アマプラのヒーロードラマ『THE BOYS』は傑作と言っていい / ヒーロー疲れした人ほど観てほしい

2023年11月18日(土)17時30分 ロケットニュース24

最近はマーベルもDCもあまり奮っているとはいえない。正直、ヒーロー映画に食傷気味の人も多いのかもしれない。実際私(佐藤)も数年前までは夢中で作品を追いかけていたが、近頃は「観れたら観る」「配信始まったら観る」という程度の期待しか持ち合わせていない。

だが! そんな私を釘付けにするヒーロー作品がある。アマゾンプライムビデオ独占配信のドラマ『THE BOYS』だ。シーズン3まで配信しており、先日スピンオフドラマの『GEN V』のシーズン1が終了したばかり。

これを観て欲しい! ヒーローに飽きた人ほど観て欲しい。飽きないんだよ、このドラマシリーズは。次のシーズンが待ち遠しくて仕方ない!

・ヒーロー映画を楽しめなくなったのは……
この作品について語るのは、2020年9月以来2度目である。あの頃はまだシーズン2の途中で、あの頃でも十分に見ごたえはあった。現在はシーズン3まで終わり、2024年に4が始まることが発表されている。改めてその魅力をお伝えしたい。今から観ても4には十分間に合うからだ。

さて、作品の魅力をお伝えする前に、ヒーロー疲れの理由について考えてみたいと思う。私なりに考察したところ、次のような要素が挙げられるのではないだろうか。

<複雑になり過ぎた>
これはとくにマーベルに言えることなのだが、マーベル作品はフェイズ4以降、「ディズニープラス」でドラマシリーズを数多く展開しており、それらが微妙に映画にもつながっている。そのためドラマを観ていないと映画の物語の全貌が把握できないケースが出てきた。

たとえば、1作目が大ヒットした『ドクターストレンジ』は、敵役と戦う流れがわかりづらかった。重要な要素なのに、映画でそこまで触れられなかったので、ドラマを観ていなかった私は「なんで?」となった。

厄介なことに、現在マーベルもDCも「マルチバース(多元宇宙)」の要素を取り入れたことで、複雑さに拍車がかかっている。専門用語が増えてしまって理解しようとがんばって観ると、終わる頃にはヘトヘト。それでもサッパリわからんこともある。気軽に楽しめん!

<どこに向かっているの?>
マーベル作品が上り調子だったのは、フェーズ3の『アベンジャーズ:エンドゲーム』あたりまでではないだろうか。あの頃は、最強の敵「サノス」と戦うべく物語が進行していた。流れがわかり易くて、いくつか作品を見逃していてもカンタンに理解できた

だが、今(フェーズ4、5)は何と戦っているの? そもそも宿敵との戦いが始まっているのかさえもわからない。エンドゲームから4年も経過しているのに、何もわからないまま作品は出続けている。

DCにいたっては、それ以前。今後の作品についてはこれから建て直しが進行すると思うけど、起死回生の『ザ・フラッシュ』は興業的に奮わなかったし……。フラッシュは文字通りサプライズなキャスティングが施されていたけど、それもどうなることやら……。

そんな感じで、とにかくスッキリしないのである。複雑だし先が見えないので、観ていて純粋に楽しめないっていうか……。エンドクレジット次回作の期待感を煽ってるけど、本編が面白ければ「次も観たい!」ってなるはずだしねえ。

・毎話ハラハラ
そんなモヤモヤを『THE BOYS』『GEN V』は一切感じさせない。少なくとも、私はシリーズ全体を通して、ワクワクを感じている。

物語は単純だ。本来は弱きを助け、強きを挫くはずのヒーローが、めちゃくちゃ悪いヤツというお話。メディア戦略等を駆使して、自らの悪行を隠ぺいし続ける悪党である。とくにメインヴィランに相当する「ホームランダー」は、異常ともいえる思考の持ち主で、ほぼ無敵という厄介者だ。

コイツを倒すために、非能力者の人間たち(THE BOYS)が、あの手この手で立ち向かっていくのである。

「どうにかしてホームランダーを倒す」という流れで進行しているのだが、思わぬ邪魔や不確定要素に遭遇し、想像を超える展開が待ち構えている。また人間チームを仕切る「ビリー・ブッチャー」もクセモノで、奇策を弄するあまりに仲間から不信に思われる場面も多々ある。

毎話「どうなるの?」の連続だ。ドキドキとハラハラで1話(約60分)が終了する。なお、毎シーズン8話で構成されているので、シーズンごとの完走も早いはず。

・スピンオフも面白い
そしてスピンオフ作品の『GEN V』もおすすめしたい。こちらはヒーロー養成学校が舞台で、生徒たちが学校に潜むヒミツについての真相を探る物語。もちろん、本編とも話はつながっていて、この先のシーズンでより深く絡みあって行きそうな予感。

学園モノなので、本編とは違ったタッチで全般的に描かれいる。だが、シリーズ全体を貫く緊張感と爽快感は共通している。こっちはこっちでどうなっていくのか、気になって仕方ない。

・安心して観ていられる
過激な要素がふんだんに詰め込まれており、特殊能力を持ったものが次々と登場するにも関わらず、私は「地に足のついた物語」と感じている。

たとえば、完全無敵のホームランダーは強すぎるがゆえに孤独で、人気に異様なほど執着している。比類なき強さを持っていても、心の弱さを補うことができないところに、妙な共感を覚えるのだ。

また、ホームランダーとビリー・ブッチャーは互いに宿敵のはずなのに、変に認め合っているところも見て取れる。映像演出は派手だが、人間描写の細やかさも作品の魅力となっている。

シリーズを通して観ていると「こういう風に物語を進めていこう」という、制作側の意図が伝わってくる気がする。安心して観ていられるんだよなあ。

なお、この作品は出血表現・性的表現が激しいので、苦手な方は要注意。レーティングは「R18+」で未成年は視聴できないので、その点も留意頂きたい。

個人的にこの作品は、ホームランダー役のアントニー・スターの怪演が光っている。彼でなければ、この作品はヒットしなかったとさえ思えるほどだ。ぜひその辺も含めて、作品をご覧頂きたい。

参考リンク:アマゾンプライム
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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