加藤清史郎、宮崎駿監督作品『未来少年コナン』舞台化への思い「今、見ても全く色あせず、ストレートに刺さる」【インタビュー】

2024年4月4日(木)8時0分 エンタメOVO

加藤清史郎 (C)エンタメOVO

写真を拡大

 宮崎駿監督のルーツともいえる、初監督作品『未来少年コナン』が舞台化される。本作は、最終戦争後の荒廃した地球を舞台に、恐れを知らない野生児のコナンがなおも権力にしがみつく人間たちと戦う冒険活劇。主人公のコナンを演じる加藤清史郎に公演への意気込みや原作への思いなどを聞いた。



−本作のオファーを受けたときの心境を教えてください。

 宮崎駿さんに(演出・振付・美術・衣裳を担当する)インバル・ピントさん、さらに芸術劇場プレイハウスという、そうそうたる名が連なっている下に加藤清史郎という文字を見て、ここに並ばせていただけるんだと、恐縮しました。「奇跡の舞台化」とまでいわれている作品ですから、その奇跡に僕も参加させていただけるならば、やらせていただかなくてはという気持ちでした。

−原作のアニメもご覧になっていると思いますが、率直な感想は?

 今回、オファーをいただいて見させていただいたのですが、なんでもっと早くに見てなかったんだろうと思いました。もし、いつか父親になるときがきたら、絶対に自分の子どもに見せたいです。宮崎監督の作品はどの作品も、子どもたちの無邪気さや個性的なキャラクターをポップに描くことで子どもたちも楽しく見られますが、実は物事を深く描いていて、大人になって見るとまた違った印象があります。この作品は、最終戦争後の地球が舞台ということもあり、物語の序盤からおじいとモンスリーが戦争について話すシーンが出てくるのですが、そのシーンでもかなり辛辣(しんらつ)な掛け合いがあるんですよ。モンスリーは、ヒロインのラナをさらう敵役ではありますが、“悪”だと思われているものは果たして本当に悪なのかなど、いろいろなことを考えながら見ました。地震や津波や環境問題も扱われていて、とても70年代のアニメとは思えない物語で、今、見ても全く色あせず、ストレートに刺さる。そんな「未来少年コナン」をインバル・ピントさんというすばらしい演出家の方が舞台化するということは本当に意義のあることだと思いました。

−加藤さんが演じるコナンというキャラクターについてはどのように感じましたか。

 考え方も行動も「ザ・主人公」という人物で、僕は大好きです。言っていることは純粋過ぎるかもしれませんが、それを信じる心の強さがあって、熱いのに説教じみてないんです。この物語は、コナンが人を変えていく話だと僕は思います。ラナもジムシーもダイスもモンスリーも、コナンと出会ったことで変わっていきます。コナン自身は「仲間になれ」とは発していないんですよ。周りの人物は勝手に感化され、ついていってしまう。人を動かして、組織をも動かしてしまうくらいの熱さのある少年だと思います。

−加藤さんと似ているところはありますか。

 コナンは自分を犠牲にしても人のことを思って行動しますが、僕もどちらかというとそういうタイプなので、そこは似ているのかもしれません。それが良い方向に行くか悪い方向に行くかは別として、昔から余計なことに首を突っ込んでしまうんですよ(笑)。ただ、僕はこんなにもできた人間ではないです(笑)。僕はもう成人ですが、それでもコナンのように達観できていないですね。彼の間(ま)の使い方もすごく大人なんですよ。今、何を言うべきなのか、何も言わないべきなのかを考えて話しているのだと思います。僕は、「何も言わないべき」と決めたときのコナンの顔がめちゃくちゃ好きなんです。さまざまなことを考えているのに、邪念がなく、真摯(しんし)に向き合っている顔をしていて、憧れます。



−では、コナンがラナを助け出すために冒険の旅に出るという本作にちなんで、加藤さんがもし冒険をするとしたら、どんな冒険をして、どんなところに行きたいですか。

 冒険と言うからには、「温泉巡り」や「カフェ巡り」じゃないものを言おうかな(笑)。コナンがラナを守るために冒険している姿がとてもかっこいいので、僕も“ラナ”を守るために冒険したいです。ということは、まずは自分にとっての“ラナ”を見つけないと(笑)。それに加えて、コナンはダイスやモンスリーたちも助ける「守るための冒険」をしているので、それはすごくすてきだなと思います。僕もそんな冒険がしたいです。

−ところで、加藤さんは映像作品でも活躍していますが、舞台に出演することに対してはどんな思いがありますか。

 僕は、映像と舞台は本質的な部分は変わらないと思っていますが、(舞台は)生であるということは違うところだと思います。テレビの画面越しで見るのと、同じ場所にいて目の前で演じているのを見るのでは、大きな違いがあると思います。例えば動き1つとっても、画面で見るより舞台の方が伝わることもあり、それぞれの役者がその場に生きているからこそ生まれるものがあると思います。それは、演じていても面白いところですし、観客の皆さんもそうしたところに魅力を感じていただけているのではないかなと考えています。何度同じ作品を見ても、少なからず違う部分があったり、作品によっては(ダブルキャストなどで)キャストが変わることも舞台の持ち味だと思います。今回、『未来少年コナン』を舞台化することの意義を劇場でお見せし、コナンという少年を通して、皆さんに何かを感じていただけたらと思っています。

−加藤さんがめざす理想の俳優像は?

 昔から変わっていないのですが、幅のある役者になりたいです。役柄はもちろんですが、映像も舞台も声のお仕事も、仕事の幅もある役者になりたい。新しい作品に出会ったら、また別の幅を広げられると最近は特に実感しているので、自分の幅を増やし、伸ばし続けることがマストなのかなと思います。

−役の幅という意味では、2023年に放送されたドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に□された」(日テレ系)での役柄もこれまでのイメージにはない役柄でした。

 そうですね。これまで演じたことがない役柄でしたので、自分の中でも印象に残っています。僕の中でも特別な役で、2023年のお仕事について聞かれた時に真っ先に思い浮かぶ作品です。

−最後に改めて本作への意気込みを教えてください。

 この(メディア向け)リリースにあるように「奇跡の舞台化」だと思います。その「奇跡」をきちんと形にできるように、みんなで作り上げていこうと思っていますので、ぜひご来場いただければと思います。子どもも大人も楽しめる作品になると思うので、ぜひご家族で、友人同士で、生の芝居を感じていただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「未来少年コナン」は、5月28日〜6月16日に東京芸術劇場 プレイハウスで上演。

エンタメOVO

「宮崎駿」をもっと詳しく

「宮崎駿」のニュース

「宮崎駿」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