『春になったら』奈緒&木梨憲武演じる父娘が身近に生きる“リアリティ”創りたい――Pが語る誕生秘話

2024年3月18日(月)11時0分 マイナビニュース

●祖母の余命宣告が構想のきっかけに
現在放送中のカンテレ・フジテレビ系ドラマ『春になったら』(毎週月曜22:00〜)は、“3カ月後に結婚する娘”椎名瞳(奈緒)と“3カ月後にこの世を去る父”椎名雅彦(木梨憲武)が、「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を実現していく3カ月間を描くハートフル・ホームドラマ。きょう18日放送の第10話で、瞳は初めてメインを任されたお産に奮闘し、入院中の雅彦は葬式に呼んでほしい人のリストを作る。そして二人は、残された時間を自宅で過ごすことに——。
残すところあと2話、最終回を目前に、今作を手掛けるカンテレの岡光寛子プロデューサーにインタビュー。この後編では、物語誕生のきっかけ、「ここだけはブレないようにした」という作品の軸について話を聞いた。
○余命宣告で聞いた「一緒に桜を見られたら」という言葉
——残すところあと2話で最終回を迎える『春になったら』ですが、物語誕生のきっかけを教えてください。
ホリプロの白石裕菜プロデューサーと一緒にお仕事をするのは今作が4作目なのですが、「オリジナルドラマを考えましょう!」ではなく、身のまわりで起こった出来事や、今興味のあることを語る世間話から、企画のタネを見つけることが多いんです。今回は、私の祖母が3カ月の余命宣告を受けたとき、お医者さんに「一緒に桜を見られたらいいですね」と告げられた経験から話が膨らんでいきました。
——岡光さんがお祖母様の余命宣告を経験したことがきっかけに。
余命宣告を受けた瞬間は衝撃が走りましたが、冷静になると、誰もが迎える終末期について考えることは、自分らしい生き方を選ぶことにつながるんじゃないかと思って。シリアスなテーマですが、明るさやポップさを加えながら、大切な人と見てもらえるドラマを作れないだろうかと、構想を練り始めました。
——「桜が見られたら」という表現が現実に存在するんですね。
「そうか、具体的に何月何日までとは言えないよね」と母と納得しながらもいろいろな思いが渦巻いたのですが、印象的な言葉だったので、そのまま第1話の台詞にも使わせていただきました。
○人生の節目の“喜びと悲しみ”分かち合う大切さ
——“3カ月後に結婚する娘と3カ月後にこの世を去る父”という物語の軸はどのように生まれたのでしょうか。
入学式、卒業式、結婚式、お葬式と、人生にはいろいろな“節目”がありますが、新しい門出を誰とどう祝福し合いたいのか、何かの終わりを誰とどう偲びながら過ごしたいのか、そこにこそ、その人が人生を通して大切にしたいものが鮮明に映し出されると思うんです。コロナ禍では結婚式が中止になったり、お葬式には身内しか参列できなかったりと、喜びや悲しみを分け合える豊かな時間を一度失った今だからこそ、ある親子の、はじまりとおわりの節目を通して私たちが大切な誰かと分かち合いたい感情を、深く丁寧に描けたら、と。
——今作を制作する中で「ここだけはブレないようにしたい」と一番大事にしたところは。
第1話で、小林聡美さん演じる助産院の杉村院長が「出産って特別なことのように思えるけど、日常の一部なんですよ」と話す場面があったのですが、あれは取材に行った時に助産師さんから実際に聞いた話なんです。当たり前に生きている日常や家族にも終わりはありますし、人が亡くなる同じ日に新しい命が誕生しています。生まれることも死ぬことも対極にあるように見えて、1本の線でつながっているということを改めて感じ、このドラマでは“日常感”を大事に描きました。家族の始まりと終わりの対比を軸に、人生のままならなさを描きながら、温かさと軽さの中に人々の機微や日常の尊さを見出すような、そんなドラマにしたいと。ホームドラマとして、奇抜な設定にせず、激しい事件を起こさず、過度な演出や音楽をつけず、「ある親子の、ある3カ月の日常を切り取った、地に足のついた作品」でありたいという思いはブレていません。
——インタビュー前編でもお伝えしましたが、今作を見ていると、瞳と雅彦が、私たちが生きる世界のどこかで、実際に存在する親子のように感じます。
まさにそこが目指していたところなんです。私たちが生きる世界と地続きの、しかも身近な場所で生きていると感じてもらえるような親子になれば、という思いを、奈緒さんと木梨さんが見事に体現してくれました。
●多くのスタッフが涙…第10話の見どころ
○オリジナルドラマならではの、当て書きの強み
——今作は岡光さんの実体験から構想されたオリジナルドラマですが、オリジナルだからこそ実現できた作品の強みを教えてください。
