現場第一のフリーアナ武田真一、下水管からランウェーまで「アラ還のおじさんがよくこんなことをしているなって」

2025年4月19日(土)7時3分 読売新聞

下水道管の中で取材する武田(千葉県柏市で)

 日本テレビ系の情報番組「DayDay.」(月〜金曜午前9時)が今月、放送3年目に入った。MCを務めるフリーアナウンサーの武田真一(57)に話を聞いた。(文化部 小林直貴)

「DayDay.」3年目の進行役

 番組は2023年4月にスタート。NHKの看板アナからフリーに転じた武田と、山里亮太南海キャンディーズ)の両MC、日本テレビの黒田みゆアナウンサーが進行し、タレントや元スポーツ選手、ジャーナリストら「曜日メンバー」が日替わりで出演している。

 「ニュースもやれば、エンタメも生活情報も、お出かけ情報もお天気もやる。災害が起きたら、それもしっかりやるし、(米大統領の)トランプさんの関税の問題など国際的な動きもお伝えします。この時間帯に家にいらっしゃる方が、お忙しい中でも、日本や世界で何が起きているのか、少しでものぞけるような番組になっていればいいなと思います」

 生放送のスタジオ収録を見学取材した今月7日は、ニュースに連動して「高速道路のETCシステム障害」について専門家の解説も交えながら詳報した後、暮らしに役立つ「野菜の上手な冷凍・解凍方法」を紹介。さらに工場見学のVTRや、大阪・関西万博の話題など盛りだくさんの内容だった。

 スタジオはほのぼのとした雰囲気。CM中も雑談で盛り上がっていた。いすに長く座る出演者たちはCMに入ると、立ち上がって体をひねったり、屈伸をしたり。武田によると、元サッカー選手の槙野智章がほかのメンバーに、気軽にできる筋トレのやり方を伝授していたという。

 「僕がいつも願っていることですが、スタジオはとても和やか」と、武田はうれしそうに話す。「番組では色々な情報を伝え、物の見方や意見を提示しますが、スタジオの雰囲気もお伝えしたい。(出演者は)みんな仲良く、気兼ねなくおしゃべりできる。そんな居心地のいい空間を作っています」

ニュースで伝えきれないものを伝える

 NHK時代は、冷静沈着かつ確かなアナウンス技術で、ニュースや報道番組のキャスターを長く務めた。民放の情報番組に活躍の場を移し、どんな気持ちでいるのか。

 「毎日新しいことが起きる。だからこそ『DayDay.』のような情報番組で日々お伝えできる。世の中って、こんなに色んな人がこんなに色んなことをやってるんだって、感動して驚いて楽しんでいます」と充実した表情を浮かべる。「この社会は捨てたもんじゃないなって思うんですよ。皆さんが一生懸命生きて、一生懸命何かを作り出そうとしている。その中では失敗もあるし、人と人がぶつかることもあり、残念ながらそれを伝えなければいけないこともある。でも日々『DayDay.』で、世の中の皆さんの一生懸命さやパワーをお伝えできて、とても幸せだなと思っています」

 報道番組と情報番組の違いは何か。「報道は日々、世の中の大事な動きを伝え続ける、人々の生活の貴重な情報基盤だと思う。民主主義を守り、見通しがつかない時代に指針を与えるという意味で大切なものです」と話す。その一方で「人々が生きていくうえで必要な情報は、ニュース番組で伝えられるものばかりではない。野菜をどうやって冷凍したらいいか、どこで安い野菜や肉を買えるか、老後に備えてどう投資したらいいか、視聴者の皆さんは日々考えています。それら一つ一つの情報の価値は、皆さん一人一人にとって、大きな政治・経済、国際ニュースと変わりません」と情報番組の意義を熱く語った。

「誰かが応援してくれる」つながる大切さ

 武田はNHK時代から災害報道に力を入れてきた。「僕が今までやってきたことを(「DayDay.」の)スタッフの皆さんが受け止め、僕の目を通して伝えていこうと、企画を考えてくれている」と感謝する。東日本大震災の被災地に毎年足を運び、能登半島地震では、発生直後と3か月、半年、1年の節目でロケ取材に赴いた。

