麗しすぎる “アジアの貴公子”チ・チャンウクの次なるステップは?
2018年5月1日(火)19時35分 シネマカフェ
そんな中、いまや韓国のみならず“アジアの貴公子”とも呼ばれるチ・チャンウクは、初挑戦したラブコメ「あやしいパートナー」でかつてないほど真剣に恋するピュアな男の姿や、お茶目でユーモラスな姿を見せ、話題を呼んでいる。2017年夏に入隊した際には、日本はもとより世界中のファンが見送りに殺到したチ・チャンウク。これまでの出演作とともに、その軌跡をふり返ってみた。
■初のラブコメ「あやしいパートナー」で新境地
2作のドラマ「ヒーラー〜最高の恋人〜」(2014)や「THE K2〜キミだけを守りたい〜」(2016)、初主演映画『操作された都市』(2017)でアクションを華麗にやってのけるイケメン実力派というイメージが定着しつつあったチ・チャンウク。
しかし、彼が入隊前最後の主演作として選んだのは、俳優人生で初めてとなるラブコメドラマ「あやしいパートナー」。演じたのは、“悪縁”ともいえる偶然の出会いを繰り返す女性ウン・ボンヒに翻弄されながらも、いつしか恋に落ちていくクールな完璧男子の検事ノ・ジウク。法廷を舞台に、自身の幼少期に関わる事件の真相を追うミステリーの要素も交えつつ、ときにツンデレ、ときにド直球な言動を見せる姿が実に新鮮。キュートすぎる丸メガネ姿も反則ワザだ。愛嬌たっぷりのヒロイン・ボンヒ役のナム・ジヒョンの好演もあり、注目度が急上昇中。
■「視聴率王子」と呼ばれ、スター俳優の仲間入り!
1987年7月5日生まれの現在30歳。その正統派イケメンな甘いマスクと、カリスマ性たっぷりの演技からコミカル演技までこなす多才さ、182cmのモデルのような体格から繰り出されるキレキレアクション。そんなチャンウクは、まさに“貴公子”という言葉がぴったりくる。
2008年、独立系映画『スリーピング・ビューティー』でデビュー。まず、世間的に知られるようになったのが、日本ではWOWOWなどで放送された国民的ホームコメディ「ソル薬局の息子たち」(2009)。“結婚できない”ソル薬局の4人の息子のうち、兄たちとひと回り以上も年の離れた末っ子の四男ソン・ミプンを演じた。
ミプンは浪人生ながら、趣味は手芸や料理、兵役に行く親友ヨンチョルからまだ赤ちゃんの娘ハナを託されてしまうというキャラクター。韓国では放送されるたびに話題を呼び、最高視聴率48.6%を記録、イ・ミンホら韓国版「花より男子」の“F4”に対抗して(?)4人の息子たちは“S4”と呼ばれて人気となった。
翌年の「笑ってトンへ」ではドラマ初主演に抜擢。チャンウクはアメリカ育ちのショートトラックの選手トンへを演じ、自らの境遇をものともせず、明るく前向きで爽やかなキャラクターがハマリ役に。ドラマは幅広い世代から人気を集め、瞬間最高視聴率51%超えを記録、2011年上半期視聴率No.1ドラマとなった。
「宮廷女官チャングムの誓い」や「イ・サン」など数々の大ヒット作を生み出してきた時代劇にも、2011年に「ペク・ドンス」で初挑戦。朝鮮王朝時代の王イ・サンに護衛として仕えた実在の武人を元にした主人公で、華麗な剣術アクションを披露。王の命を狙う暗殺集団の刺客を演じた、かつての“国民の弟”ユ・スンホ(「善徳女王」「太王四神記」)との対決も話題を呼び、チャンウクは「視聴率王子」とも評されるようになっていく。
そのほか、「超新星」ジヒョクや「CROSS GENE」のSHINことシン・ウォンホなど、次世代イケメン俳優が集結した「僕らのイケメン青果店」でも熱血青年役で主演。
2012年の「蒼のピアニスト」では、これまでの明るく親しみのある役柄から一転、初の悪役に挑んだ。名家の血縁関係に端を発するドロドロ愛憎劇で、楽器メーカーの御曹司のピアニストだが、チュ・ジフン(除隊後復帰作)演じる異母兄の主人公に激しく嫉妬し、劣等感を抱える弟イナ役を演じてみせ、美しすぎるピアニスト兄弟とも言われた。
■ファン増殖中!重厚な時代劇からサスペンスアクションまで
