英語の理解スピードを上げる<カタマリをカタマリとして捉える>手法とは。定型表現の知識のレパートリーを増やし、それに慣れるべし

2024年4月19日(金)6時30分 婦人公論.jp


北村先生「定型表現の知識のレパートリーを増やすべき」(写真提供:Photo AC)

令和2年4月に学習指導要領が改訂され、小学校でも外国語を勉強する時間が増加しました。「英語の重要性が叫ばれ、人々の関心が高まってるとはいえ、リーディングとリスニングを関連づけて考えている学習者は、まだまだ多数派とは言えません」と語るのは、杏林大学外国語学部准教授の北村一真先生。北村先生は、「定型表現の知識のレパートリーを増やすべき」と言っていて——。

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カタマリをカタマリとして捉える


英語を理解するスピードを上げるための方法として、複数語がつらなって1つの意味をなすいわゆる定型表現の知識のレパートリーを増やし、それに慣れるということが挙げられます。

2〜3語からなる熟語やイディオムの類については、構成しているパーツに分解しても意味が推測できないものが多いためか、学習参考書などでも取り上げられており、カタマリとして捉えるという習慣がついている人が多いかもしれません。

では、もっと範囲の大きい、文法的に分析すれば十分に意味が推測できそうな「構文」などについてはどうでしょうか。

パーツを文法的に組み合わせて十分に意味が分かるものまでなぜ丸覚えしなければいけないのか、と感じる人もいそうです。

ドラマ『Sense 8』


しかし、2022年に出て話題を呼んだ中田達也氏の『英語は決まり文句が8 割』(講談社現代新書)では、実際には英語の母語話者や上級者はその話の大部分を一語一語組み立てているというよりはカタマリとなるような定型表現を丸ごと使って話していると指摘しており、自然な会話のスピードについていくためには読み手、聞き手のほうも同じようにカタマリをカタマリとして瞬時に把握できなければならないと言えます。

具体例を1つ見てみましょう。次の英文はSense 8というドラマシリーズの予告編の冒頭での登場人物たちのやりとりです。

A:Few know what it means to be reborn a Sense 8.
B:A what?
“Sense 8 Official Trailer [HD]”
Netflix

訳例
A:センス8 として生まれ変わるということがどういうことか、分かっている者はまずいない。
B:何だって?

決まった言い回し


このやりとりの最初の発言の太字部分はWhat does it mean to 不定詞?「…するというのはどういうことか?」という非常によく使われる定型表現を基にした疑問詞節です。

it が形式主語で後ろのto 不定詞を受けている形だと考えれば基本文法の範囲で分析的に説明することが可能ですし、「…することが何を意味するのか?」という直訳でも意味は通ります。


パーツを文法的に組み合わせて十分に意味が分かるものまでなぜ丸覚えしなければいけないのか、と感じる人もいそうです(写真提供:Photo AC)

より応用的な表現が出てきた場合も考慮に入れると、こういう仕組みを理解しておくことは必要です。

しかし、この表現を使用している話者はいちいちそのように文を組み立てて使ってはいないでしょうし、受け手としても実際読んだり聞いたりする際には、what does it mean to…? を「…するというのはどういうことか?」という1つの決まった言い回しとして認識しておくほうがはるかにスムーズで効率的です。

話し言葉


ちなみに、上のやりとりでは、返しのA what? というセリフも話し言葉らしい面白い表現ですね。

相手の発言の最後に出てきた、a Sense 8という言葉を繰り返すことで確認しているのですが、sense 8の部分が正確に聞き取れなかったために、その部分をwhatに変えて表現しているパターンです(なお、このsense 8というのはsensate「感応者」という単語との言葉遊びになっています)。

このように相手の表現の一部が聞き取れなかった時に、語順はそのまま、聞き取れなかった部分のみを対応する疑問詞に置き換えて聞き返す手法はecho questionと呼ばれています。

やはり、複数人の共同作業としての話し言葉ならではの表現法と言えるでしょう。

※本稿は、『英語の読み方 リスニング篇-話し言葉を聴きこなす』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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