加賀まりこ×内田有紀「しがみつく過去はないが80の壁は手怖い。17歳のあなたに〈あ、この子、合うわ〉って思った」

2024年4月26日(金)12時30分 婦人公論.jp


プライベートでの親交も深いという、加賀まりこさん(右)と内田有紀さん(左)(撮影:浅井佳代子)

〈発売中の『婦人公論』5月号から記事を先出し!〉
プライベートでの親交も深い加賀まりこさんと内田有紀さん。ともに女優として活躍しながらも、この仕事をやめようと思ったこともあると言います。自分の人生を決めるうえで、ふたりが大切にしていることとは(撮影=浅井佳代子 構成=小西恵美子)

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当たり前の日常に感謝して


加賀 この前、目の激痛で飛び起きて、びっくり。朝になったら目覚めるという、当たり前の毎日が続くわけじゃないって、初めて知ったわよ。私、目が潰れたと思った。

内田 80歳まで何もなかったことがすごい。

加賀 知らずに幸せでした。

内田 そんなつらい時に、「昨日は驚かせてごめんなさい。今朝は痛みもなく、目を覚まし、当たり前に感謝しました。メールも打てる。新聞も少し読める。昨日が衝撃的だったから、日常がありがたいです!」とメッセージをくださって。治ってよかったです。

加賀 面白いなと思って。50歳の壁、60歳の壁、70歳の壁はひょいひょい越えてきたけど、80歳の壁は手ごわい。これから腰痛とか、未知との遭遇なんだろうね。まあ、明日のことに興味があるうちは元気よね。88歳まで生きたとして、あと8年。おいしいもの食べたいのが一番。あとはピンピンコロリ。(笑)

内田 死ぬ直前まで元気でいたいですよね。

加賀 それが理想。山本陽子さんは、亡くなる前日に芦田淳さんのブティックにいらしてたって。お洋服買う元気があったのよ。しかも熱海から代官山に。亡くなった日も出かけてて。最高。私にはすがりつく子どもも孫もいないわけだから、人様の手を煩わせず、迷惑かけないで過ごしたい。

内田 まりこさんの名言「1分1秒、過去のこと」。だから、いつも風のように生きている。

加賀 私には、しがみつく過去はない。(笑)

内田 私も、全然ない。(笑)

加賀 作品もそう。人様が褒めてくれても、自分の出た作品は映画館で1回観たらそれっきり。

内田 潔い。(笑)

加賀 媚びない、群れない、含羞を知ってる女たち。(笑)

内田 いいですね。まりこさんは、昨日今日、でき上がったわけではありませんから。

加賀 生まれた時から(笑)。人に頼らない、臆さない。なぜこんなになったかと思って、母に聞いたのね。戦時中だったから、私が生まれてすぐ疎開することになって。母が13歳の姉に、駅で「切符を買うから赤ちゃんと荷物を守ってね」って頼んだの。

姉は本を読むのに夢中で、荷物を丸ごと盗まれた。おむつも入ってたのよ。お陰さまで、私はすごく早くおむつが取れて。その時から自立してた。(笑)

内田 お陰さまですか。さすが。

加賀 ミルクもなくて、お米の研ぎ汁飲んでたんだって。子どもの頃、母も姉も私に興味ないから、かまってもらった記憶がない。いつもひとりで遊んでた。

内田 だからひとりで考えて何でもできちゃうんですね。女優さんがちやほやされて至れり尽くせりだった時代でも、一匹狼のように生きてて。

加賀 可愛げないよね(笑)、ひとりで完結するのも。よくパートナーに言われる。

内田 女の人からすれば憧れです。私はまりこさんが出演した映画『乾いた花』や『月曜日のユカ』などを子どもの頃に観て、かっこいい女優さんだなと思っていました。

出会いで生き方が変わる


加賀 17歳のあなたとテレビ番組で「初めまして」って会った瞬間に、「あ、この子、合うわ」って思った。

内田 まりこさんと接する時は母親のような感じもして、最初から懐に飛び込めました。私がお芝居の仕方がわからないって聞いたのが初めでしたよね。

加賀 その日から今日まで、長く会わない時期もあったけど、たまに会っても言葉が通じる。有紀ちゃんが打ちひしがれている時もあったね。

内田 ありました。

加賀 それはそれで叩き直す素材だったし。強いことを言っても覚悟ができる人だから、ついてこられると思ってたよ。

内田 10代から今までずっと見て、そばにいてくださって。まりこさんは噓をつかないし、端的に的確に、ズバッと私の心に刺さる言葉をくださるから、目が覚めます。大先輩なのに常に同じ目線で見てくれて、本当にありがたいです。

