「これからも映画愛を加速させたい」上白石萌歌インタビュー 『アキラとあきら』
2022年8月22日(月)12時24分 映画ランドNEWS
「More Cinema in Life. 〜ITのチカラで、映画館をもっと身近に。〜」をミッションとして掲げる映画ランド。そんな弊社が、映画界で活躍する監督・スタッフ・役者に、映画館について、映画についてお話を伺う。
池井戸潤の原作を竹内涼真と横浜流星を主演に映画化した『アキラとあきら』が8月26日より全国東宝系にて公開される。今作で産業中央銀行の行員・水島カンナを演じたのは、現在放送中の連続テレビ小説『ちむどんどん』で主人公の妹・比嘉歌子 役や『金田一少年の事件簿』でヒロインの七瀬美雪 役、映画『子供はわかってあげない』では主演・朔田美波 役を演じる上白石萌歌。映画館の話や今作についてお話を伺った。
上白石萌歌
KAMISHIRAISHI MOKA
2000年生まれ、鹿児島県出身。
2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞しデビュー。ドラマ『義母と娘のブルース』、『金田一少年の事件簿』、連続テレビ小説 『ちむどんどん』に出演、主な映画出演作に『羊と鋼の森』(2018年)、『子供はわかってあげない』(2021年)などがある。またadieu名義で音楽活動を行うなど幅広く活躍している。
映画館で作品の世界観に没入したい
——まずは映画館についてお伺いしたいのですが、普段、映画館には行かれますか?
上白石:大好きです。時間さえあれば仕事の後に行ったりもしますし、何日も続いてお休みがある日は毎日行ったり。映画を観るなら映画館、って感じで行くことが多いです。
——頻繁に映画館に行かれているんですね。
上白石:映画もミニシアター系のものが好きで。もちろん大きな映画館にも行くことはあるんですけど、そこでしか上映していない作品もあるので、自分の好きな映画館は毎週今やってるものをチェックしたり、限定公開とかもあるので、そういうのにも時間があったら行ってみたりしています。
——自宅で配信された映画を観ることも当たり前になってきましたが、映画館で映画を観るのと自宅で観るのとで違いはありますか?
上白石:私は映画館そのものが大好きで。映画を観るために作られた場所、映画に特化した場所ってすごく贅沢だと思いますし、その作品をみんな観たくて来ている感じがとても好きなんです。それでもなかなか時間が合わなかったり、古い作品でもう上映されていない作品はお家で観ることが多いですけど、その世界観に没入したいので、なるべく映画館に行きたいですね。
——没入するために映画館という場所が大事なんですね。
上白石:家にいる時って結構、同時進行でいろんな事をやってしまうことが多いじゃないですか。仕事の連絡がきたら携帯を手に取ってしまったり。そうすると大事なシーンを見逃したりするので、最初は映画館で観て、その映画が配信されたらまたお家で何度も観るのが理想です。やっぱり作品との出会いは劇場がいいですね。
——上白石さんと同世代の若い人たちに映画館に来てもらうにはどんな工夫が必要でしょうか?
上白石:私がすごくいいなって思ったのは、TOHOシネマズで「午前十時の映画祭」っていう、昔の名作を映画館で上映しますよっていうのがあって。私すごいそれが好きで、『シャイニング』とか、『ジョーズ』とかを観に行きました。昔の名作こそ、一歩踏み出すのに時間がかかることが多いと思うので、映画館で観るのってこんなにすごいんだよとか、すごく特別なんだよっていうのを示せる企画があればいいなと思います。
——映画・映画館への強い想いを感じます。
上白石:私は本当に映画を観ることが大好きで。映画館も大好きだし、どれだけ配信が進んでも、映画館という場所はすごく神聖だから守られて欲しいなって気持ちがあって。幸い私は映画を作り出す側の人間でもあるので、これからも映画愛を加速させて、映画館の素晴らしさを多くの人に伝えていきたいと思います。
大人への一歩をちゃんと踏み出すことができる作品
——ここからは『アキラとあきら』について伺いたいと思います。池井戸潤さん原作の作品に参加されていかがでしたか?
上白石:池井戸さんの作品は拝見してばかりで携わるのは初めてでした。池井戸さんブランドが確立されていて、憧れがあったので楽しみだったのと、池井戸さんは社会人を描くことが多いと思うので、自分も大人の仲間入りをしたんだなと嬉しく感じました。
——上白石さんが社会人を演じているのが新鮮でした。オファーがきたときの率直な感想はいかがでしたか?
上白石:池井戸さんの作品ということもそうですし、今までスーツに身を包むこともあまりなかったので、すごく新鮮で。果たして社会人をちゃんと演じきることができるのかという不安もありましたが、私も成人してもう2年が経つので、これから大人としての振る舞いを学んでいく中で、この作品がすごく助けになるだろうな、大人への一歩をちゃんと踏み出せるようになる作品になるだろうなと思いました。
——水島カンナを演じる上で心掛けたことはありますか?
上白石:まず名刺交換をしたことがなかったので、普段自分が現場で目にする名刺交換を思い出してみたり、実際に所作指導で指導していただいたり。本編で名刺交換をするシーンがあるんですけど、けっこう緊張しました。所作の一つにしても初めてのことが多かったので、そういうところからしっかり作りこみました。あとは銀行員のお話なので、融資の勉強をしたり、バンカーの生活とか、どういう部署に分かれていてどんなことをしてるのかをまとめられた本を読んで勉強して、現場に入りました。
——水島カンナをどういう人物として演じていましたか?
