井浦新がNHK『土スタ』に出演。藤原道隆役を語る「家族ができて〈言わなくてもわかるでしょ〉から変わった」

2024年4月20日(土)11時30分 婦人公論.jp


WOWOWドラマ『両刃の斧』に出演する井浦新さん(撮影:本社・奥西義和)

4月20日『土スタ』のゲストは、大河ドラマ『光る君へ』で藤原兼家の長男・道隆役を演じる井浦新さん。権力を握った道隆について弟たちはどう思っているのか。「平清盛」出演時の井浦さんの貴重映像も紹介されるという。WOWOWドラマ『両刃の斧』公開前に意気込みを語ったインタビューを再配信します
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(構成◎丸山あかね 撮影◎本社 奥西義和)

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19歳で芸能界入り、あれから30年近くも経ったのか


———迷宮入りした殺人事件の真相を追う刑事を演じながら、「自分の家族をギュッと抱きしめたいと思っていた」という井浦新さん。9月に48歳を迎え、インスタグラムで発表された永山瑛太さん撮影によるお誕生日会での天真爛漫な笑顔が印象的だった。———

あの日は親しい人達に囲まれて嬉しかったし、ほろ酔い気分だったし、確かに寛いでいたというのはあったんですけど、普段どおりといえば普段どおり。実はいつもあんな感じです(笑)。48歳という年齢については特に……。50歳になったら40代を振り返って何か思うのかもしれませんが、今のところ46も47も48もコレといった変化はなく、淡々とその日その日を暮らしているという感じです。

ただ俳優という仕事を続けて来られたということに対しては感慨深いものがあります。芸能界に入ったのは19歳の時で、あれから30年近くも経ったのかと。

俳優業のかたわら会社を設立


僕はモノづくりに関心があって、学生時代はファッションデザインをしたり、自分のブランドをプロデュースしたいなと考えてました。ありがたいことに夢が叶い、俳優業のかたわら「Valley and Wind」という会社を設立して、今年の9月には「Kruhi(クルヒ)」という自社ブランドから天然由来のヘアケア商品を発表しました。実のところ俳優業のほうは自分が夢を抱いて飛び込んだ世界ではありませんでした。知らない世界を覗いてみたいという好奇心から人に勧められるままにやってみたという感じで。だから最初は右も左もわからず戸惑うばかりでしたが、今は想定外な運命の流れに感謝しています。

俳優を続けてくることができたのは、演じているうちに映像もモノづくりなんだと気づいたからでしょう。僕は今も、役者ではありながら「映像というモノづくり」に参加させてもらっているという感覚で演ってます。作品を観てくださった方から感動したという声が届けば嬉しいし、制作スタッフの一員としてやりがいを感じます。それから仕事を通して監督や共演者といった人達と出会えるのが楽しい。たとえば瑛太くんとは『光』(2017年公開)という映画で共演したのを機に親しくつきあうようになりました。それ以前から素敵なお芝居をする俳優だなと思っていたんですが、一緒に仕事をして信頼できる役者だなと確信したし、今もリスペクトしています。これからも切磋琢磨してやっていきたいと思わせてくれるような、彼は僕にとって非常に刺激的な存在なんです。

こんな男になりたいなという憧れの人もいます。この人がいたから今の自分があるといえる先輩もいて、恩義を忘れず、どこまでもついて行こうと決めています。憧れの人は希望の星ですから、出会えたらラッキーです。

最後に驚愕する真実が待ち受けている力強い作品


———大門剛明さんによる警察小説『両刃の斧』(中公文庫)を原作に制作された同タイトルのWOWOWドラマ(全6話・第1話無料放送)では、柴田恭兵さんとのダブル主演が話題を呼んでいる。———

人生の道しるべとなる人とは簡単に出会えるわけではないのですが、『両刃の斧』という作品が、また一人、憧れの人を増やしてくれました。初共演させていただいた柴田恭兵さんです。役に向き合う姿勢や表現力はもちろんのこと、ユーモアを交えた会話で場を和ませようとする恭兵さんの人柄とか、上品な物の考え方など、人として生きるうえで大切なことをたくさん学ばせていただきました。


WOWOWドラマ『両刃の斧』劇中シーン。柴崎(左・柴田さん)と川澄(井浦さん)〈写真提供◎WOWOW 以下同〉

お話をいただいた時はビックリしました。こんなチャンスを逃す手はないと一も二もなくオファーを受けましたが、その後に原作を読んで顔面蒼白に。これは俳優が大変な目に遇うぞと。最初は小説にのめり込んでいたんです。謎が謎を呼び、状況が二転三転して、最後の最後に「そうだったのか!」と驚愕する真実が待ち受けているという力強い作品で、凄い凄いって。でもそれだけに人間模様が複雑で、僕が演じる川澄の心情も大きく揺れ動く。正直、こんな難しい役をこなせるだろうか? と、不安になったりして。役者としての資質が問われる大きな挑戦になるなと察して尻込みしつつ、その一方で、「やりがいのある挑戦だから、かくなる上は全力で演じよう」と心に火がついたのを覚えています。


「役者としての資質が問われる大きな挑戦になるなと察した」と語る井浦さん(撮影:本社・奥西義和)

