【インタビュー】竜星涼&犬飼貴丈が語る仕事論“やりたいかやりたくないか”を「逃してしまうのはもったいない」
2020年8月3日(月)11時45分 シネマカフェ
それは観客だけでなく、物語の中心にいる主人公たちも同様。キャンパスのほぼ裸な男、もとい大学生活に期待を膨らませていた新入生・北原伊織を演じた竜星涼も、「最初はこんな作品だと思っていなくて」と苦笑いを浮かべる。
監督の指示なしでも
「テンション高く、ああなりました」
「ダイビングのバディ映画と聞いて、『ぜひ参加したいです!』というところから始まりました。そのときの僕は、原作をまだ知らなかったんです。脚本を読んだときも、想像していたのとは違ったけど、楽しそうだなと思いました(笑)」。
竜星さんの言葉通り、『ぐらんぶる』は大人気コミックの実写化であり、ダイビング映画でもある。伊織がほぼ裸だったのも、入部した(させられた!?)ダイビングサークルが関係しているようで…。そんな彼と同様の運命をたどり、同じサークルの仲間となる「バディ」、今村耕平を演じたのが犬飼貴丈だ。ただし、「入学した途端、事態に巻き込まれていくのは伊織も耕平も同じなんですけど…」と、犬飼さんは少々申し訳なさそう。
「耕平は耕平で、ちょっと変わっていて。伊織が普通に喋ってる横で、変なことをしていたりもするんです。なので、そこで自由に遊ばせてもらったというか。竜星さん、僕がどんなお芝居をしても受け止めてくださるので」。
となると、“巻き込まれ型主人公”の立場は伊織=竜星さんが一手に引き受けていた?
「でも、犬飼くんも、サークルメンバー役の皆さんも、熱量高く仕掛けてきてくださったので。僕はリアクションを取るだけ。自然に反応したら僕もテンション高く、ああなりました(笑)。『もっとオーバーに反応して』なんて監督からの指示は一切なかったです」。
キャンパスライフを疑似体験
「お手本にはしてほしくないですけど」
「変なこと」「リアクション」「テンション高く」…。青春ダイビング映画と思えないワードが続くが、伊織&耕平の“受難”はサークルに入会させられ、ほぼ裸のキャンパスライフを送ることに留まらず。サークルメンバーの古手川千紗(与田祐希)ら、個性も腕力も強めな女性キャラクターたちが2人を取り巻く。
「踏まれたり、罵倒されたりね。ただ、撮影中の僕らメンズは基本ほぼ裸なわけで。その異様な光景が心をオープンにしてくれたのか、女性たちからの棘のある言葉も快感に思えて。麻痺していたのか…。伊織としても竜星としても、いい刺激でした(笑)」。(竜星)
「カメラの前以外でも、女性キャストの皆さんが僕をバンバンいじってくれましたから、いいコミュニケーションになりました」「男湯に女性たちが入ってきたような空間でしたよね?」と笑う犬飼さんに対し、「確かに! しかも、彼女たちがいないと、僕らの裸は死んでしまいます」と竜星さん。
ますます青春ダイビング映画から遠ざかっている気がするものの、作品のキャッチコピーには「世界よ、これが日本のキャンパスライフだッ!」の一文も。「僕らはそう思っていますよ」と涼しい顔で竜星さん。「大学に行っていないので、『ああ、そうなんだな』って」と、犬飼さんも真顔でボケる。
さておき、撮影を通し、キャンパスライフを疑似体験することはできたそう。
「みんなでわちゃわちゃと騒ぐ。そういうのが僕自身も楽しかったし、みんなで楽しんで作れた気がしていて。去年の夏(撮影時期)を超える夏は、そうそう来ないかなって。いい夏を過ごさせてもらったなと思っています。ご覧いただく方にも、『なんだか分からないけど楽しそう』と思ってもらえるはずです。こんな青春、いいなあって」。(竜星)
「撮影なんですけど、撮影じゃないというか。学生の熱量で騒げたと思っていて。そういった熱量は、年齢を重ねて低くなっていくもの。だから、騒がなくなった大人たちに観てもらいたいし、学生時代真っ只中の人には『これくらい楽しいものだよ』と示したい。決してお手本にはしてほしくないですけど(笑)。でも、僕自身の学生時代の思い出の中に『ぐらんぶる』を入れたいくらいです」。(犬飼)
“やりたいかやりたくないか”を
「逃してしまうのはもったいない」
『ぐらんぶる』には青春のメッセージもきちんと込められている。大事なのは“やれるかやれないかではなく、やりたいかやりたくないか”。やがてダイビングの世界に本気で飛び込む伊織&耕平に、その問いを投げ掛けてくるのだ。「この映画からメッセージを読み取ってくださるとは!」(竜星)と笑いながらも、問いに向き合う2人の表情は真剣。
「仕事をしていてもそうですよね。僕らの仕事は、求められて初めて成立するものなので、その中でどう楽しむか、自分らしくいるかが問題になってくることもあります。だから逆に言えば、やりたいかやりたくないかで決められる瞬間があるのなら、それを逃してしまうのはもったいない」。(竜星)
「僕はまさしく、その問いにこの映画で直面して。実は、ダイビングができなかったんです。というか、かなづちで。なので、出演なんてとんでもないと思い込んでいたんですが、僕は『ぐらんぶる』に出たかったし、耕平になりたかった。まさに、『やりたいから、やる』ですよね。気持ちをそうシフトチェンジしたことで結果的にダイビングのシーンも楽しくできましたし、できないと思っていたことができたのもうれしかった。そういう意味では、僕自身が『ぐらんぶる』を体現できたのかもしれません」。(犬飼)