 「現地から、ニュース番組ではなく、情報番組で伝える意味があると思います。テレビをご覧になっている皆さんと同じ、普通の方々がたまたま能登で暮らしていて、思いがけない災害に遭い、大きく人生が変わった。テレビを通して、現地で起きていることや被災者の思いを共有し、日本中がつながったらいいなと思います」

 たとえば、東京の人が「いつか能登に遊びに行ってみよう」「東京で能登のものを見つけたら、買ってみよう」と、遠く離れた被災者と心を通わせる。「僕にとってすごい発見でした。今までニュースの中で取材もたくさんしましたが、復興のための課題は何か、政策的な課題は何か、どこに今の社会の矛盾があるか、そんなことばかりを考えていました。もちろんそれも大事なことですが、日本中で災害が頻発するような中で、どうしたら気持ちを強くして臨めるかと考えたとき、やっぱりつながることだなと思いました。『誰かが応援してくれる。それが生きる糧になった』という声を、現地で多く聞きました」

 武田はほかにも、積極的に現場取材に取り組んでいる。今年2月に始まったのが「ニュースの中の人に会いに行く」企画だ。初回は物価高騰を受け、千葉県のキャベツ農家を訪れた。そして今月9日の放送では、埼玉県八潮市の陥没事故に関連して、千葉県柏市の下水道管理の現場からリポート。ヘルメットをかぶって下水道管に入り、保守点検を担う同市職員らの声を伝えた。

 取材は「すごく色々な発見があった」と振り返る。現場で働く人たちに「どんな思いで仕事をしているのか」と問い、「人々の役に立ちたい」との思いを聞いた。「本当にすごいと思います。毎日毎日、暗い下水道管の中で作業して『自分たちは人々の暮らしに欠かせない部分を支えている』というプライドを持っていた。現場に思いをはせることで、すごく大きなパワーになる」。(彼らの仕事を)多くの人に知ってもらうことで、たとえば、食器の汚れをそのまま水で流さず、なるべく拭き取るといった行動につながっていくのではないか、と考える。「僕はもう還暦が近づいていますが、やっぱりアナウンサーですし、現場に出る喜びを感じています」

バラエティーからドラマまで

 NHKからフリーに転じて2年余り。「DayDay.」はもちろん、バラエティー番組に出演したり、ドラマで校長先生役を演じたり、新しい世界への挑戦が続いている。

 「本当に人生、思いがけないことが起きるなということがたくさんありました。(昨年は)福山雅治さんのライブに参加させてもらって1万2000人のお客さんの前で(福山が手がけた番組テーマソングを)ギターで弾くとか、ドラマ(日本テレビ系「放課後カルテ」)に出させていただくとか。ファッションショーのランウェーも歩いたんですよ。アラ還のおじさんがよくこんなことをしているなって思います」と生き生きとした表情を見せる。

 「DayDay.」を通しても、世界が広がっている。「グルメ情報を伝えるには、やはり『食レポ』の技術が必要。エンタメ情報を伝える上では、自分が今伝えているアーティスト、ドラマや映画が好きでないと、やっぱり伝わらないと思う。以前はニュースが仕事でしたから、読む本もそれに関連するものばかりでしたが、今はエンタメや映画も楽しみながら、ライブにもよく行っていますね」と話す。

 「これからも視聴者の皆さんに優しく寄り添っていければ。還暦前の僕が元気で頑張っている姿を見て、皆さんも頑張ろうかなって思っていただければ、うれしいですね」

 大橋邦世チーフプロデューサーは、武田について「当初から優しく真面目な方だということは分かっていましたが、それに加え、ニュース以外にもエンターテイナーとして幅広く興味をお持ちで、時におちゃめで時に羽目を外し、それでいて時に厳しく、番組にとって信頼感と安心感のあるお父さんのような存在です」と評していた。

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