唐田えりか、『極悪女王』が大きな転機に「出会ってなかったら…」 村上春樹作品出演や今後の目標も語る
2025年4月4日(金)8時15分 マイナビニュース
●『極悪女王』で女優業への思い再確認「私はお芝居がしたいんだ」
昨年配信されたNetflixシリーズ『極悪女王』でプロレスラーの長与千種を熱演し、絶賛の声が相次いだ唐田えりか。4月5日に放送されるNHKの土曜ドラマ『地震のあとで』(総合 毎週土曜22:00〜22:45 ※全4話)の第1話では、岡田将生演じる主人公・小村が出会う不思議な雰囲気の女性・シマオを演じている。唐田にインタビューし、『極悪女王』が自身に与えた変化、そして『地震のあとで』が自身にとってどんな経験になったのか話を聞いた。
本作は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の後、村上春樹氏が著した連作短編を原作に、“地震のあと”の4つの物語を描くドラマ。第1話「UFOが釧路に降りる」は、1995年の東京で阪神・淡路大震災のニュース映像を見続けていた小村未名(橋本愛)が突然家を出ていき、夫の小村(岡田将生)が妻の行方も分からないまま、後輩に依頼された「届け物」をするため釧路へ赴き、そこで出会った女性たちに奇妙な旅へと導かれていくというストーリー。
唐田は、小村が釧路で出会い、小村を不可解な言葉で誘っていくシマオを演じた。村上氏の『ノルウェイの森』が小説の中で一番好きだという唐田は、「村上春樹さんならではの世界観がとても好きで、役者人生の中でいつか演じたいという思いがあったので、率直にあの世界観に入れることのうれしさを感じました」とオファーを受けたときの喜びを語る。
演じたシマオについては「今回の作品の中でも特に村上春樹さんのキャラクターというような本当によくわからない存在」だと感じたという。
「あまりにも真っすぐだからこその不気味さや不思議さがあるなと。でも、岡田さん演じる小村などはどこか不安定なまま存在しているイメージですが、シマオは不安定ではない印象を受けて。小村と同じような経験を1回したからこそ、小村がこれからどういう動きをするのか見据えているように感じて、ちゃんと地に足をつけて小村を惑わしていくというか、中に入り込んでいくような芝居をイメージして演じました」
役と自身の共通点を尋ねると、「私は思ったことしか言ってないんですけど、それがたまにわからないと言われることがあって、ちょっとよくわからない不気味さがもしかしたら似ているのかなと。シマオは小村に思ったことをそのままぶつけていて、そういうところが似ているのかもしれません」と答えた。
○女優デビュー10年に驚き「恐ろしいなというぐらい早かった」
唐田は2014年に芸能活動を開始し、2015年にフジテレビ系ドラマ『恋仲』で女優デビュー。今年で10年の節目となる。
「10年経ったというのは驚きというか、恐ろしいなというぐらい早かったです。これからも自分が面白いなと思うものや、自分が豊かになるなと思うものなど、失敗を恐れずにいろんな作品に関わっていきたいなと。何でも頑張ってやりたいという気持ちで、やる気に満ちています」
昨年配信されたNetflixシリーズ『極悪女王』で、プロレスラーの長与千種を熱演した唐田。肉体改造で体重を10キロ増量させ、プロレス練習にも励んで難易度の高い技もほぼ吹き替えなしで演じ、髪切りデスマッチのシーンでは丸刈りに。再現度の高さと女優魂に絶賛の声が続出した。
唐田は『極悪女王』が大きな転機になったと言い、「出会ってなかったらどうなっていたんだろうと思ってしまうぐらい、自分の中でとても大きな作品に。出会ってなかったらと考えるのが怖いです」と語る。
そして、「『極悪女王』で私はお芝居がしたいんだと改めて感じ、これからも女優として前向きに頑張っていきたいという思いになりました」と女優業への思いを再確認できたという。
「キャストのみんなとの出会いや白石(和彌)監督との出会いも自分にとってすごく大きなものになっていて、そういう巡り合わせを作ってもらえた現場だったので、本当にありがたかったなと。皆さんに背中を押してもらい、頑張らなきゃなというか、頑張る理由ができたなと思っています」
●岡田将生との共演で味わった初めての感覚「すごく楽しかった」
女優としての覚悟を固めた中で挑んだ『地震のあとで』も、とても大切な作品になったと言い、プライベートで親交があり今回初共演となった岡田将生と対峙して芝居の楽しさを改めて感じたという。
