ベアフットシューズとは?「熊の足」じゃない、「裸足(barefoot)感覚」で気楽に履けるトレーニングシューズ5選
2024年12月13日(金)8時0分 JBpress
今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
つま先着地を促す機能を有するベアフットシューズ
これまでの傾向から“ベアフット=熊の足”の勘違いを起点に話を転がすことを早々に見透かされ、タイトルで正解を述べられてしまったが、ベア(裸)+フット(足)で“裸足”を意味するこの言葉。我が国では、2010年にクリストファー・マクドゥーガルの著書『BORN TO RUN』の翻訳版が発刊されたことを機に広がったとされる。
同書では、常に足に故障を抱えるランナーでもある著者が“走る民族”とも称されるメキシコの少数民族、タラウラマ族の走力にまつわる秘術を探る中で、彼らがつま先着地(フォアフット走法)で走ることにより、平時は使わない筋肉やバランス感覚など、人間の身体本来の力を引き出していることに気付く。このフォアフット走法に適しているのがつま先着地を促す機能を有するベアフットシューズというわけだ。
特徴としては、必要最低限まで素材・機能を削ぎ落としているため、普段鍛えることが難しい筋肉に低負荷をかけてトレーニング効果を向上させるだけでなく、走る動作を改善することで怪我予防の効果も期待できる。ここではそんなベアフットシューズの中でも、評価の高いブランドから5足をピックアップしてお届けする。
ちなみに熊の足ならぬ熊手は、英語でRake。落ち葉などをかき集めるための道具であることから“福をつかんでかき集める“という意味もあり、縁起物のひとつとされている。新たな一年を幸先よくスタートするためにもベアフットシューズは有用か。その効果のほどをぜひ一度試してみていただきたい。
1. VIVOBAREFOOT「PRIMUS TRAIL Ⅱ FG」
ベアフットの名に恥じることなき柔軟極薄の足裏感覚
ベアフットシューズへと踏み出す第一歩。そこに迷いや恐れがあるならば、まずはこちらから始めてみるのが良いだろう。ブランド名はビボベアフット。VIVOとはイタリア語で“元気に、活発に”という意味をもち、“人間本来の足機能を取り戻すことで、より健康な生活を送り、自然の中を進むべき”という理念のもと英国からプロダクトを発信する。
本モデルで注視すべきは、リサイクルPETを使用した超軽量メッシュ素材が優れた通気性をもたらすアッパーと、コンパウンド・ラバー製のファームグラウンドアウトソールのコンビネーション。3mm厚のベースと2.5mm高のラグが生み出す摩擦抵抗が不整地からアスファルト道まで、どんな路面と場面においても吸い付くようなグリップ力を発揮。しっかり地面を感じながら、自然で安定感のある動きと柔軟極薄な足裏の感覚を存分に味わえる。
2. New Balance「MTM10LY1」
トレイルラン用として復刻された「ミニマス」シリーズ
モノ選びの基準のひとつにクチコミがある。知識ある先達たちの評価ほど信頼に値するものはなく、それらの声を受けてリリースされる復刻モデルを買えば、まず失敗することはない。本作がそれだ。
機能を最小限に削ぎ落とし、裸足に近い履き心地を実現することで、本来人間の足に備わっている力を最大限に引き出すことを目的とした「ミニマス」シリーズをトレイルラン用シューズとして復刻。足本来の動きを発揮できるよう前後差4mmの均一なラストと屈曲性と接地感に優れた薄底ソールの組み合わせは、一見ベアフット感こそ薄く思えるが、足入れするとしっかり裸足感覚あり。
フューエルセル素材のミッドソールが薄底でも卓越した反発弾性とクッション性を提供し、さらにはトゥ部の3層トゥプロテクトとATトレッドアウトソールの複合技により、アウトドアの厳しい環境下でも足元のサポートは万全だ。
3. MERRELL「TRAIL GLOVE 7」
0mmドロップ構造によって実現された、究極の裸足気分
アウトドアシーンで圧倒的人気を誇るメレル。こちらのブランドも近年、ベアフットシューズ界隈で存在感を強めている。
2011年に発売され、地面と足に一体感を与える究極の裸足感覚を、0mmドロップ構造により実現させた「トレイル グローブ」シリーズ。柔軟性と軽量性、履き心地など継続的なアップデートを繰り返し、ついに第7世代に。アッパーは足を柔らかく包み込み、通気性・耐久性を確保したメッシュ素材。
ミッドソールには、軽量性とクッション性を備えながら耐久性にも優れたフロートプロフォームを採用し、アウトソールには、グリップ力や耐久性を損なうことなくリサイクルラバーを30%配合したヴィブラム エコステップ リサイクルを搭載。地面の感覚をダイレクトに伝えるだけでなく活躍の可能性を広げる14mm厚タイプは、ツマ先からカカトまでラバーでカバーする構造も興味深い。
4. Topo Athletic「ST-5」
一見、ベアフットには見えないようなスタンダードフォルム
世界中のトレイルランニング愛好家から厚い支持を集めるアメリカ生まれのブランド、トポのベアフットシューズといえば「ST」シリーズだ。
ランニングやワークアウトからデイリーユースまで幅広く対応するミニマルな意匠を特徴とし、最新モデル「ST-5」では前作から刷新されたジップフォーム搭載のミッドソールを採用。地面と足との間に一体感を生み出す0mmドロップ構造と可能な限り薄くしたソール厚14mmにより、望外のクッション性と裸足に近い履き心地を兼備。
洗練されたアッパーはリサイクル由来のメッシュ素材で通気性が良く、快適でナチュラルに足先を広げられるように身体構造を考えて設計されたトゥボックスも相まって、足全体を包み込む心地良いフィット感が得られる。これにもうひとつ。コンフォータブルで歪み防止作用もある抗菌性フットベッドも、外すことのできないチェックポイントだ。
5. SUICOKE「NIN-LO」
着想元は日本の地下足袋。5本指デザインが放つインパクト
裸足の感覚に近づけていくうちに、形状もそうなっていくのは当然の帰結といえる。
“本当に自分たちが欲しいもの、所有したいものだけを作っていく”という挑戦的創造開発をコンセプトに掲げ、2006年にスタートしたスイコックと世界的ソールメーカーとして知られるヴィブラム社によるコラボモデルは、まさに“裸足”そのものの5本指デザイン。そのインパクトたるや。
着想元は日本の地下足袋。ゆえにヒールサイドには、フィット感の調整とデザイン的アクセントを兼ねる象徴的ディテール、甲馳(コハゼ)が。また、履き心地に直結するソール部分は立体的で薄く柔軟な構造に反発性を備えることで、着地時の反動を分散。加えてアウトソールに採用されたメガグリップソールがあらゆる方向にグリップし、不安定な路面であるほどに効果を発揮。その優れた仕上がりは実際に着用してこそ分かるというもの。
筆者:TOMMY