「配慮していなかった…」1時間で250万足つくられる靴はどこへ行く? アマゾンやアディダスの元社員たちが語る“大量消費の副作用”

2024年12月17日(火)8時0分 文春オンライン




 日本でもすっかり定着した11月のブラックフライデー。ECサイトの在庫一掃、安売りセールでつい散財した人も多いはず……。そんな人に冷や水を浴びせる衝撃的なドキュメンタリーが『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』(ネットフリックスで配信中)だ。本作は世界的ブランド企業に勤めていた元社員たちの懺悔から始まる。アディダスの元役員は言う。


「新しいパーカーもTシャツも靴も必要ない。ほとんどの人は十分持っている」


 そう知りながら広告やブランド戦略を駆使し商品を売り続けた。Amazonの元サイト開発デザイナーは消費者のアクセスデータから最も購入の可能性が高まる色やデザインを統計的に割り出し、衝動買いへ導く仕組みを明かす。


「意図的かつ複雑で高度に洗練された科学で物を買わせる」


 ワンクリックで何でも買えるオンラインショッピングは、大量生産&消費のサイクルを著しく加速させた。靴の世界生産量は1時間で250万足、スマホは1時間で約7万台、衣服は毎分19万着に及ぶ。


 物が溢れる状況でさらに企業が利益を得るには「買い換え」を促す必要がある。かつては電化製品が壊れたら部品を交換して使うのが当たり前だったが、この30年で修理する慣習はほぼ消滅。「直すより買い換えた方が早い」という概念が広がった。ここにも巧みな企業戦略が隠れている。


 しかし、こうした利益追求の姿勢は副作用を生む。AI風のナレーションが警告する。


「はっきり申し上げます。利益の最大化は、必然的に環境を破壊するものです」


 プラスチックごみは今、年間4億トン。電子廃棄物は5000万トン。2050年の1年間の廃棄物は東京中心部を埋め尽くす量と試算されている。元社員の言葉が虚しく響く。


「大量の商品はどこへ行くのか、配慮していなかった……」


 利便と利益の飽くなき追求。その先に待ち受ける“不都合な現実”に目を開かされる。



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『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』
https://www.netflix.com/jp/title/81554996





(佐々木 健一/週刊文春 2024年12月19日号)

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