唐田は『寝ても覚めても』、岡田は『ドライブ・マイ・カー』で濱口竜介監督の作品を経験。唐田は「岡田さんは私にとって大先輩ですが、同じ濱口組を通っているということで感覚がどこか似ているなと感じるところがあって、本読みのときからお互いどうやってくるんだろうと探り合いをしている感じがして、昔の作品を超えていきたいという思いもありますし、そのぶつかり合いができてすごく楽しかったです」と振り返る。
さらに、「岡田さんと対峙するシーンで悔しいと感じた瞬間があって」と打ち明け、「自分はシマオとして、小村をわかり切って、どこか操っているような芝居をしていたのに、岡田さんの顔を見たときに、今まで先にいたはずなのに引き戻されたような感覚になって、自分の想像してないところに連れていかれたというのが悔しいという気持ちになりました」と説明。「そういった感覚になったのは初めてで、相手の芝居を受けて自分の想像してないところに行けたというのがすごく楽しくて、役者として新しい経験をさせてもらえてありがたいなと思いました」と語る。
本作の制作統括は、唐田が初めてヒロインを務めた映画『寝ても覚めても』でプロデューサーを務めた山本晃久氏。唐田は山本氏と再び仕事ができたことも「とてもうれしかった」と笑顔を見せ、山本氏の言葉がきっかけでほかにも新しい挑戦ができたと明かす。
「私はプランを固めず感覚的にお芝居することが多く、ずっとそういう風にやってきたのですが、今回山本さんから『考えた演技にも挑戦してほしい』と言われて、シーンごとに山本さんから『考えてみて』と導いてもらいながら演じました。だからこそ、今まで以上にみんなで作ったという感覚があって、現場の楽しさを改めて感じました」
挑戦してみて、感覚ではなく考えた演技は「私には向いてないかも」と感じたものの、新しい芝居のやり方を学べたことはとてもいい経験になったという。
「どういう風に演じようか考えてみましたが、現場に入るとそれが飛んでしまって、結局考えられないなと思ったのですが、違うやり方を知る機会になりました。そういう風に言ってくださる方がいることのありがたさも感じましたし、刺激になる部分がたくさんあったので、日々勉強という感じで。これからも自分の幅を広げていけるように勉強していきたいです」
○カンヌ映画祭に参加して芽生えた目標「世界三大映画祭に行くこと」
2023年に韓国との2拠点生活を送る意向との報道もあった唐田。現状を聞いてみると、「2拠点で生活しているわけではなく、韓国の事務所にも入っているのでうまく2つでやっていけたらという思いです」と答え、「今は日本で頑張りたいという気持ちですが、時間があるときに韓国のお芝居のワークショップを受けたり、韓国でも活動していけるように時間を使っていけたら」と語った。
女優としての目標は「世界三大映画祭に行くこと」だという。
「カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの映画祭に行ってみたいなと。20歳のときに『寝ても覚めても』でカンヌ映画祭に立たせていただいたときに、うれしさももちろんありましたが、濱口監督の力でしか自分がここに立ってないという悔しさや焦りも同じぐらい感じて、いつかここに堂々と立てるような役者になりたいとあの時に思い、それを目標にしています」
連れて行ってもらうのではなく、自分もしっかり貢献できたと胸を張って参加できるように。
「作品はいろんな人の力によって成り立っているものだと思うので、自分が引っ張っていくというよりも、この作品に自分はちゃんと力を注げて、作品の一部になれたという自信を持って立ちたいなと思います」
最後にファンに向けて、「今後もいろいろと楽しんでいただける作品をお届けしていきたいと思っているので、ぜひ見ていただきたいです」とメッセージを送った。
■唐田えりか
1997年9月19日生まれ、千葉県出身。2014年、高校生のときにマザー牧場でスカウトされ、同年、少女時代のミュージックビデオ「DIVINE(Story ver.)」に出演して芸能活動を開始。2015年、フジテレビ系ドラマ『恋仲』で女優デビュー。2018年、映画『寝ても覚めても』で初ヒロインを務め、山路ふみ子映画賞新人女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2024年、Netflix『極悪女王』で長与千種を演じて注目を集め、第77回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』にも出演。今年は『死に損なった男』が2月21日に公開され、4月11日に『Page30』、晩夏に『海辺へ行く道』が公開予定。