上白石:ポスターを見ていただくと分かる通り、本当に男性ばかりで、劇中でも「女のくせに」みたいなセリフがあったりして、それでも立ち向かっていく。女じゃなくて、私はこういうものです、って言い返すシーンがあったので、男性が多い職場の中でも、ちゃんと自分を律して持っている人物であり、結構ちゃきちゃきしている。多分カンナは(主役の)お2人のことが推しだと思うんですけど、推しの2人に対して、すごく目を輝かせたりとか、そういう茶目っ気みたいなかわいらしい部分も出せたらいいなと思って演じました。
推しがたくさんあって、そこにのめり込む熱っぽさはすごく似ている
——上白石さん自身が水島カンナと共感できたり似ていると感じるところはありますか?
上白石:私が演じたカンナちゃんはちょっとオタク気質っていうか、好きなことにとことん入り込む子だと思うんですけど、私も好きなものがたくさんあって。そこにのめり込む熱っぽさはすごく似てるなって思います。
——人間らしい、ふと出てしまうカンナらしさみたいなものは意識されたのでしょうか?
上白石:たぶんカンナが思い描く銀行員像みたいなものがあって、自分はそうなりたいって思ってると思うんですけど、なりきれないかわいらしさもある。でもすごく意欲があって、2人のことをすごく尊敬していて。銀行員としてはまだまだこれからの存在だと思うんですけど、自分のできることをこなしている印象があったので、私もそういうところを尊敬しつつ、固くなりすぎないように、映画を見ている中でも、ふっと気が抜ける存在になれるように心がけて演じました。
——演じていて難しかった部分は?
上白石:私はあまり台本に書き込むタイプじゃないんですけど、専門用語が多く出てきたので、やっぱり書かなきゃどうしても整理がつかない部分がありました。付箋をいっぱい貼ったり、この用語って結局どういうことなのかをまとめたり。今どことどこの会社がどうなってて、どこにどうしようとしているのかっていうのを、自分で図を書いたり、専門用語を調べたりはよくしていました。
2人の関係がまさしく”アキラとあきら”
——主演を演じられた竹内さん、横浜さんとの共演はいかがでしたか?
上白石:膨大なセリフと、生涯口にすることがないであろう専門用語がたくさん出てくる中、2人とも本当にスマートに演じられていて。バンカーそのものだったので、やっぱりこのお二人すごいなって感じました。対立しあっているけれど、結果お互いのことをちゃんと信頼しあっている関係がとても美しかったので、それを近くで見られて本当に幸せだったなって思います。勉強になりました。
——撮影の合間の2人の雰囲気は?
上白石:すごく仲良しで。私はちょっと遅れてクランクインしたんですけど、もう2人の関係性が出来上がっていて、竹内さんが筋トレに詳しいので、どうやったら体を分厚くできるかっていうのをお二人で話していました。あまり詳しくないのでそこにはちょっと入りづらいなって思いながらも、その2人の自然な関係がとても素敵で。まさしくアキラとあきらだなと思って見ていました。
信念を貫くこと、曲げないことの大切さを教えてくれる作品
——三木監督との10年ぶりのお仕事はいかがでしたか?
上白石:三木さんは、私がデビューしたてのまだ小学生くらいの時にご一緒して、時を経てまったく違うテイストの作品でご一緒することになり、初めましての監督よりも緊張しました。久しぶりに会うので、その間なにがあったかとかどれくらい成長してるかっていうのを多分見られているだろうな、っていう緊張感があったんですけど、実際お会いすると柔らかい三木監督のままで。でも久々にお芝居の指導とか、こういう風に演じてっていうのを言っていただいて、すごく懐かしさもあったし、緊張感も終始ありました。
——三木監督の演出で現場が和むこともあったのでしょうか?
上白石:こういう作品って終始ピリッとした空気が漂いがちだと思うんですけど、その中に三木さんが和やかにいてくださるから、どの人物も人間味があって、何より映像が本当に美しくて。そこはやっぱり三木さんの美学というか映像美だなって思いながら完成したものを観ていました。
——映画の中で好きなシーンはどこですか?
上白石:私はラストシーンがすごく好きでしたね。2人が山の上に立って風が吹いているシーンが、三木さんらしさがすごく出ていたし、この2人が草原に立っているだけで鳥肌が立つというか、2人の纏う空気感が良く出ていました。
——最後に、記事を読んでいる方に本作の見どころを教えてください。
上白石:とにかく出てくる人たちがみんな泥臭くて。信念を貫くこと、曲げないことの大切さを教えてくれる骨太な作品です。最近の自分はちょっと緩い気がするな、なかなか活が入らないな、とか、そんな頑張れないときってあるじゃないですか。そういう心の甘さみたいなものを感じたときに観るとすごく力が出る作品だと思います。処方箋じゃないですけど、サプリみたいに取り入れてほしいなと思います。
(取材・写真:曽根真弘/照明:田中銀蔵/ヘアメイク:奥平正芳/スタイリスト:道端亜未)
映画『アキラとあきら』は8月26日より全国東宝系にて公開
公式サイト:https://akira-to-akira-movie.toho.co.jp/ 公式Twitter:@akira_movie2022
(C)2022「アキラとあきら」製作委員会
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