加賀 それは当たり前だよ。

内田 今までがあるから、今があるんじゃないかと思って。

加賀 いいこと言う、そう(笑)。有紀ちゃんと天海祐希さんがドラマで共演する時に、天海さんに「しっかり鍛えてね」って言ったの。彼女がいれば、私が死んでも安心。あなたは頼りない時があるからね。(笑)

内田 私は流されやすいから。それ以来、3人でお食事に行ったり、交流させてもらって。

加賀 今はパートナーがいるから安心してるけど、女友達は大事よ、すがれるから。

内田 はい。男性とは別ですね。


「まりこさんは噓をつかないし、端的に的確に、ズバッと私の心に刺さる言葉をくださるから、目が覚めます」(内田さん)

加賀 私、じめじめと愚痴ばっかり言ってる人、苦手。接し方がわからなくて疲れちゃう。相手のテンションを上げようとすると、方向がずれてしまうし。

内田 女同士でも肌が合うかどうか、ありますよね。

加賀 ある。共演した若い女優さん、私とに話そうとしない人が多いの。だからその人がわからないまま終わってしまう。

内田 何でもズバズバ言うから、怖いんですよ。(笑)

加賀 よく知りもしないのにって思う。私は言葉が早いし荒い。人によってはびっくりしちゃうのかな。この前、私が電話してるのをそばで聞いていたパートナーが、謝れと。「今のあなたの言い方に彼女はすごく傷ついてるはずだから」って言うの。で、電話して「ごめんね」って。

内田 そういう素直なところも好き!

加賀 そう思ったら、即行動。

内田 まりこさんは他人に迷惑かけたくない方だから、今はこのくらいの距離感でいたいんだろうな、とか思います。

加賀 距離感は大事ね。

内田 深入りしすぎると傷つけ合っちゃう。

加賀 土足で入ってくる人、いるからね。そういう人に会うのもひとつの勉強ではあるの。

内田 何でも面白がっちゃいますね。

これからは健康第一で


加賀 タバコはやめた、完璧に。

内田 いつですか?

加賀 今年。まだ日は浅いけど、やっとやめられたね。今は全然吸いたいと思わない。この前、心臓のカテーテル検査をしたのね。検査中、宇宙空間にいるみたいで面白いと思ってたら、自分の心臓の映像が目に飛び込んできた。か細い血管が映ってるの。

それを見てタバコはやめようと思ったね。医者には、血管が弱っているけどステントを入れるほどではないと言われた。

内田 よかった。大事にしてくださいね。

加賀 年齢にしてはいいほうだって。8割方、働いているらしい。血管は体のすみずみの組織まで酸素や栄養を届けて、二酸化炭素や老廃物を回収するから、大事だって初めて思った。血管サマサマだよ。

内田 私、身近な人が体調を崩した時に発見があったんですよ。その人は自分のこれまでのやりように問題があったと気づいて、考え方や周りとの接し方を変えたら健康になってきた。それを見て、こんなに変われるって教えられました。考え方は誰かのせいじゃない、全部自分。自分が変われば周りも変わるって実感したんです。

加賀 そのとおり!

内田 時間がかかりました。

加賀 自分が悪いって気がついたのは、すごいことよ。あなたが20代の頃、ピチピチ潑剌としてるのに、精神的には傷ついて倒れそうだったよね。揺れている小さな葉っぱのようで。

内田 その時、「会おうよ」って、まりこさんはとにかくそばにいてくれました。

加賀 気になっちゃうタチなの。

内田 ありがたいです。

<後編につづく>

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