武内陶子「45歳で双子の娘を生んだ時、リオのカーニバルを1人で見に行った夫。夫育ては失敗したけれど、ご機嫌に操縦すればいいと割り切って」

2024年4月8日(月)12時29分 婦人公論.jp


「そんなふうに突飛な行動をする夫を面白がっている自分もいるんです」(撮影:宮崎貢司)

2023年9月末、33年間アナウンサーとして勤めたNHKを早期退職制度で辞めた武内陶子さん。思いもよらず、新たなスタートを切った心境は——(構成=内山靖子 撮影=宮崎貢司)

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<前編よりつづく>

家事も育児も「ご機嫌システム」で


私はもともと、くよくよ悩むより行動したいタイプ。だからでしょうか、どんな仕事を振られても楽しく取り組めるような「ご機嫌システム」を、無意識のうちに構築してきたように思います。

家事もねぇ、「なぜ、この山のようなお皿を私が洗うんだろう?」ってイラッとしますけど、他人のせいにすると怒りが増幅するでしょう。だから、「私がきれいにしたいと思っているから洗うんだ」と気持ちを切り替えるようにしているのです。すると、ピリピリしていた心もかなり和らぎます。

ただ私、夫育てには失敗しまして(笑)。「これ、洗っといてね」「あれ、片付けておいて」と頼んでも、「は〜い」という返事は返ってくるものの、実際にはぜんぜんやってくれない。

45歳で双子の娘たちを産んだときのことですが、当時は長女もまだ6歳で、そこに0歳の娘が一気に2人も増えて、家事も育児もてんてこまいの最中に、夫が「ちょっとリオに行ってくるから」って。

「え、リオって、どこのお店の名前?」と尋ねたら、「いや、南半球のリオデジャネイロ。人生で1度はリオのカーニバルを見ておきたいと思って」とニコニコしながら言うんです。そのときはさすがにブチ切れそうになりましたけど、結局「まぁいいか」と送り出しました。

そんなふうに突飛な行動をする夫を面白がっている自分もいるんです。実際、南米最大のお祭りを見に行くことは夫の仕事にも役立ちますし、現地でビデオをたくさん撮ってきて見せてくれたので、自分が知らなかったことを知るいい機会にもなりました。

その後も、アルゼンチンやシンガポールなど、子育て真っ最中の私を尻目に夫はあちこち出かけて行きましたけど、「私の目や足となって、もうどこにでも行ってきて!」と思えば、腹も立たなくなりました。

それに海外に出かけるたび、人形型の歩く胡椒入れやメガネの形をしたストローなど、変わったお土産をいっぱい買ってきてくれるので、娘たちはパパが海外に出かけるのを毎回楽しみにしているんです。

一方で、彼が得意なことは積極的にお願いするようにしています。たとえば、わが家では夫が「狩り担当」なんですよ。

夕方、私がヘトヘトに疲れて、「もうダメ、夕飯を作る気力がない」なんていうときは、娘たちと声を合わせて「パパ〜、狩りに行ってきて」と頼んじゃう。夕方以降に割引シールが貼られたお惣菜をゲットすることを、わが家では「狩り」と呼んでいるんです(笑)。

夫は買い物が大好きなので、「狩りに行って」と言われたら、大喜びでスーパーに飛んで行き、20%オフ、50%オフのシールが貼られたお惣菜を買い物袋がパンパンになるほど買って来てくれる。

大量のお惣菜を見ると、主婦としては一瞬ギョッとしますけど、5人家族なのであっという間にたいらげちゃう。翌日のお弁当のおかずにも利用できてラクチンですし。そんなふうに夫をご機嫌に操縦するポイントも、長年の結婚生活の間に自然とわかってきたのだと思います。

まい泉のカツサンドと舟和の芋ようかん


もうひとつ、私がいつも機嫌よくいられる理由は、33年間、アナウンサーという職業を続けてきたからかもしれません。たとえ前の晩に大失恋をしたとしても、翌朝の生放送ではピカピカの笑顔で、「おはようございます!」と元気に挨拶をしなくてはいけない。

私は若い頃から朝の番組を担当することがとても多かったんです。『おはようえひめ』に始まり、『おはようきんき』『おはよう日本』と、それこそ「おはよう」の連続(笑)。

そのおかげで、どんなに落ち込むことがあっても引きずらず、自然と気持ちを切り替える癖が身についたのでしょう。

また、「備えあれば憂いなし」ではないですが、気分が沈んだときに自分を助けてくれる手段やモノを、日頃から用意するようにしています。

更年期でつらかったときも、先輩たちの体験談を聞いたり、大好きなゴスペルのレッスンに通ったり、BTSのライブに足を運ぶなど「推し活」に励んでいるうちに、自ずと心が癒やされました。

近頃は、子どもたちを夫に任せて、週末に一人旅に出ることもいい気分転換になっています。

さらに、大好物のまい泉のかつサンドと舟和の芋ようかんがあれば、「よし、あれを食べよう!」と元気が湧いてくる(笑)。自分を元気にしてくれるアイテムがいくつもあることで、どん底まで落ち込むこともありません。

これからは、NHK時代にはできなかったことをすべてやっていきたいと思っています。SNSはすでに始めていますし、自分の視点を交えた美術館のオーディオガイドもやってみたい。

学生時代にミュージカルのサークルに所属していたので、密かに女優デビューも目指しています(笑)。

これから本格的にスタートする「武内陶子第2章」を思い切り楽しむためにも、心身ともにご機嫌で、いくつになっても自分のハッピーを見つけていきたいですね。

婦人公論.jp

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