染谷将太、今年出演映画8本が公開 役回りが変化した30代は「柔軟に生きていきたい」

2024年12月7日(土)7時0分 クランクイン!

近年さまざまな作品でさすがの存在感を発揮する染谷将太。2024年は8本の出演映画が公開されるなど引っ張りだこの彼が、『劇場版ドクターX』で初の一人二役、初の手術シーンに挑む。座長・米倉涼子が率いる現場のチームワークに感銘を受けたという染谷に、本作への思い、さらには最近の活躍について話を聞いた。

◆一人二役&手術シーンに初挑戦



 2012年にスタートした人気シリーズ待望の劇場版となる本作。孤高のフリーランスの外科医・大門未知子誕生の秘密が初めて明かされるほか、未知子の前にシリーズ最大の敵が現れ、幾多の危機を乗り越えてきた未知子をさらなる窮地へ追い込む、怒涛の展開を見せる。

 本作出演オファーに染谷は、「大門先生の宿敵を自分が演じさせてもらえるなんて、想像もしていなかった」と驚いたそう。「笑いあり感動ありで、見終わった後にスカッと爽快といいますか。清々しい、気持ちがすっきりする作品」と本シリーズの魅力を語る。

 今回演じるのは、大門未知子の前に立ちはだかる、サイコパスな東帝大学病院新院長・神津比呂人と、医療機器メーカーのCEOで比呂人の双子の弟である神津多可人。遠藤憲一勝村政信、鈴木浩介ら東帝大学病院のおなじみのメンバーをばっさり切り捨てるサイコパスな比呂人と、車いす生活を強いられている多可人を巧みな演技力で演じているが、意外にも一人二役は初挑戦だ。「比呂人と多可人という2人の人間性がとても丁寧に台本に描かれていたので、そのまま演じるだけで成立するなと思いました」と振り返る。「大門先生の前に立ちはだかる動機や、2人の持っている感情が人間らしい敵だなと思ったので、その人間らしさというのを大事に演じたいなと思いましたね。脚本に書かれてあるセリフに比呂人の気持ちがたくさんこもっていたので、まずはそのセリフ1つ1つを大事にすることが一番重要だなと思いました」。

 主に未知子と対峙する比呂人を「あることがなければとても優秀で、人の命を助けるという信念は強い人」と説明。「違う方向にいかなかったら、新しいこともどんどん取り入れていくので、あまり攻撃的ではない革新的なお医者さんになったのではないかと。あることがあったので、自分の持っている才能が違う方向に向かってしまった。ひとつの狂気性も帯びているのかな」と感じたそうだ。

 初めてのチャレンジだったという手術シーンについて尋ねると、「さすがに12年間ずっとやられているチームだけあり、段取りが完璧といいますか。自分は言われた通りにやるだけで、意外とスムーズにいって驚きました」と笑った。

◆12年続く『ドクターX』のチームワークを体感


 米倉涼子とは初共演。「とても優しくて、たくさん声をかけてくださいました。とてもチャーミングであり、現場にいる皆さんに愛されていて、素敵だなと思いました。役と作品に力強く向かっていく姿がカッコイイなとも思いました」と印象を語る。「初めてお会いした時に『お手柔らかにお願いします!』とおっしゃって。『いやいやいや、こっちのセリフです』と」と笑いながら、「初日とか、『あ、大門先生だ』『あ、あのオペ室だ』という感じになっちゃったので、いかに堂々とそこに立てるかということもすごく意識しました」と『ドクターX』の世界観を満喫した。

 本作でも、西田敏行さん、遠藤、勝村、鈴木らおなじみのメンバーの軽妙なやりとりは見どころのひとつ。「西田さんがアドリブで素敵なセリフをどんどん足されるんですね。どんどんどんどん、その場のお芝居が豊かになっていって」と回顧。「それにチームワークもすごくてですね。皆さん、西田さんのアドリブにどんどん乗っかって、会話が膨らんでいくんです。自分は笑ってもいけないですし、どちらかというと、いいところで自分のセリフでアドリブを切らなきゃいけない。台本の本線に戻すという役割だったんですけど、あのやりとりはずっと見てられちゃうんです。その場にいられて、西田さんとアドリブで掛け合えたのがうれしかったですね」と貴重な経験を重ねたようだ。

 岸部一徳が演じる晶とのシーンも印象的だ。「自分の役がわりと怒りや敵役としての暴走が多く、(そういった感情を)一徳さんにぶつける場面が多かったんです。一徳さんの揺るがない佇まいといいますか、寛大さといいますか、器の大きさで全部受け止めてくださるんですよね。自分がどんなに暴れても成立するといいますか、包み込んでくださるので、シーンに説得力が生まれました」と感謝する。

 年齢を下から数えたほうが早い現場は久しぶりで新鮮だったのでは?と聞くと、「大人に囲まれていることが多かったので、そこはそんなに(笑)」と笑顔を見せ、「先輩の方がたくさんいらっしゃる中で、自分がずっと生意気な芝居しているので緊張しました。でも、みなさんが自分にそういう目を向けてくださったので、サイコパスな敵役にしてくださったと思っています」。

◆今年8本の出演映画が公開 30代に入って役回りに変化


 2024年公開の映画に8本出演。来年にも主演映画の公開が控えるなど、最近の活躍は目を見張るものがある。『サンクチュアリ ‐聖域‐』や『地面師たち』、『ブラッシュアップライフ』など話題作への出演も続き、いまや“ヒット作に染谷将太あり”という印象だ。「たまたま公開時期が今年に重なったっていうだけです」と謙遜するが、「たぶんきっと30代に入って、今まで自分がやれなかった役もやれるようになってきたというのはあるのかもしれないですね。20代の時とは違う役回りをいただけるタイミングがすごく増えてきてはいます。今回もそうですし、驚きといいますか新鮮で、また新たな気持ちで楽しませてもらっています」。

 30代になってほかに変化はあるだろうか?「前より緊張するようになりましたね。若さだけでは乗り切れないみたいな。若いから勢いで乗り切ったなと昔のことを思うところも(笑)」。さらに「役を演じる上でも、経験する時間や数が増えていくほど、より悩むようになっていったり。考えられる可能性が広がっているといえば広がっているのかもしれないですが」と吐露する。

 25年近いキャリアを誇る染谷だが、その中でのターニングポイントを尋ねると、「この仕事を職業にしたいなって思ったのは、『14歳』(2007年)という作品」との答えが。「今まで自分が見たことのない映画の世界観を、自分が出演することで知るという経験ができて。現場もとても素敵な現場で、より映画を観ることが好きになり、世界が広がった感じがしました。この仕事をずっと続けられたらうれしいなと思うようになりましたね」と振り返った。

 現在32歳。30代は「柔軟に生きていきたい」と話す。「凝り固まらずに、柔軟にいろんな役をやってみたいですし、たぶん何年続けても知らないことはたくさんあると思うので、初めてのことをこれからも経験できる可能性はきっとあるはず。今回の『ドクターX』も初めてのことばかりでしたし、柔軟でいることで、そういうことも経験できるのかなと思っています」。(取材・文:渡那拳 写真:松林満美)

 『劇場版ドクターX』は公開中。

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