林遣都さんが『情熱大陸』に登場。役を引きずりながら…私生活での素顔とは?「山本耕史さんのような大人に」

2024年4月21日(日)18時30分 婦人公論.jp


(撮影◎本社 奥西義和)

4月21日の『情熱大陸』は林遣都さん。林さんの名を一躍世間に広めた大人気ドラマ『おっさんずラブ』シリーズ最新作からおよそ半年間、CM撮影の現場やプライベートにも密着取材したスタッフが目にした異様な光景とは。林さんが仕事観と私生活について語ったインタビュー記事を再配信します。
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繊細な役から狂気を秘めた役まで、数々の映画やドラマで幅広い役柄を見事に演じ分けている林遣都さん。TBS日曜劇場『VIVANT』では、主人公の父親役を演じて話題に。10月8日から東京・明治座を皮切りに各地で公演が行われる舞台、音楽劇『浅草キッド』では、浅草のフランス座で下積み時代を過ごしていた若き日のビートたけしこと北野武さん役を演ずる。この作品は、名曲「浅草キッド」を始めとする数々のオリジナル楽曲やタップダンスも盛り込んだ音楽劇。林さんにとって新たな挑戦となる1作だ。この舞台に懸ける林さんの思い、そして、俳優として、1人の男性として、この先、目指している生き方について伺った。(構成◎内山靖子 撮影◎本社 奥西義和)

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自分なりの武さんを演じたい


今回の舞台『浅草キッド』のお話をいただいたのは2年ほど前のことです。原作の自伝小説を武さんが書かれたのは知っていましたが、どういう内容の舞台になるのか、いざフタを開けたら、僕が武さんの役で。そして音楽劇でした。あまりにもビックリして、この話はいったんちょっと置いておこうと。(笑)

なにせ、“世界の北野”ですから。実在のモデルがいる役はこれまでに何度も演じてきましたが、武さんのように日本中の誰もが知っている方を演じるのは初めてです。やるとなったら、相当覚悟を決めなきゃいけないという思いが自分の中にあったので、稽古に入る直前まで、その緊張感をしまっておいたという感じです。

とはいえ、実際に稽古に入っても、武さんに近づこうという意識はあまりありません。そもそも、近づこうとしても、ちょっとやそっとで近づける人ではないので。

お話をいただいた後に、1度だけ武さんとお会いする機会がありましたが、知らないことがひとつもないんじゃないかというくらい博識で。どんな話題を振られても、それをネタに瞬時にトークが始まるんです。しかも、ネガティブで暗い話題でも、必ず笑いやユーモアをプラスして語られる。人間が持つ「ネガティブ」や「マイナス」の部分を笑いに変えて表現され続けてきたところが、武さんのすごさだと思います。

それだけすごい方にも関わらず、僕自身が共感できる部分もたくさんあるんです。役作りのために武さんに関する書籍をいくつか読んでみたところ、とてもシャイで繊細な方なのかなと感じました。武さんも、若い頃は自分の感覚に悩んだり、人の目が気になったりして、生きることに息苦しさを感じていたことも多かったとか。僕も人づきあいがあまり得意なほうではないですし、ものすごく悩みやすい性格なので、そんな自分の性格が若き日の武さんと重なっているような気がします。

でも、武さんはネガティブな部分があるからこそ人の気持ちがわかったり、マイナスな部分がある人間にしかできない表現があるとおっしゃっていて。その言葉にすごく勇気をいただいたので、そんな武さんの本質的な部分を自分の中に落とし込み、僕なりの人物像をつくっていけたらと思っています。

歌とタップを猛練習


今回の『浅草キッド』は脚本と演出を、かねてから「この方のお芝居に出たい」と憧れていた福原充則さんが手掛けてくださっているのもたまりません。何年か前に、葛西臨海公園で上演されていた福原さんが手がける野外劇を観たときに、「なんて面白いんだ!」と雷に打たれたような衝撃を受けたんです。

今回の稽古場でも、新しいアイディアが福原さんから次々と生まれてくるので、毎日、ワクワクしています。僕たち役者に対しても、「脚本を読んで感じたことを、そのまま自由に表現してください」と、ひとりひとりの役者が起こすアクションを心から楽しんでくださっています。福原さんの稽古場は風通しがよくて、すごく居心地がいいんですよ。

その福原さんの意向で、今回は音楽劇という形になりました。当然のことながら、僕も歌いますし、タップを踏むシーンもあります。歌に関しては、どこまで完成度の高いものを披露できるのか、正直な話、不安もあります。

でも、若き日の武さんも、武さんのその後の人生を決定づけた師匠の深見千三郎さんもシャイな人だから、歌でそれぞれの本音を表現するために音楽劇にしたのだと。そのお話を聞いたとき、ちょっぴり肩の荷が下りたと言いますか。歌だからといって必要以上に気負わずに、お芝居と同じ気持ちで向き合っていきたいです。

