕事のことも、「なるようにしかならない」という思いがベースとしてあって、だから受け入れる心が強いのだと思います。
——その心の強さはどのようにして培われたのでしょうか。
30歳ぐらいになってから、いい意味で「どうでもいいや」と思えるようになって、すごく気が楽になったんです。芝居で「なるようになれ」と思えたから、自分のこともそう思えたのかなと。一番大きなきっかけは朝ドラ『わろてんか』で濱田岳さんと会ったことです。それまで私は台本通り進めていくタイプでしたが、濱田さんは真逆で遊びを入れてくる方なので、私が変わるしかないという感じで。
——濱田岳さんのおかげで“なるようになれ精神”に。
もともと“なるようになれ精神”だったけれど、この仕事を初めてからそれではいけないと思って変えていたのかもしれません。“なるようになれ”では技術が足りず、度胸もなく、安パイなところでやっていたのが、濱田岳イズムで解き放たれたのかなと(笑)
○両立の難しさを感じ「辞めざるを得ない」と考えるも復帰を決意
——2023年5月から産休に入られ、『35年目のラブレター』の撮影が昨年2〜3月とのことですが、母親になっても女優業を続けていくという気持ちがブレることはなかったですか?
辞めざるを得ないと思ったので、今こうやって取材を受けていることが不思議でならないです。もちろんお芝居するのは好きですが、不規則だったり、スケジュールが前日に決まったりという世界なので、夫や義理のお母さんなど手伝ってくれる人はいますが、真摯に取り組みたいのにその時間がない状態で現場にいるのがしんどいというか、失礼だなと感じ始めて、辞めた方がいいんじゃないかなと思いました。
——女優引退も考えたとのことですが、『35年目のラブレター』で復帰しようと決めた思いをお聞かせください。
『35年目のラブレター』のときは、子供が離乳食の全然前なので私が必要な時間が多く、もう少し落ち着いてから復帰しようと思っていましたが、あまりにも脚本が素晴らしくて「やりたい!」という思いが強くて。映画なので、すでに台本ができていましたし、スケジュールもある程度出ていたので、これだったらできるかなと思い参加させていただいたのですが、その時に「難しいかも」と感じたんです。現場はすごく楽しくて、皆さん優しくて「子供連れてきていいよ」とか配慮してくださったのもあり、なんとかやり遂げられたんですが、申し訳ない気持ちにもなって、会社に「辞めた方がいいんじゃないか」と相談しました。
——そのタイミングで引退を考えられたんですね。
でも社長が「もうちょっと落ち着いてからでもいいし、辞めることはないんじゃない?」と言ってくれて。そのときに「お疲れ様でした」と言われたらスパッと辞めようと思っていました。でもまだ希望を持ってくださっていて、もう20年ぐらいこの会社にいますし、応えたいという気持ちもあるので、トライ&エラーでやってみてご迷惑おかけしたらすみませんという形で復帰させていただくことにしました。
——連ドラ出演も決まっていると伺いました。
連ドラ出演を決めたときに腹をくくりました。借りられる手を全部借りてやっていくしかないなと。今日もお迎えは母にお願いしているんですけど、そうやって誰かの力を借りながらやった先に何があるのか、やってみないとわからないのでこれからです。
●夫との会話で気づけた女優業への思い「より頑張ろうという気持ちに」
——お子さんが生まれて、ご自身の内面的な部分の変化はいかがですか?
自分自身は特に変わったことはない気がします。「世界一大切なものができました」という声をよく聞きますが、そういう感覚もなくて。もちろん大事で、子供がしんどい思いをしたら代わってあげたいと思いますし、何か危ないことがあったら身を投げ出すと思いますが。「かわいい」と愛でる感じでもなく、1人の人間として面白いなという感覚です。
——1人の人間として対等に見ていらっしゃる感覚なのでしょうか。
そうですね。自分が育てていますという感覚ではなく、今はどうしたって自分ではできないことがあるから私がやっているだけというか。
——引退も考えたということですし、仕事に対する思いは変化がありましたか?
仕事をさせてもらえるありがたみをすごく感じるようになりました。夫や義理の母に見てもらっている時間だからこそ、仕事にかけるエネルギーをちゃんと出してお芝居したいという気持ちがより強くなり、今までもそうですが、より当たり前じゃないと感じていて、自分にできることをすべて出していくしかないという思いです。
——演じる楽しさも改めて感じましたか?
『35年目のラブレター』のときに、やっぱりお芝居は楽しいし難しいと感じました。また、ドラマの衣装合わせのときにも、皆さんで役を作り上げていくことが楽しいなと思い、夫に「やっぱり頑張りたい」と話したら、夫から本当に楽しいと思えているか問われて、そのときに「楽しい」と心から思えて涙が出てきたんです。母親感的にあまり変わってないとはいえ頭の中では母親だと思っているから、無意識に仕事を楽しんだらいけないと思っていた自分がいたことに気づき、夫から「楽しいと言えてよかったね」と言ってもらいました。
——その出来事がきっかけで仕事を楽しんでいいんだと吹っ切れたと。
そうなんです。だからこそ、より頑張ろうという気持ちになりました。
——仕事を楽しんでいいと思えるきっかけをくれた旦那さん、素敵ですね。
夫は仕事が大好きで、本当に楽しめているかというのを大事にする人間なんです。私も仕事が好きですけど、出産前は掛け持ちすることも多くて大変だなと思いがちで。でも夫と話し、原点に立ち返るというか、楽しいという気持ちが大事なんだと気づくことができました。
——これからも、ご夫婦としても女優業に関しても、「楽しい」というのが大事な軸に?
そうですね。生活を楽しんでいきたいという思いは常にあるので、その上でこの仕事であればなおうれしいなと思います。
○「お芝居を続けていけたら幸せな人生」 おばあちゃん役への憧れも
——今後の人生どうなっていったらいいなと思い描いていますか?
年を重ねても面白味が出るのがこの仕事なので、お芝居を続けていけたら幸せな人生だなと思いますが、子供を産んでから、仕事でこうしたいとイメージしにくくなりました。でも、不思議と不安はないです。ありのままでお芝居するしかなくて、それ以上のものは出せないと思っているので。いずれおばあちゃん役をやりたいという気持ちはあって、憧れている諸先輩もたくさんいるので、そういう風になれたらという思いはあります。
——どんな方に憧れているのでしょうか。
たくさんいらっしゃいますが、余貴美子さんや風吹ジュンさんはおばあちゃん役もできるし、ご本人はすごく凛としていてかっこいい生き方をされていて。私もありのまま生きて、それが表現に生きたらいいなと。そのために、自分の人生を豊かにしていこうという気持ちが強いです。今、都心から離れた山が近くにあるところに住んでいますが、感覚が研ぎ澄まされている感じもあって、そういう風に生活を豊かにして、それを芝居に還元し、皆さんに認めていただけて次につながって……おばあちゃんまで続けばいいなと漠然と思っています。
■徳永えり
1988年5月9日生まれ、大阪府出身。ドラマ『放課後。』(04)で女優デビュー。『放郷物語』(06)で映画初主演。近年の主な出演作に、映画『コンフィデンスマンJP -英雄編-』『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22)、『正欲』(23)、ドラマ『恋のツキ』(18)など。NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17〜18)ではヒロイン・てん付きの女中・トキを好演した。

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