大相撲大阪場所、地元の宇良に観客が爆声援!初日から「大荒れ」に。1横綱4大関のうち、勝ったのは新大関・琴ノ若とカド番の貴景勝だけ

2024年3月11日(月)13時30分 婦人公論.jp

2024年3月10日、大相撲大阪場所が大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)で始まりました。「荒れる春場所」の言葉通り、上位陣がバタバタと…。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。

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前回「照ノ富士が4場所ぶり9回目の復活優勝。本割で霧島に、優勝決定戦では琴ノ若に横綱相撲で圧勝。琴ノ若は大関昇進へ」はこちら

「荒れる春場所」


新大関・琴ノ若が誕生し、1横綱4大関2関脇2小結で初日を迎えた大相撲春場所。八角理事長(元横綱・北勝海)による初日恒例の協会挨拶は、その9人の力士が土俵に並び、豪華だった。

会場の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)は、満員の観客による声援と歓声があふれて、ファンのエネルギーがテレビを通じてビシビシと伝わってきた。

「荒れる春場所」と以前から言われているが、大関の霧島と豊昇龍が破れ、結びで勝って土俵を締めてくれると思っていた横綱・照ノ富士が負けてしまい、「大荒れの春場所」のスタートとなった。

4大関の中で、最初に登場したのは琴ノ若。父親である佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は審判長として土俵下に坐っている。初優勝をして、祖父・琴櫻と同じく横綱の道を歩んで欲しい。琴櫻と同じ不知火型だと思うが、大きな体での土俵入りは迫力があると思うので、将来見てみたい。

琴ノ若は、前頭2枚目・熱海富士を当たったとたんにはたき込んだ。人気力士同士の対戦なのに、勝負のために土俵にいた時間が短すぎて残念だった。

声援大爆発!


初日の正面解説は舞の海さんだったが、もし熱海富士の師匠である伊勢ケ濱親方(元横綱・旭富士)が解説をしていたら、つぶやき調のお叱りの言葉をあびせることだろう。私は伊勢ケ濱親方の放送席からの熱海富士への弟子愛を隠したお叱り言葉のファンなのだ。

次に登場した大関は、8回目のカド番の貴景勝。前から痛めている首の状態が悪いと言われている。貴景勝がはたき込みで、前頭筆頭・朝乃山に勝利。こちらも人気力士同士の対戦なのに、土俵の滞在時間は短かった。

その次が凄かった。観客の声援大爆発!地元大阪府出身の前頭筆頭・宇良が登場。宇良が大関・豊昇龍を肩透かしで破った瞬間は、株価が最高値になったよりも凄い騒ぎだと感じた。

実況の太田雅英アナウンサーは「お見事でした!」と宇良の技を表現し、舞の海さんは「桜が満開になったようですね」と宇良の廻しの色に合わせたピンクのタオルや応援グッズが揺れるのを語った。

向正面の桝席の中の放送席にいる荒磯親方(元関脇・琴勇輝)は「鳥肌が立ちましたね」と、宇良の勝ち方と周囲の騒ぎを、まさに肌で感じたことを述べた。

負けた豊昇龍の顔には悔しさがモロに出ていた。

大関で最後に登場したのは、先場所綱とりに失敗した霧島。稽古を良くしているという情報から期待していたが、小結・阿炎の引き落としに敗れた。霧島も立合いからの土俵の滞在時間が短すぎた。攻防の末の結末であって欲しいものだ。

時短相撲で、その強さを見せて欲しいのは、照ノ富士だといつも思っている。2連覇により、自身の目標である10回目の優勝を果たして欲しいが、小結・錦木に敗れた。照ノ富士は上手を取ったので勝てると思ったが、相手も組んでいるのだ。錦木が腰の重さと逆襲の底力を発揮して、照ノ富士を寄り切った。

王鵬


個人的に不満だったのが、関脇に戻った若元春と自己最高位の前頭3枚目となった王鵬の対戦。琴ノ若が花道に登場したため、テレビカメラが琴ノ若を映し出した。太田アナウンサーも舞の海さんも、琴ノ若オンリーの談話体勢に入った。

祖父、父親との関係を語るなら王鵬は、祖父は元横綱・大鵬で、父親は元関脇・貴闘力だ。若元春も祖父は元小結・若葉山、父親は元幕下・若信夫だぞ。とにかく、若元春と王鵬のファンだから、仕切り中の表情を見たいのだ。

注目の力士を画面にアップしても良いが、テレビ画面の端っこに四角を作り、いま仕切っている最中の力士たちを映して欲しい。そちらのファンもいる。

王鵬は若元春を土俵際まで押したのに、引き技をして負けてしまった。王鵬はよく引き技をして残念なことになる。負けた時、私は「ギェー。やっちまった!」と叫んだ。若元春も応援しているので、複雑な気持ちだった。

「道」を究める


初日の前日の9日に、私は近くのコンビニで和菓子やスナック菓子を買い込んだ。昭和20年3月10日、東京大空襲により約10万人が亡くなった。父の両親と妹も亡くなっているので、仏壇にお菓子を供えるためだ。私の母は下町の高等女学校の生徒だった。

米軍の爆撃機B29が焼夷弾を落とす中、弟と共に逃げまくり、国技館(旧)が燃えているのを見て「日本はもうだめだ」と思ったが、また相撲部屋のある街に住み、大相撲を見たい、という思いを胸に、耐えたそうだ。

母は大火傷を負い、現在の両国国技館の近くの両国駅の傍に弟とうずくまっている時に、はぐれてしまった父親が見つけてくれたそうだ。

母は大相撲を人生に活かしていた。60代の後半に、9歳年上の夫が難病で体が動かなくなった。おむつを嫌がる夫を、相撲の技を使ってトイレに連れて行き、腰を痛めることがなかった。これは母が独自に究めた「介護道」だと思った。

私は一人暮らしになっても、母が頼んでいた生協の宅配を利用している。配達員さんは長年同じ人で、私がいる時は、玄関で大相撲の蹲踞(そんきょ)の姿勢になり、外に置いた箱から野菜やら生活用品を出して、床に並べてくれる。

その動きが美しく、聞いたら腰を痛めないためなのだそうだ。配達員さんが独自に生み出した「宅配道」だと思った。

「道」を究めることは、日常生活でもできる。家の近くに車が多く通るのに信号機がない横断歩道がある。手を挙げて車を止めても、バイクが追い抜いて危ない時がある。渡るのには技術がいり、その道を究めることを私は「横断歩道」と名付けている。

体に負担のかからない正しい歩き方を究める「歩道」、規則を守る「自転車道」、水道の水を無駄にせず、水道料金を抑える「水道」など、生活のいろいろな場面で「道」を究めたい。

「横断歩道」、「水道」など日ごろ使われている言葉だからややこしいが、「相撲道」と同じく、あくまでも究めるための「道」(どう)なのだ。

今場所はどの力士が「優勝道」を究めるか?幕内はもちろん、若隆景と伯桜鵬のいる十両の「優勝道」にも期待したい。

※「しろぼしマーサ」誕生のきっかけとなった読者体験手記「初代若乃花に魅せられ相撲ファン歴60年。来世こそ男に生まれ変わって大横綱になりたい」はこちら

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