あらかじめ企画の軸やストーリー、キャラクターは存在したのですが、奈緒さんと木梨さんが親子役を演じると決まってから、脚本の福田靖さんによる本格的な執筆が始まったので、お二人が持つ素敵な部分を反映できたらいいな、お二人が演じるうえで無理のない役になればいいな、と考えながら“奈緒さんが演じる瞳”、“木梨さんが演じる雅彦”を生み出すことができました。役には演じる方の人間性がにじみ出ると思っているので、当て書きができるところはオリジナルドラマの強さだと思います。
——役者さんにとっても、自分が演じる前提で書かれたキャラクターの役作りをしていくことはやりがいになりそうですね。
奈緒さんとはドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ、20年)でご一緒したとき、「また絶対にお仕事したいですね」と話していたのですが、3年経って、今回は主演という形でお迎えすることができました。今作では制作の初期段階から奈緒さんとお話していたので、一緒にものづくりをしているという感覚がとても強いです。
○プロデューサーとして“リアリティ”の創出にこだわり
——印象に残ってるシーンを教えてください。
たくさんあるのですが、強いて挙げるなら、第1話で、雅彦の病について半信半疑だった瞳が、お医者さんに話を聞いて事実だと分かり、リビングで父に「治療を受けてほしい。死んじゃ嫌だ」と訴えるシーンです。撮影もまだ序盤戦だったのですが、木梨さんと奈緒さんのぶつかり合うようなお芝居にグッと心を掴まれて「きっと素敵なドラマになるに違いない」と肌で感じることができ、現場の空気が一変したのを感じました。スタッフの団結力も一気に上がりましたね。
——視聴者目線でも、今作で初めての山場といえるようなシーンで、とても印象に残っています。視聴者の方から寄せられる反響に、感じることはありますか。
「このドラマを見て、遠くで暮らす両親に電話してみようと思います」とか、「明日、友達にありがとうって声をかけてみようと思います」とか、「もう一度自分の大切な人のことを考えてみようと思います」というお声をいただけて、すごくうれしいです。
——岡光さんがプロデューサーとして、こだわったポイントを教えてください。
親子が実際に存在しているようなリアリティを持たせるために、撮影が始まる前から、奈緒さんと木梨さんが一緒に過ごす時間を何回か作らせていただいたことですね。家のセットが出来上がったときにも、撮影の日に二人が初めて見てすぐに撮影するのではなく、「椎名家に馴染む日」を取って、雅彦と瞳ってどこに座るんだろう、この部屋のどこに何が置いてあるんだろう、椎名家ならではのルールや役割分担ってどうなってるんだろう、と皆で考えながら、部屋の中を歩いたり、家具や置いてあるものを触る日を設けました。
——時間をかけて、丁寧に親子の関係性を作っていったことが感じられます。そんな岡光さんは、『ウソ婚』、『時をかけるな、恋人たち』、そして『春になったら』と、3クール連続で連ドラのプロデューサーを務めていますが、こんなに担当が続くことがあるんですね。
なかなかないです(笑)。色んなタイミングが重なって連続で担当することになりましたが『ウソ婚』はラブコメ、『時をかけるな、恋人たち』は時間SF、『春になったら』はホームドラマと、全く違うジャンルの作品を手掛けることができ、可能性を広げてくれる貴重な経験になりました。しかも主演の菊池風磨さん、吉岡里帆さん、奈緒さんは、“二度目まして”。再会できる喜びと、二度目だからこそ、より役者さんの魅力を引き出したい、そして自分も成長した姿をお見せしたいという思いがいいプレッシャーになり、モチベーションにつながりました。キャストスタッフとのうれしい再会や、新しい出会いも沢山あり、毎日が刺激的で、全てのドラマに思い入れがあります。
○第10話のラストには多くのスタッフが涙
——では最後に、『春になったら』18日放送の第10話の見どころを教えてください。
第10話は、瞳が助産師として、初めてメインとなって出産を任されるというストーリーになっています。このドラマの中で最後となる出産に、瞳がどう向き合うのか、見届けていただければと思います。一方で、死が近づく雅彦は病室で何を思うのか。瞳は父の願いを叶えるため、ある一大決心をします。そして、最終回=結婚式前夜の3月24日も描かれます。父と娘への、家でのラストシーンでは、撮影中に多くのスタッフが涙していました。親子は何を語るのか、ぜひご注目ください。
■カンテレ 岡光寛子プロデューサー
1989年生まれ、広島県出身。12年、関西テレビ放送に入社し、宣伝部、制作部を経てドラマプロデューサーに。これまでのプロデュース作品に『TWO WEEKS』『姉ちゃんの恋人』『アバランチ』『魔法のリノベ』など。『ウソ婚』『時をかけるな、恋人たち』『春になったら』と、3クール連続で連ドラプロデューサーを担当中。

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