控室の棋士からも感嘆の声!! 叡王戦第4局直前! 第3局の激戦を振り返る

2024年5月29日(水)11時30分 マイナビニュース

●『将棋世界』最近号特集記事より先行公開!! 「勝ち将棋 鬼のごとし」
5月31日に行われる第9期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)第4局は、挑戦者の伊藤七段が初タイトルを獲得するか、藤井八冠が防衛に望みをつなぐのか、非常に重要な一戦です。明日30日に前日検分が行われ、31日の午前9時には対局が開始されます。
将棋ファンはこの対局開始を今や遅しと待っている状態かと思いますが、この記事では第4局の注目ポイントはどこになるのか、第3局の将棋を振り返りつつ探っていきます。
※本稿では、2024年6月3日に発売される、『将棋世界2024年7月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)掲載の叡王戦第3局「勝ち将棋 鬼のごとし」より、一部抜粋してお送りいたします。
(以下抜粋)
「名局だった!」
終局後、控室で検討をしていた棋士たちは皆、感嘆の声を上げた。終盤戦、双方1分将棋で繰り広げられた50手の攻防は圧巻だった。早速、大激闘をご覧いただこう。
○藤井らしい好手
藤井は昼食休憩を挟む55分の長考で▲7九玉と玉を深く囲った。
対する△6七歩を伊藤は悔やんだ。本譜は▲1二歩から香を入手して、▲2六香が好手だった。
次に▲1五香△1四歩▲同香△同銀▲2二香成と進めば先手優勢だ。控室に来訪した杉本昌隆八段は「▲2六香は藤井らしさが出た手。2筋だけの一点突破を狙うのはプロ的には盲点。単純な狙いだが受けにくい、素朴な攻めだった」と評した。
後日、伊藤は「このあたりは読みの精度を欠いていましたが、それにしても10分ほどの考慮で△6七歩と垂らしたのはかなりまずかったです」と反省の弁。実戦の進行は先手優勢だ。
○強烈な勝負手
形勢も持ち時間も苦しい伊藤だが、残り8分まで考えて指した△6六桂が飛車を見捨てる強烈な勝負手。
藤井は「△6八銀が読みの本線で△6六桂はそれほど考えていませんでした」。▲同銀に△6八角も強打。▲同金は△同歩成▲同玉△6六銀▲同角に△6五香の田楽刺しが決まる。
本譜は▲8八玉と逃げたが、△8六角成▲8二角成に△7六銀が鋭い攻め。局後に「△7六銀をうっかりしていて、負けにしているかと思った」と藤井。この局面で持ち時間を使い切り、1分将棋に。伊藤も「相手の持ち時間の使い方でチャンスがきているかもしれないと感じていました」。
○藤井に疑問手
△8七銀打以下の詰めろを受けるため、藤井は慌てた手つきで▲8七銀と受けたが疑問手。AIの評価値は先手有利から後手有利に逆転した。
戻って、▲8七銀では▲7九桂△6八歩成▲7七銀打という受けがあった。以下△7八と▲同玉と進むと、7九桂が6七の地点も守っていて、後手の攻めが難しかった。藤井も「対局中には気が付きませんでしたが、▲7九桂で明快だったと思います」と後日に語った。
●50手に及ぶ1分将棋、仕掛けられる罠のかずかず
数手後に伊藤も1分将棋に突入。糸谷八段は「まだ罠があるはず」とつぶやいた。その言葉通り、藤井はさまざまな勝負手を繰り出していく。
圧倒的な詰将棋力を持つ藤井の王手に、控室では「藤井さんに王手されたら怖い」の声も挙がった。以下△同金寄▲2三桂△同金▲3二銀△同玉▲4三歩成△同馬▲2一銀と進んだ。
▲2一銀に対して本譜は△3三玉を選んだが、▲5五馬〜▲6六飛成と進んだ局面は、先手玉への詰めろが外れたうえに、竜と馬が強力な守備駒となった。
○魔法のような手順
アベマで本局の解説をした中村太地八段は「受けがなかったはずの先手玉が安全に。魔法のような手順」と驚いた。続けて「ここでの後手の指し手の難易度が高かったと思います。ここからの指し手の正確さが『勝因』となりました」。
○伊藤が叡王獲得に王手
△6七歩が好手。▲同竜は△7五桂の追撃がある。本譜は▲5九玉と逃げたが、くさびが入ったのが大きい。以下△4七桂から王手を続け、△3六銀成▲同玉△3五銀が自玉を安全にしながらの寄せ。▲3七玉に△2五桂を見た勝又七段は「この桂が最後に跳ねたんだね」とポツリ。
77手目の▲1四香以降、いつでも取られてしまう状態にあった1三桂が、最後の寄せで大活躍した。「勝ち将棋鬼のごとし」だ。
以下▲3八玉△2一馬▲1六銀△2七銀▲同飛△同歩成▲同銀に△1五桂が詰めろ逃れの詰めろで決め手。藤井は大きく息を吐き、姿勢を正してから投了を告げた。
大激戦を制した伊藤が、2勝1敗で叡王獲得に王手をかけた。藤井が初めてカド番のピンチを迎えた次局は、大注目の一戦となる。最後に、糸谷八段は「伊藤さんが秒読みで正確な寄せでした。『糸谷』なら逆転していました」と本局を総括した。
(第9期叡王戦五番勝負第3局 「勝ち将棋 鬼のごとし」 記/竹内貴浩)
秒読みの中でも正確な指し手が光り勝利を収めた伊藤七段が、この勢いのまま第4局を制し、絶対王者の牙城を崩す可能性は大いにあります。
しかし、初のカド番に追い込まれた藤井八冠も黙ってはいないでしょう。圧倒的中終盤力を武器に挑戦者の猛攻を跳ね返す姿は第3局でも健在であり、第4局でもそれが見られる可能性は十分あります。
2人の読みと意地がぶつかる第4局は、大熱戦になること間違いなしであり、今から目が離せません。
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