眼科専門医 花粉症やアトピー性皮膚炎の人は特に注意。虫が飛んでいるように見える<飛蚊症>は網膜剥離の前兆かも
2024年3月26日(火)6時30分 婦人公論.jp
平松先生「知らない間に目を掻いているような人はご注意を」(写真提供:Photo AC)
環境省が公開している「花粉症環境保健マニュアル2022」によると、約3人に1人がスギ花粉症と推定されるそう。そんな花粉症の症状の一つに目の痒みがありますが、「目を掻いてしまうと網膜剥離になりやすい」と話すのは、眼科専門医・医学博士の平松類先生。今回は平松先生に「目のトリセツ」について解説していただきました。先生いわく「高齢になると、飛蚊症を訴える人が多くなる」そうで——。
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虫が飛んでいるように見えるのは?
加齢による見え方の変化の1つに、黒い点のようなものが見えることがあります。
視線を動かすと蚊のような小さな虫が飛んでいるように見えることから「飛蚊(ひぶん)症」と呼ばれています。
高齢になると、飛蚊症を訴える人が多くなってきます。
その原因は、硝子体の汚れです。硝子体とは、水晶体の奥にあるゼリー状の部分のことをいいます。年齢を重ねると、この部分に汚れが出てくるのです。目の老化現象の1つですね。
ではその汚れの原因は何かというと、加齢によるシミのようなものができていることがほとんどです。
その場合はとくに問題はありません。気にしないようにすれば、そんなにわずらわしく感じられないと思います。
黒い点が急に増えたときは注意
ただ網膜剥離の前兆として飛蚊症が起こることがあります。例えば網膜に小さな穴が開くと、その部分の網膜の色素が飛んで、黒く見えることがあります。
あるいは網膜剥離によって眼底出血が起こり、その出血している部分が黒く見えることもあります。
とくに黒い点が急に増えたときは、注意が必要です。前述の硝子体の汚れが原因の飛蚊症であれば、急に増えることはあまりありません。
逆に急に増えるということは、網膜に穴が開いているとか、出血があるとか、炎症が起きていることが多いのです。そんなときはすぐ眼科を受診してください。
目は手でいじってはいけない
網膜剥離を予防するためには、目をいじらないことが一番大事です。
とくに近視の人は、網膜剥離のリスクが高いですから、いじる習慣のある人はやめましょう。
ボクサーは顔面を殴られるので、眼球がダメージを受けやすいのです(写真提供:Photo AC)
ボクサーは網膜剥離になりやすいと聞いたことはありませんか。
なぜかというと、ボクサーは顔面を殴られるので、眼球がダメージを受けやすいのです。
パンチが直接眼球に当たらなくても、骨からの間接的な衝撃があるので、顔を殴られたら眼球も相当なダメージを受けることになります。
アトピー性皮膚炎の人も注意
それと同じで、アトピー性皮膚炎の人も網膜剥離になりやすいことが知られています。なぜかというと、目を掻いてしまうからです。
目を掻くのは、ボクサーのパンチに比べると弱い刺激ですが、直接眼球がダメージを受けます。それが繰り返されることで、網膜剥離を発症することがあるのです。
アトピー性皮膚炎だけでなく、花粉症でも目がかゆくなる人がいるので要注意です。
アレルギー症状がある人で、目のまわりがかゆくなる人は、知らない間に目を掻いている可能性があるので気をつけましょう。
目には物理的な刺激を与えないようにしてください。
※本稿は、『名医が教える 新しい目のトリセツ』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。