【インタビュー】鈴木亮平、俳優人生の第二章はがむしゃらに「恐れずにやっていく」

2019年11月5日(火)7時45分 シネマカフェ

鈴木亮平『ひとよ』/photo:You Ishii

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スクリーンに映っていれば、目で追わずにはいられない。そんな人が、「とにかく注目を浴びたくない。自分を見ないでほしいと思っている人」になりきり、心の叫びを伝えてくる。やはり、役者はすごい。『ひとよ』の鈴木亮平を目にし、そう感じる人は多いだろう。

演じる役は「とても愛おしく」
『ひとよ』で鈴木さんが演じた稲村大樹は、父、母、三兄妹から成る稲村家の長男。母親は幼い子どもたちの幸せを守るためと信じ、愛する夫を手にかけてしまう。そのショッキングな家庭事情が、15年を経て大人になった現在も三兄妹にのしかかっている。大樹が「自分を見ないでほしいと思っている人」なのは、その事情ゆえか。

「加害者の子であり、被害者の子でもありますから。それに加え、吃音でもある。でも、残念ながら大きな体に育っちゃったんです、大樹は。だから、背中も丸くなるし、吃音を聞かれたくなくて声も小さくなっていった。顔を見られたくないから、前髪を下ろしたりもして。思春期って、男子も女子もただでさえそういうところがあるじゃないですか。とにかく自分を見ないでくれって」。


そんな大樹と弟の雄二(佐藤健)、妹の園子(松岡茉優)の前に、音信不通になっていた母親(田中裕子)が現れる。だが、母親に再会した三兄妹の表情は複雑だ。

「台本を何度も読み込むうちに、彼が過ごしてきた15年の生きづらさを想像することができて。母親を愛してはいるけど、愛情を与えられなかった思春期からの15年は大きい。愛の裏に、ちょっとした憎しみがあるんです。そんな中、崩壊した家庭で育った大樹がなぜ早くに結婚し、子どもを作ったのか。きっと、自分は父親とは違うと示すことで、父親に復讐する気持ちがあったはず。そんなことを考えていたら、大樹がとても愛おしくなりました」。


親の気持ちと子どもの気持ちがきちんと描かれている
鈴木さんの話に出てきた通り、三兄妹で唯一、大樹は自分の家庭を持っている。けれど、家庭はすでに崩壊気味。彼が最も望んでいなかった事態になりつつある。

「結局は、父親と同じ道を歩みそうで。怯えているんです。僕自身もそうですが、息子は父親に似ているところを発見したとき、“うわっ”となる(笑)。それと同じ気持ちの、レベルのもっと違うところ。一番なりたくなかった父親に近づくことで、どうしようもない自己嫌悪を感じているんです。ただでさえ、自分を嫌っているのに。でも、別れたら負けを認めることになるから、絶対に別れようとしない。そんな結婚生活、奥さんも嫌ですよね」。


ちなみに、鈴木父子の似ているところは、「知ったかぶりをするところ(笑)」だそう。

「父にも僕にも、その癖(へき)があって。『世界遺産って全部でいくつあるんですか?』と聞かれたら、『うん、○○個だよ』と自信たっぷりに答えちゃう。後でちゃんと調べて“わっ、増えてた!”となるんですけど、とりあえず言っちゃうんです。得意分野だから、“知らない”と言うのは負けな気がして。親父はもっと自信たっぷりに何かを語る人なので、嫌な共通点。いつも反省しています(笑)」。


「親の気持ち、子どもの気持ち。それぞれがきちんと描かれていて、誰かしらに共感できる。けれど、すべての気持ちが分かるわけでもない。それでいいと思うんです」と、作品の軸に迫る鈴木さん。また、『ひとよ』は「家族の物語であり、時間の物語でもある」という。

「“ひとよ(一夜)”ですからね。大樹たちも、15年前の“ひとよ”に翻弄されるわけで。自分にとっては重大な夜でも、人にとってはただの夜。そういうのって、ありますよね。自分がどう思っているか、人には分からないのだし。でも、人生はそういった“ひとよ”の連続。そのモーメントをいくつ重ねていけるかで豊かさが決まると思っています」。



俳優人生の第二章がスタート
俳優・鈴木亮平にとっての“ひとよ”を聞くと、「いっぱいありますけど、やっぱり最初に決まった映画のオーディションかな」と述懐。2007年、森田芳光監督の『椿三十郎』が映画デビュー作だ。

「若侍7人ほどを選ぶオーディションで。何百人と集まった中から、だんだん落とされていくんです。『コーラスライン』方式ですよね。ドキドキするし、いつ終わるかも分からないし。開始から5時間半後、“君たちに決定しました”と言われた瞬間のことはずっと忘れられません。嬉しかったです」。


そして、“ひとよ”を積み重ねた現在、「いままでやってきたものを一旦忘れ、また一からいろんなものを積み上げたい」と明かす。

「舞台も映像も関係なく、なんでもやっていきたい気持ち。大河ドラマが終わって、その後に映画を2本ほど撮って。ふと感じたのが、『西郷どん』は俳優人生の第一章を締めくくる作品だったということ。それくらい、強烈だったんです。そう気づいたとき、“第二章はもう始まってる!”となって。がむしゃらに、リスタートする気持ちで、恐れずにやっていく時期が来たなと思いました」。


第二章はどんなテーマで? と聞くと、「それを決めちゃうとね。がむしゃらじゃなくなるので」。では、「第二章はどうでしたか?」といつごろ聞けばいい? と確認してみると、「なるほど! そうきましたか」と笑顔を見せる。

「う〜ん、50歳くらい…かな? 14年後になりますね。先は長いなあ…。でも、お芝居を始めてからで数えると、第一章もそれくらいの長さでしたし。本当に、聞きに来てくださいね(笑)」。

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