「今」という時を大切にしたいと考えるように


———『両刃の斧』は、15年前に長女を何者かに殺害された元刑事・柴崎佐千夫(柴田恭兵)と、事件当時は柴崎を慕う後輩であり、現在は所轄刑事の川澄成克(井浦新)が、迷宮入りした殺人事件の真相を巡り対峙するサスペンスドラマ。15年の時を経て、未解決事件再捜査を専門に行う「専従捜査班」が立ち上がったことにより、犯人と目される男が浮かび上がる。しかし一本の電話をきっかけに柴崎(柴田恭兵)に「ある容疑」がかけられ……。全体的に重厚なトーンのドラマなだけに、冒頭の何気ないシーンが印象的。川澄(井浦新)が妻の多映子(高岡早紀)と娘の日葵(奈緒・子役は宝辺花帆美)を連れて、柴崎の家へ遊びに行き、柴崎の妻である三輪子(風吹ジュン)や生前の長女・曜子(見上愛)、次女・和可菜(長澤樹)と共に楽しく過ごすというシーンだ。———

とても重要なシーンだと思います。撮影に入る前に出演者が集まって打ち合わせをしたのですが、風吹さんが「笑顔があるのはここだけだから、思いっきり楽しくやりましょうね」と。その前提として、この作品は警察もので、事件が起こるサスペンスではあるけれど、同時に家族の愛の物語でもあります。出演者の誰もが、この作品の主軸は、夫婦が互いにいたわり合う愛や、親が子どもを守る愛なのだという認識を共有していたんです。


刑事である夫を支える妻・多映子(右・高岡早紀)

柴崎について、こんなに悲しい人生があるのかと驚愕し、ありえないと感じる人がいるかもしれません。でもあるかもしれない、決して他人事ではないと思えてくるのがこの作品の凄いところなんです。ネタバレになってしまうので、これ以上は話せませんが、僕はこのドラマを通して、何気ない日常がどんなにかけがえのないものかを思い知らされた気がします。どんな時間もたちまち過去になっていく。二度と来ない「今」という時を大切にしたいと考えるようになりました。


WOWOWドラマ『両刃の斧』メインビジュアル

素晴らしい共演者の方々に恵まれ高まったモチベーション


———川澄は柴崎の長女を殺害した犯人を捕えたいと執念を燃やしますが、ある時点から決して開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったのではないかという恐れを抱き始めます。刑事としての使命感と、人としての情感のはざまで揺れる複雑な心境を表現するために、どのような役作りをしたのだろうか?———

正義感が強く熱い男ではあるのだけれど、やることなすこと上手くいかなかったり、本当は優しいのだけれど、シャイで天邪鬼で、家族にさえ本心を明かすことのできなかったり。そんな不器用なキャラクターを押し広げたいと考えました。

とはいえ、家族ぐるみでつきあっていた柴崎の娘の殺害現場を目の当たりにした時に、あるいは人生の師とあおぐ柴崎のはかりしれない心の闇に直面した時に、川澄がどれほどの衝撃を受け、何を思い、どんな表情をして、どんなしぐさをするのか。この状況下でこのセリフをどんなニュアンスで言えばいいのだろうと、頭では理解できても、感情が追いつかず困惑することが度々ありました。そうした時には共演者に支えていただいたというか……。たとえば恭兵さんの迫真の演技を受けて、自分の中に自然と湧き上がる感情に突き動かされるようにして演じました。一人ではとても乗り切ることはできなかったと思います。素晴らしい共演者の方々に恵まれ、もっともっと頑張ろうとモチベーションを高めることもできました。

家族の存在が原動力になっている


———テレビ番組で奥さんが井浦さんについて「あの人は、やさしさのかたまりです」とコメントするほど、家庭的な部分も知られている井浦さん。家族愛が主軸になっているという本作に出演したことで、自身も父として、作品を通じて改めて家族について考えたこともあるという。———

子どもの命が奪われてしまったら、自分はどう受け止めるのだろうとか、自分はどうなってしまうのだろうとか、いろいろなことを考えさせられました。なんかこう、家族をギュッと抱きしめたいような気持になったりして。

僕は家族を持って随分と変わったと思います。以前は誰に対しても「言わなくてもわかるでしょ」って感じだったんです。当然、誤解されたり、なにも伝わっていなかったりして落胆するわけで、そうした失敗を繰り返す中で少しずつ自己改善していき、今は自分の気持ちはきちんと言葉にして伝えるようになりました。

「家族なんだから察してくれよと」いうのは自分勝手な発想だと子どもたちにも伝えています。だから我が家では、いいことも、悪いことも伝えあっていると思うのですが、それでも自分以外の人のことを100パーセント理解することなんかできませんよね。自分が子供の立場だったらどうかな? という想像力も必要、忍耐も必要。お互い様だとはいえ、なかなかに大変で、思わず感情的になることもあります。でもそこは家族だから。僕にとって家族がいるという安心感は絶大。家族の存在が原動力になっているのを感じます。

僕が辿った「言わなくてもわかるでしょ」から「言わなくちゃ伝わらない」へと移り変わった心の経緯が、川澄という無骨の男の変化と重なるんです。家族のありがたさが膨らんでいき、次第に心がほころんでいく感じが…。その辺りに共感してくださる方が多いような気もするのですが、どうなんでしょう? いずれにしても、ドラマを観てくださった方が、難度の高い謎解きを楽しみながら、家族の大切さを再確認し、見終えたあとに家族をギュッと抱きしめたくなるような気持ちになっていただけたら嬉しいです。

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