テレ朝は入社式前、日テレ・フジも4月に登場 “新人アナ早期デビュー”が相次ぐ5つの背景

2024年4月24日(水)11時0分 マイナビニュース

●かつては7月や秋の改編期が多かった
20日夜、今春フジテレビに入社した新人アナウンサーが『FNS明石家さんまの推しアナGP』に出演。上垣皓太朗、梶谷直史、高崎春、宮本真綾の計4人が地上波デビューを飾った。振り返ると、昨春も原田葵と東中健が入社2か月半で当時最速のデビューを飾っていたが、番組や出演内容の違いこそあれ、時期が早まっているのは間違いないだろう。
テレビ朝日の新人は、すでに生放送の報道・情報番組で活躍中。入社式前の4月1日、『グッド!モーニング』で三山賀子、『羽鳥慎一モーニングショー』で松岡朱里がデビューを飾った。
また、日本テレビでは3日放送の『1億人の大質問!?笑ってコラえて! 2時間SP』に瀧口麻衣、並木雲楓、水越毅郎が出演。顔見せのみで終わらせず、同番組の企画で3人に1年間密着することが明かされた。
かつて新人アナウンサーの地上波デビューは、秋の改編期、あるいは入社3か月の7月あたりが多かったが、なぜ早まっているのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
○即戦力に近い人材が豊富になった
もともと新人アナの早期起用は、「若さ頼り」「下手」などの批判を招きやすいリスクのある人事。さらに、各媒体で毎年恒例の「好きなアナウンサーランキング」は、約8割が30代以上の中堅・ベテランが占めるなど、若手にとって世間の追い風が吹いている状態とは言えない。
では、なぜ局を越えて早期起用が続いているのか。その理由は主に5つ考えられる。
1つ目の理由は、番組にフレッシュな風を吹かせられること。毎日放送される報道・情報番組は視聴者にマンネリを感じられやすいだけに、新人の起用はそれだけで視聴者の注目を引きつけ、印象を変えられる。また、初々しい姿を見せるだけでなく、そこから「徐々に成長していく姿を見て愛着を持ってもらいたい」という意図もあるという。かつてはこれが最大の理由だったが、近年は数多くある理由の1つにすぎない。
2つ目の理由は、即戦力に近い人材を採用できるようになったこと。「各局運営のアナウンススクールに通っていた」というだけでなく、学生キャスターやタレントとしての経験を持つ撮影現場に慣れた大学生が増え、早期起用を後押ししている。逆に本気でアナウンサーになりたい大学生は、それを理解した上でアナウンススクールに通い、芸能事務所への所属を目指すことが定番になった。
3つ目の理由は、新人アナの話題性とSNSの更新。特にネットメディアは「新人」というだけで記事化する傾向があり、起用すれば番組への注目度を高められる。また、アナウンサーのSNS更新やYouTube出演が普通のことになり、番組に出なくてもPRの面で戦力としての期待は大きい。
●コロナ前から新人早期起用の流れ
4つ目の理由は、「制作費を抑えたい」という制作サイドの事情。制作費の削減に悩まされる現場サイドにとって、話題性がありコストが抑えられる新人育成の重要度が増している。逆に「よほどの視聴率アップが期待できなければ、フリーアナやタレントの起用は難しくなっている」という。
5つ目の理由は、1人でも多くの人気アナウンサーが必要だから。元テレ東・森香澄のように20代であっさり退職するアナウンサーも決して珍しくなくなった。さらに、若手に限らず「アナウンサーも長いキャリアの一部分」と考え、タレント、俳優、ジャーナリスト、あるいは一般企業への転職や起業する人もいる。
また、働き方改革の影響に加えてコロナ禍を経たことで、報道・情報番組が「曜日でMCを分担する」などのリスク管理をするようになったことも、より多くの人気アナウンサーが必要になった理由の1つだろう。
かつて女性アナウンサーの人気者は、その大半が20代だった。しかし近年は若手のスターを育てるのが難しくなっているからか、「少しでも早い段階から起用し、認知・育成を進めていこう」という姿勢が見える。
「新人の早期起用」は今春に限った話ではなく、2018年から19年にかけてその流れがあった。
まず18年に、日テレが『行列のできる法律相談所』に市來玲奈、『世界まる見え!テレビ特捜部』に岩田絵里奈、テレ朝が『ミュージックステーション』に並木万里菜を抜てき。続く19年にも、テレ朝が『羽鳥慎一モーニングショー』に斎藤ちはる、TBSが新番組『グッとラック!』に若林有子、テレ東が『モヤモヤさまぁ〜ず2』に田中瞳、『THEカラオケ★バトル』に森香澄を抜てきしていた。
そのほとんどが人気番組だけに、番組ファンからの拒否反応が危惧されたものの、大きな混乱はなし。むしろ歓迎の声が多かったことで、20年代に入ってもその傾向は続いているのではないか。
○「新人」が通用するのは数か月程度
前述したように新人アナの早期起用は、ミスのリスクや視聴者の批判と背中合わせの人事であり、先輩アナウンサーだけでなく、現場スタッフの手厚いフォローが求められる。
最初の試練は、わずか数か月で鮮度が薄れ、「新人アナだから」という温かい目で見てもらえなくなってしまうこと。その間、いかに技術を上げ、人柄に親しみを持ってもらえるか。個人の力では限界があるだけに、多くの人々が関わりながら育成していく中期的な姿勢が問われている。
最後に、話を冒頭に挙げた『FNS明石家さんまの推しアナGP』に戻すと、“推しアナグランプリ”に選ばれたのは、何と新人の上垣皓太朗だった。これといったトークはなかったものの、その新人らしからぬ佇まいで「ベテラン」「管理職」「局長」などとイジられていたが、この生かし方も想定済みの採用だったのではないか。
それにしても同番組は笑いの密度が濃く、MCのさんまも多彩なキャラとトークを楽しんでいるような姿を見せていた。先輩アナウンサーたちのトーク力と存在感は若手・中堅の芸人に負けないレベルだっただけに、新人たちにとっては参考になっただろう。
民放のアナウンサーは、「新人時代は注目を浴びて、期待を一身に背負っていたが、数年後に他部署への異動する人もいる」というシビアな世界。抜てきされた彼らがどんな奮闘を見せ、生き残っていくのか。そんな人生ドラマや職業ノンフィクションのようなところも、彼らに引きつけられる理由の1つかもしれない。
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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