もちろん、だからと言って、お客様に中途半端な歌をお聴かせするわけにはいきません。今回のオリジナル曲をつくってくださった益田トッシュさんの奥様の益田トッポさんが、僕の肉体を根本から改造するような歌唱指導をしてくださっているので、教えていただいたことを舞台の上で最大限に発揮していくつもりです。

タップダンスも、舞台ですからやり直しは効きません。自分でステップを踏んできちんと音を出さなきゃいけないというプレッシャーもありますが、タップ界の巨匠であるRONxII(ロンロン)さんに特訓していただきながら、精一杯頑張りたいです。福原さんの脚本はもちろんのこと、トッシュさんの曲も、RONxIIさん振り付けのタップダンスもとにかく素晴らしいんですよ。「このお芝居、面白いに決まっているじゃん!」と確信が持てるので、それが僕自身のプレッシャーをかき消してくれているのだと思います。

人の話を聞けるカッコイイ大人に


師匠の深見千三郎役を演じる山本耕史さんは、お会いした瞬間に「カッコイイ!」と感じるような方です。誰に対してもオープンで、見栄を張ったり、カッコをつけることがいっさいない。

周囲に対する気配りも本当にスマートで、こういう方が「素敵な大人の男性」なんだなと思います。本読みが始まる直前まで、ご自分の役について突き詰めて考えていらっしゃる姿勢をみて、この期間で山本さんから様々なことを学びたいと思いました。

僕も30代になったので、山本さんのように決して偉ぶらない大人になるのが理想です。いつどんな相手に対しても優しく接することが出来る人。たとえ自分の考えと違っても、他人の価値観を簡単に否定しない。年齢を重ねるにつれ、そんな器の大きい人がカッコいいと思うようになりました。

というのも、あまり言いたくはないんですけど(笑)、20代の頃の僕は他人と自分を比べてしまうことがめちゃくちゃあって。同世代の俳優さんに対するライバル心が強かったんです。確かに、それが原動力になっていたところもありますが、人と自分を比べることに常に悩まされていました。

役者仲間と飲みに行き、お互いの演劇論をぶつけあってケンカをすることもありました。お酒の場だと、普段言えないような思いを吐き出せると言いますか。でも、後で考えると、「ああ、言わなきゃよかった」と後悔することのほうが多くて…。

でも決して無駄な時間ではなかったと思うので、20代の頃に、そんな生活を散々やり尽くしたおかげもあり、30代になったタイミングで生活や考え方を改められるようになったと思います。今の僕は、役者としても、一人の人間としても、人の話を柔軟に聞ける大人でありたいと心がけるようにしています。

家族と過ごす時間に救われる


30代になってからは、夜、お酒を飲みに出かけることもほとんどなくなりました。役者はやっぱり体が資本ですから、基本的には早寝早起きで健康的なライフスタイルが大事ですよね。とはいえ、これといって何か特別なことをしているわけではありません。時間のあるときにランニングをしたり、体が重いなと感じたら、汗をかいて運動したりする程度です。

実は、もともと無趣味で、オンとオフの切り替えがめちゃくちゃ下手なタイプなんですよ。独身時代は、家にいても仕事のことが頭からずっと離れなくて。それが、家庭を持って、家族と過ごす時間が生まれたおかげで、ずいぶん救われるようになりました。それでも、ぜんぜんオフれてないことも多いんですけどね。(笑)


もともと無趣味で、オンとオフの切り替えがめちゃくちゃ下手なタイプなんです

子どもができたことも大きいです。子どもという存在が、いい意味で、僕の堅苦しい考え方をほぐしてくれると言いますか。悩みやすい性格は相変わらずですけど、いったん自分のことはまあいいかっと。誰かのために生きようと思えたことで、今まで気にしていたことが気にならなくなりました。それまでわからなかった感情も実感できるようになりました。子どもが生まれた直後に、ドラマで父親役をやらせていただいたときも、それまでとは感情の込め方がぜんぜん違いました。

もちろん、生活が大きく変わったことで、仕事のギアが入りにくくなったと悩んだときもありました。自分自身に費やす時間が減った分、それまでと比べてお芝居に影響が出てないかなと。

でも、先日、たまたま吉田鋼太郎さんにお会いしたときにその話をしたら、「役者が家庭を持ったら、誰でもそう感じることがある。でも、間違いなく大切な経験をしている時期だから、マイナスにはならないよ」とおっしゃってくださって。その言葉を聞いて、気持ちがちょっとラクになりました。

父親としても、役者としてもまだまだこれからですが、この先、40代、50代と年齢を重ねていく上で、僕が理想としているのは「求められる人」。仕事の上でも、1人の人間としても、常に求められ続ける存在でいるために、ここからさらに頑張って、自分を磨いていきたいと思っています。

婦人公論.jp

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