続く「奇皇后−ふたつの愛 涙の誓い−」(2013)は、実在した“奇皇后”の激動の人生を大胆に脚色した一大スペクタル史劇で、NHK BSプレミアムでも放送されて高視聴率を獲得、チャンウクの大ブレイクを確実なものにした1作だ。
高麗に生まれた女性ヤン(ハ・ジウォン)が自身を守るため男性スンニャンとして生きるも、高麗王のワン・ユ(チュ・ジンモ)と大国・元の皇太子タファンと出会い、単なる三角関係では済まない大きな時代のうねりに巻き込まれていき、やがては元の皇后となっていく。タファン役を演じたチャンウクは、コミカルな演技でわがままな甘えんぼ皇太子に扮していたが、やがて権力闘争に翻弄されながら皇帝となり、皇后となるヤンを愛し抜くキャラクターで大きな注目を集めた。ときには臆面もなく弱さと脆さを見せる姿は、1つの新境地でもあった。
もう1つチャンウクの代表作といえるのが、闇の便利屋に扮した「ヒーラー〜最高の恋人〜」だ。放送局のスター記者キム・ムンホ(ユ・ジテ)が依頼した案件をきっかけに出会ったWEB新聞「サムデー」の熱血記者チェ・ヨンシン(パク・ミニョン)に、知らず知らず惹かれていくソ・ジョンフを好演した。現在と過去が交錯する重層的なストーリーにおいて、逆三角形のスタイルから繰り出されるアクションのみならず、便利屋らしい変装ぶりやインターン記者・ボンスに扮した際のギャップ、さらに正体を明かすことのできない“ヒーラー”であるため、ヨンシンとの帽子“目隠しキス”や背中合わせで手をつなぐ“秘密の映画館デート”など、甘くロマンチックすぎるラブシーンも話題に。
さらに、「THE K2 〜キミだけを守りたい〜」では「少女時代」ユナと共演。ある出来事をきっかけに、次期大統領候補の大物議員チャン・セジュンの妻にして、大企業JBグループの長女でもあるチェ・ユジン(ソン・ユナ)のボディーガードを務めることになる傭兵出身“K2”ことキム・ジェハ役で、さらにパワーアップした華麗なアクションに挑戦した。「少女時代」のユナもセジュンの隠し子である娘アンナを熱演し、クセ者の冷血キャラ・ユジンの策略の中で、アンナを懸命に守るジェハの姿にもキュンとさせられた。
■『君の名は。』の声優から意外なカメオ出演も!?
その一方、ミュージカル界でも、2013年に韓国「ザ・ミュージカル・アワード」で新人男優賞を受賞するなど活躍を見せていく。2016年には中国のドラマに出演し、アジアでの知名度をいっそう確固たるものにした。なお、『君の名は。』が韓国公開された際には初日興行収入&動員数で第1位となる大ヒットとなったが、韓国版で主人公・瀧の声を務めていたのもチャンウクだ。
日本では、今年1月に初主演映画『操作された都市』も公開された(7月4日ブルーレイ&DVDリリース)。空白の3分16秒の間に何者かによって殺人犯に仕立て上げられてしまうフリーターのゲーマー役で、パク・クァンヒョン監督(『トンマッコルへようこそ』)やアクション監督チェ・ボンロク(『アシュラ』)からも絶賛される超絶アクションにより、韓国映画ファンの間にも強い印象を残している。
映画といえば、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で妊娠中の妻を守るため、素手でゾンビたちに立ち向かっていく男を演じて日本でも人気者となったマ・ドンソク出演『ブラザー』(2017/Netflix配信中)では、まさかのドンソクの父親役(!)でカメオ出演を果たしているという。同作は本国で『マイティ・ソー バトルロイヤル』とランキング争いをしたヒットコメディで、何でも、監督チャン・ユジョンとミュージカルでタッグを組んだ縁があるためとか。
こうして俳優として着実に実力を重ねてきたことへの評価はもちろん、いまの不在の間にも多くのファンを虜にしているチ・チャンウク。イケメン俳優、次世代アクション俳優などといわれてきたが、本人としては、もしかしたらそれは本望ではないのかもしれない。彼の次なるステップを、期待して待っていよう。