51歳異例のデビューで話題のシンガー歌心りえ 歌手人生の挫折と正念場を支えた夫と娘の言葉とは
2025年5月19日(月)12時0分 スポーツニッポン
【ききみみ音楽ハンター/歌心りえ・後編】51歳にして大手レコード会社2社から同時メジャーデビューを果たした異色のシンガー、歌心りえ。30年の音楽活動の中では、彼女を支えた家族の言葉があった。スポニチの取材に、過去の挫折や未来への期待を語った。(萩原 可奈)
前編に記したように、昭和世代にも夢や希望を与えてくれた歌心りえのサクセスストーリー。だがそれまでの30年の音楽活動では、歌を諦めかけたこともあった。「3、4年前に声帯を2回壊してしまって。手術はしませんでしたが、声出し厳禁、絶対安静で筆談を余儀なくされました」。
歌えない間、夫が経営する「音楽食堂」を手伝った。「知り合いのミュージシャンに音楽を演奏してもらいつつ食事を提供する、ライブハウスまでいかない30人入ったらパンパンぐらいの本当にちっちゃなお店で。すてきなミュージシャンの歌を聴きながら給仕してると、“もうこんなに素晴らしい人たちがいたら、私の歌なんて別にいいや”と思ってしまった」と振り返る。
「メンタル的にも弱くなっちゃってた。私はもう無理だとか。思うように声も出ないし、何かハプニングがあったら嫌だなとか。そういう不安が大きくて、もう辞めようと思ってたんです」
マッサージ好きを生かして資格を取り、歌手をやめて転身することも本気で考えたという。だが、「ウジウジしてる私を夫がずっと見てるわけですよ。以前は私もお店では歌っていたので。“いつになったら歌うの?君には歌はあるでしょ”って言ってくれて、ハッとした。その時にもう1回自分の歌と向き合う気になった」。音楽仲間もゲストで数曲歌わないか、と誘ってくれた。少しずつ人前に出て歌えるようになった。
歌手としての日常が戻り、メジャーデビューのきっかけとなるオーディション「トロット・ガールズ・ジャパン」を受けることもできた。若者に囲まれてのステージで、本来「緊張しぃ」の性格が出てしまうこともあったが、そんな時も家族が助けてくれた。
「10歳になる娘がいるんです。お店で歌ってる私の姿も見てるし、オーディションの時も1回、夫と見学に来た」。敗者復活の時で、「道化師のソネット」を歌った後、娘から「ママ、何緊張してんの。何あの歌。何あの出だし」とズバッと言われたという。
「ママもよく分かってるから何も言わないで〜、そこに触れないで〜、みたいな(笑い)。“まあ、でも本当だよね。緊張しちゃったよ”って言ったら“緊張することないじゃ〜ん”って」。娘の素直な言葉に、力みも取れた。
家族はメジャーデビューをとても喜んでくれた。「いろんなメディアに取り上げていただいて、娘もそれを見るじゃないですか。もう学校で言いたくてしょうがない。先生や友だちにジャケ写見せたりして…今、本当に学校の中での宣伝部長です(笑い)」と、うれしそうに語った。
6月からは地元・栃木を皮切りに、ソロライブツアーを開催する。7月19日の大阪・浪切ホール(岸和田市)も好調な売れ行きだ。
「2枚のアルバムを引っさげてのツアー。皆さん知ってる名曲をカバーしている2枚なので、お客さまのお声も聴きたいなって。歌ってもらえたらうれしい」
家族の支えを得ながら、音楽を通じて全国のファンとつながり「これからもいろんな世界を見ていきたい」と声を弾ませた。その姿に、“何かを始めるのに遅すぎるということはない”という名言が浮かんだ。歌心りえの50代から突き進むメジャー街道に、大いに勇気をもらおうじゃありませんか。
◆歌心りえ(うたごころ・りえ)1973年(昭48)6月30日、栃木県出身の51歳。24年、オーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」で準優勝し、韓国の歌番組でも圧倒的な歌唱力で話題を集めた。YouTubeに公開された「雪の華」のカバー動画が1000万回再生を突破し話題となる中、25年4月2日、ビクターとエイベックス2社からアルバム(ビクター「SONGS」、エイベックス「HEARTS」)を異例の同時リリース。メジャーデビューを果たした。